寒さからクルマを守る。知っておきたい「寒冷地仕様車」の特徴

日本全国津々浦々、暑いところでも寒いところでも走っているクルマ。でも寒い地域では寒冷地仕様のクルマが一般的だといいます。寒冷地仕様のクルマは、標準車とどんなところが違うのでしょうか。すべての車に当てはまるわけではありませんが、おおよの違いをご説明します。

クルマのパフォーマンスを落とさないために

――寒冷地仕様車は標準車とは別に作られるのですか?

寒冷地仕様というのは基本的に標準車に加えられるオプションにあたるんです。北海道などの降雪地であり、かつ寒さの厳しい地域で、寒さや雪の影響からクルマと乗っている人を守るためのものです。

――具体的にはどのような違いがあるのでしょう。

まずは、エンジン回りの部分でいきますと、バッテリーの容量が大きくなっています。バッテリーが冷え込むと電圧低下を起こしてしまうため、寒さで性能が多少落ちてもエンジンがかかるように容量を大きいものにしているのです。

発電機の役割をするオルタネーターの発電量も大きいです。エンジンをかける時はもちろん、ヒーターでも電気は使いますので。そして、不凍液の濃度割合が50%と濃くなっています。これは-35℃まで対応できる濃度です。標準車ではこの濃度は30%で-10℃までとなっています。凍ってしまったら、エンジンが破損することも考えられます。

雪や寒さに負けない装備を

――雪や氷対策にはどんなものがありますか?

フロントウィンドウデアイサーと言って、フロントガラスのワイパー接触部に電熱線がつきます。これによりワイパーの凍結を防ぎます。ワイパー自体も雪用の大きくて柔らかいゴムワイパーとなっていますし、雪は雨よりも重いですから、ワイパーモーターも強化されています。リアガラスにも熱線が入り、リアワイパーも装備しています。

また、こちらは車種によりますが、ミラーヒーターとリアフォグランプがつくこともあります。ミラーヒーターはリアガラスの熱線と連動しているタイプが多いのですが、サイドミラーの結露やくもりを除去するものです。リアフォグランプは後方からの視認性向上と追突防止になります。雪が積もっている道路を走ると、雪をテール側に巻き込むので、ストップランプやテールランプに雪が付着して見えない状態になる場合があります。そこでそれらのランプよりも照度が高いランプをつけることで、後方のクルマから自分のクルマの存在が見えるようにします。また、ランプに付着する雪を照度の強いものをつけることで少しでも融かす効果もあるんです。

――他に工夫はありますか?

車両の下廻りに、車購入時や定期点検時などに有料で防錆機能の高い塗料を塗装することもできます。それにより、降雪地で散布される融雪剤の塩化カリウムによる錆をなるべく防ぎます。

――車内の方はどうですか?

より多くの温かい空気が通るようにヒーターラジエータの容量が大きくなっています。後方座席も温かくなるよう、足元から温風が出るリアヒーターもつきます。

寒冷地仕様車 温暖地で乗ってもいいの?

――寒冷地仕様というのはオプションとのことでしたが、地域的にはどの辺からつけているのでしょうか?

北海道地区に関しては寒冷地仕様のオプションを最初からセットした形で北海道地区価格として設定されている車種が多いですね。はっきりこの地域からとは言えませんが、東北地域など日常的に雪が降る地域ではつけているのかなと思います。

――暖かい地域で寒冷地仕様車を乗るのに問題はないのですか?

大丈夫です。オーバーヒートしたりなどはしません。クルマの装備としては強化されたものですから問題はないんです。

――雪の降らない地域でも、寒冷地仕様にすることはできるのですか?

新車で購入する場合は、最初からオプションとしてつけるという形で寒冷地仕様にすることはできます。ただ、既に乗っているクルマを寒冷地仕様にすることは実際問題として難しいです。できるとしたら、バッテリーを容量の大きいものに交換することと、不凍液の濃度を50%にすることくらいです。ですから、例えば降雪地域で乗るつもりで中古車を購入する場合は、寒冷地仕様であるかどうかしっかり確認する方がよいでしょう。以前、クルマの後部座席が寒いので調べてほしいというお客さまが来店されたことがあり、見てみると寒冷地仕様車ではなかったためリアヒーターがついていなかった、ということもありました。

逆に、北海道で新車を購入するのだけれど、このあと九州や沖縄に引越をするなどといった場合には、寒冷地仕様をはずすこともあります。ただ、バッテリーは強いですし、ミラーヒーターやリアの熱線などはくもりを取るのに便利なので、寒冷地仕様のままでも問題はありません。

寒冷地仕様車は外側も内側もパワーアップしたクルマであることがわかりました。北海道在住の筆者には寒冷地仕様がオプションであるというのが意外でした。ちなみに、以前は寒冷地仕様車にはそうであると表示するステッカーが貼られていたこともありました。

また、寒いところを走る予定で中古車を購入する場合、寒冷地仕様かどうかは、はずせないチェック項目のひとつであると心がけるとより安心でしょう。

(取材・文:わたなべひろみ 編集:ミノシマタカコ+ノオト)

注意:当記事内容が寒冷地仕様車の全てに当てはまるわけではありません。

[ガズー編集部]

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