トヨタとソフトバンク、それぞれの戦略的提携への想い

トヨタ自動車とソフトバンクが10月4日に新しいモビリティサービスの構築に向けて、新会社「MONET Technologies(モネ テクノロジーズ)」を設立して、2018年年度内をめどに共同事業を開始することを発表した(https://gazoo.com/news/info/181004_2.html)。
ここで記者会見での両者代表の発言から、それぞれの提携への想いを探ってみる。

AIは人類史上最大の革命 孫社長

「AIは大きなうねり、波である。10年・20年後はAIの申し子として生まれた会社が、世界をどんどん動かしていく時代になる」新会社設立の記者会見にて、ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長(以下、孫社長)はそう話した。

ソフトバンクは「モビリティAI群戦略」という方針の元、様々なモビリティ関連の技術・サービスを取り扱う企業に対して出資。米国ウーバーや、中国のディディなど世界中のライドシェアはもちろん、物流/自動運転/画像認識/空間認識/IoT/地図/コマース/リース/レンタル/自動車保険など、多数の企業の株主となる事で自動運転(と、それがもたらす新しいモビリティ社会)に必要な要素を集めている。

その中でも非常に重要と言われる「AI」に関して世界に存在感を示し、波にのっていることを強調。

「販売初期の自動運転車は『スーパーコンピュータの塊』であり、価格は乗用車の十倍程度と予想される。とても高価な為、個人ユースではなく、多くの距離を走り、多くのお客様をのせるプロが利用することになる。そう考えると90%のシェアを持っている(ソフトバンクが出資したライドシェア4社の合計世界シェア=約90%)ライドシェア企業が最大の顧客であることは意味あること」
「トヨタのモビリティ技術と我々のAI技術を足して、今までと全く違った、もっと進化したモビリティーが生まれる」

孫社長の発言からは、今回の提携にてAIモビリティ革命を「牽引する・主導権を握る」という、強い想いが感じられた。

仲間づくり 豊田社長

「モビリティサービスを提供する新しい仲間とのアライアンス強化、トヨタの仲間づくり戦略」と掲げる、トヨタ自動車の豊田章男社長は今回の提携について、以下のように述べた。

「6,000ものリアル店舗を保有するという最大の武器を持ち、お客様との信頼関係の上でリアルの接触をしている。そして、多くの車からデータを吸い上げている。(トヨタには)こうした多くの仲間とデータがある。」
「しかし、これだけで2018年CESで宣言した『モビリティーカンパニー』になるのは難しいのかもしれない。」
「ソフトバンクの強みは未来の種を見抜く先見性、目利きの力。そしてモビリティーに関わる新サービスや、楽しいモビリティ社会を生み出そうとしている仲間がいる。こうした仲間を巻き込んで、まだ見ぬ未来のモビリティ社会を生み出したい。」

豊田社長は「仲間づくり」を強調。『オールニッポン』で未来のモビリティ社会を目指す、という姿勢が感じられた。

125万台/年間の交通事故死

それぞれの想いが語られる中で、明確に共通していたものもあった。
世界では年間125万件の事故死が発生しているという現実がある中、孫社長は「自動運転の世界ではいずれ、事故の起きない世界がやってくると思う」と言い、豊田社長も「便利なはずのモビリティで125万人の方が亡くなっている。これをゼロにしたい。」と語る。
やがて訪れるであろう、未来もモビリティ社会は確実に「安全」なものとなるに違いない。

今回の提携には両社それぞれの強い想いと、新しい社会の確立に向けた意思を感じる事ができた。
それぞれの得意分野を持ち寄った「ジャパン連合チーム」が作る、楽しく、安全・便利な未来のモビリティ社会が楽しみである。

また、「車は数ある工業製品の中でも唯一『愛』が付く。AI化が進むとしても、エモーショナルな存在にしておきたい。(豊田社長)」という発言もあった事を、GAZOOに集まるクルマファンの皆さんにはお伝えいたします。

[ガズー編集部]

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