【動画】 トヨタ・ハイラックスZ試乗インプレッション車両紹介編
横から見ると、車体のおよそ4割が天に向けて開放したデッキ(いわば荷室)なので、誰の目にもトラックとしか映らないだろうけど、この最新型ハイラックス、インテリアのつくりに「泥や汗の匂い」がまったく感じられない。働くクルマ、つまり明確な目的を有した道具的車両を好む者として、これはなかなかの驚きだった。
その最たるものはステアリングホイール(ハンドル)だ。ディーゼルエンジンを積んだトラックなら、下手をすれば腿(もも)を擦るくらいでっかいのが当然と思っていた。むしろこの時代、そんなラフさを保っていてほしいとさえ望んだ。
ところがハイラックスのそれは、ひと昔、いやふた昔前くらいだったらスポーツタイプと称してよいほど小径なのである。それなら運転感覚もスポーティーかと思えば、そこはラダーフレーム構造を持ち、リアにリーフスプリングを備えた伝統の骨格ゆえ、陸上競技のなかでも投てき系の、たくましい乗り味というほかにない。
予想に反した小径ハンドルには、他のクルマでもよく見かける各種スイッチが多数埋め込まれている。となれば、ハンドル越しに目に入るメーターパネルやダッシュボード、ひいてはシート……と、インテリア全域にわたってデザインの統一感が必要になってくる。いや、今日的には衝突回避や前走車の追従ができる運転支援システムも必要だ。それを実際に、2020年8月のマイナーチェンジでトヨタは行った。
重要な設計変更がハンドルの径の選定から始まることはないだろうが、こうした、運転中は常に触れている部分に“働くクルマ感”を漂わせないのが、つまり商用車感覚と決別し乗用車化を果たしているのが、今のハイラックスなのである。
たとえ「昔のほうが好きかも……」という偏屈者としての心の声が漏れたりしても、このハイラックスの乗用車化を否定する人はいないはずだ。というより、ピックアップトラック初心者には、「こんなに普通っぽいんだ」というよろこびをもたらすかもしれない。筆者としても、そんな驚きと発見があるからオススメしたいわけで……この先は後編に続きます!
(文:田村十七男)
[ガズー編集部]
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