「日本は大丈夫!現場力を信じて!」豊田章男会長とマツコがジャパンモビリティショーと自動車メーカーの未来を語り明かす!
2023年11月5日、全12日間に渡り開催されてきたジャパンモビリティショーの最終日となるこの日、主催者である日本自動車工業会の豊田章男会長とマツコ・デラックスさんによる「ジャパンモビリティショー 大反省会」がJapan Future Sessionのステージで行われた。
この様子はYouTube LIVEでも配信されたため、ご覧になった方も多いかもしれないが、改めて印象的ないくつかのトピックスと、YouTube配信後に語られた、豊田会長の熱き想いをご紹介しよう。
<目次>
ジャパンモビリティショー2023の入場者集は111万人
ジャパンモビリティショーはスタートアップのマッチングが一つの「ウリ」に
モビリティショーにしたことで移動手段の選択肢が増える
BEVを含むモビリティの未来は信頼と共感でつくるもの
豊田会長の一番のオススメは「カヨイバコ」
新たな日本を世界に発信するスタート
豊田会長「日本は大丈夫!日本の現場力を信じて!」
ジャパンモビリティショー2023の入場者集は111万人
1954年に始まり前回の開催で46回目を数えていた東京モーターショー。4年ぶり47回目の開催となる今回は心機一転、「ジャパンモビリティショー」と名称を変更。
それにより、自動車関連企業のみならず、多くのモビリティ関連やスタートアップ企業が参加する枠組みが用意されたことで、過去最大の475社もの出展社が名を連ねることとなった。
そして名称の変更のみならず、「Tokyo Future Tour」をはじめとするさまざまな挑戦的なコンテンツが用意されていたジャパンモビリティショー。世界のモーターショーの入場者数が右肩下がりの中、2023年10月26日(木)から11月5日(日)まで(一般公開は10月28日(土)から)の入場者数は111万人を数え、2開催連続での100万人超えを達成した。
なお、日本で100万人を動員するイベントは、夏の甲子園とこのジャパンモビリティショー(東京モーターショー)だけだという。
この新たなモビリティショーとしての開催に対して豊田会長は、「いろいろな悪い話もあれば、楽しい話もあるのがモビリティだと思うんですよね。そういう中で、悪い話は少なくしていき、いい話を増やしていきながら、一緒にモビリティを作っていきましょうよという、『この指止まれ大会』だったのが、このモビリティショーだったんじゃないのかな」と語っている。
今回のジャパンモビリティショーの大きな特徴の一つは、多くのスタートアップ企業が参加していることだろう。
豊田会長は「タイのバンコクのモーターショーではクルマを売ったりできるんですね。ここでは何を売ろうかなということで、みんなが考えついてくれたのが、モビリティで未来を創っていくためには、日本のスタートアップ企業が投資家の方々とマッチングをして、新しいビジネスへの第一歩としてもらうためのイベント」とその意図を話した。
実際に、スタートアップ企業と大手メーカーのビジネスマッチングをする、「スタートアップ フューチャー ファクトリー」というエリアが設けられた。
これには、「防災」「少子高齢化」「地域創生」「環境・カーボンオフセット」「ウェルビーイング」という5つのテーマ別に合計約100社のスタートアップ企業が出展。
「Pitch Contest & Award」では、著名ベンチャーキャピタルのパートナーらが審査員として参加するビジネスコンテストが開催され、グランプリに輝いた株式会社NearMeは1,000万円の賞金を獲得している。
また、実際に会期中にスタートアップと大手メーカーとの間で、
- ブースを見て次の打合せが決定:300件
- ビジネスマッチングで次の打合せが決定:130件
と、かなりのコミュニケーションが生まれている(※推定値)。
これに対し、豊田会長は「自動車産業を当てにしてもらえると、多くの人に多くのマッチングやいろいろな機会が与えられるんじゃないかというトライアルであり、そこそこ結果が出ているんじゃないか」と評価している。
そして、マツコさんも「2年に1回ではちょっと遅くない? 規模を小さくして1年に2回くらいやってもいいわね」と言うほど、魅力的な機会に感じられたようだ。
モビリティショーにしたことで移動手段の選択肢が増える
今回ジャパンモビリティショーとして、自動車産業以外の企業や展示がされたことで、豊田会長は「多くの選択肢が移動手段に出てくる可能性」を感じたという。
まず例えとして挙がっていたのが、「4人乗り4足歩行型ライド」というモビリティだ。実際にはラクダのように揺れ乗り心地はまだ改善の余地はありそうだが、このモビリティは世界の遊園地で楽しまれているジェットコースターなどの遊戯機械を手掛ける三精テクノロジーズが製造している。
「poimo(ポイモ)」と呼ばれるまるでソファのようなモビリティは、東京大学とメルカリの研究開発組織「mercari R4D」が開発した、空気で膨らむモビリティだ。
実際に車いすの利用者の方も、普段は移動の度にソファから車いすに移る必要があるが、これであればそのままくつろぐことも移動することもできることがとても魅力的だという。
そして、モビリティではないが、先日まで上野駅で実証実験が行われていたという「エキマトペ」。耳が聞こえづらい方がホームで電車を待っていたりするときに、電車の到着や駅員のアナウンスなどを映像可してくれる。またさまざまなフォントを使用することで、感情表現も可能だという。
これもモビリティを使った移動のバリアフリー化であり、やはりモビリティショーとしたからこその展示だろう。
BEVを含むモビリティの未来は信頼と共感でつくるもの
BEV化が進む自動車業界に向けても豊田会長は下記のように語っている。
「最後はお客様と市場が選ぶものなんですよ。ゼロ・エミッション・ビークルは電気であれ水素であれ、インフラができないといけないんですよね。ガソリンスタンドでガソリンを入れるのは3分、ところが(充電は)3時間?となると、何倍ものガソリンスタンドよりも多い充電ステーションや駐車スペースが必要となってくるわけです。それって自分の生活空間ではまだでしょうし、そこまで自動車会社がやるのって思いますよね。
未来づくりって、自動車会社とかバイクメーカーとか大型車メーカーとかが未来の乗り物だけ作れば未来のモビリティっていうものができるのではなくて、いろんな人が協力して、例えばエネルギーをつくる人、はこぶ人、つかう人、みんながね同じ方向に向かって進まないと上手くいかないと思います」
さらに豊田会長は、5年先の自動車業界、モビリティのあり方も見えないような現状について、次のような考え方を示した。
「こういう時代って正解がないわけでしょ。よくPlan、Do、Check、Actionっていうじゃないですか。正解がない時はDoを先にやった方がいいと思いますね。まずやってみて、チェックしてみて、間違えたらやめればいいし、正解だったら続ければいいし、なんとなく継続しているうちに、幸せのシェアが上がってきたというサイクルを回した方がいいと思います。
だから100%電気自動車になるというふうに決めないで欲しい。(充電環境など)いろいろ不都合な話があると思うんですよ。規制ではなく、未来は信頼と共感でつくるものだと私は思うんです」
豊田会長の一番のオススメは「カヨイバコ」
マツコさんから一番いいなと思ったクルマを聞かれた豊田会長は、少し考えた後に「う~ん、トミカ」と答える。「トミカって夢があるでしょ。実際に手に取れないとね」と章男少年時代に帰って懐かしそうにコメント。
またYouTubeでの配信後には、トヨタが展示した「KAYOIBAKO(カヨイバコ)」を挙げた豊田会長。これは、“好きなときに・好きな場所で・好きなことができる”モビリティの未来を実現するコンパクトスペースBEV車両だが、モニターに映し出されていたレクサスの映像を見て「理解していないね。(豊田)会長=スポーツカーだと思ってる」と笑顔でチクリ。
新たな日本を世界に発信するスタート
1時間にわたり繰り広げてきた「ジャパンモビリティショー 大反省会」の最後に、豊田会長は、日本らしさを共に発信していきたいと呼びかけた。
「モビリティを通じて、ありがとうと言い合える日本、笑顔のシェアが増える日本を、今対立分断が進んでいる世界に対して、みなさんと一緒に自慢したい。そんなきっかけとなるのがこのジャパンモビリティショーであればうれしいですし、一緒に未来づくりにご参加いただきたいと思います」
豊田会長「日本は大丈夫!日本の現場力を信じて!」
YouTubeの配信が終わったあとも30分ほどの続けられたトークの最後の質問に、豊田会長の強い想いが語られた。
欧米先導のBEVが主流となっていく流れを受け、日本の自動車産業の未来について、大学生から聞かれた豊田会長は、まずは「あのね、日本は大丈夫!」と力強い一言。
「日本は現場力があります。自動車会社は、何十年もの間いろいろ苦労してきていて、苦労してきた=色々失敗をしています。そうした失敗の歴史っていうのはね、そう簡単にキャッチアップできるものじゃないんですね。そういう経験があり、今、日本では単にBEVにすればいいんじゃなくて、そういう経験をしてきた人たち全てが、今までやってきた仕事というものが役に立つ未来づくりに参加しようという動きが始まってると思うんですよ。動き出してきてるから、僕は日本は大丈夫だと思うんですね。
現実を見ずに、こうあるべきだっていうことだけの議論じゃなくて、ちゃんとね、現実をベースに、真面目に、コツコツ仕事してる人が、日本にはまだまだいますから。だから、そういう人たちの動きを信頼してあげてほしい」
日本を代表する、そして世界をリードするモノづくりの産業である自動車業界。そこでたくさんの苦難を乗り越え、クルマを通じてたくさんの楽しさや夢を提供する企業を束ねる会長として、自動車業界550万人、そしてモビリティ業界850万人ともに歩む、責任と期待を持った熱い想いを聞くことができた。
(GAZOO編集部 山崎)
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