セラ(1990) トヨタが未来に挑戦したクルマたち

トヨタの車両開発史上、「お客様の期待を超えたクルマづくり」に挑み、誕生した個性的なデザインや機能を持ったクルマたち。1970年代から1990年までの中から、そんなクルマを紹介します。

手が届く「夢のクルマ」

1987年の東京モーターショーに出展されたコンセプトカーAXV-II。最大の特徴は、グラッシーキャビンと称するガラス製のキャノピーと、それを切り取るように跳ね上がるガルウイングドア。

その市販化モデルがセラである。「全天候型オープンカー」とうたわれたように、たとえ憂うつな雨模様でも、金魚鉢のようなドーム越しに広がる景色が、普段とは違って見える不思議な魅力にあふれていた。

巨大なガラス製キャノピーを量産化した生産技術は高く評価されたが、加えて周囲をうならせたのが、価格。エクステリアはもちろん、キャノピーを通して外からよく見えるインテリアも、ほとんどすべて専用設計ながら、ベースとなったスターレットの最上級グレードと30万円も違わない160万円台で、驚くべきバーゲンプライスだった。

セラは、誰にでも手が届く、翼を生やしたキュートなドリームカー。こんな手間もコストもかかる企画は、あまたある自動車メーカーの中でも、なかなか実現できるものではない。

セラが誕生した年 1985年

・東西ドイツが統一
・今上天皇、即位の礼が行われる
・トヨタ、東京デザインセンターを開設

セラ(4A/T)の価格 167.5万円(東京)
当時の大卒の初任給 約17.0万円