右ハンドルの新型「シボレー・コルベット」。まるで別物、凄すぎます

フルモデルチェンジを機に、デザインも、そして根本的なメカニズムも大きく変わった「シボレー・コルベット」。新型はどんなスポーツカーに仕上がったのか、モータージャーナリスト山田弘樹が解説する。

ロングノーズ、ショートデッキ。大排気量V8エンジンをフロントに搭載する、伝統的なアメリカンスポーツカー。バブル期の国産280PSスポーツカーに憧れて、走りの本場はヨーロッパだと信じていた筆者にとって、コルベットは完全にノーマークな存在だった。

“スティングレイ”が有名なんでしょ? いまだにリーフスプリング使ってるの!?  アロハシャツ着て、真っすぐな道をドカーンと飛ばしたら気持ちいいだろうな! シボレー・コルベットに対するイメージは、その程度のものだった。

そんな適当な印象を180度ひっくり返したのは、先々代にあたる6代目(C6型)。自然吸気の高性能モデルとなる、「Z06」の“まっとうな”パフォーマンスだった。

7リッターのOHVエンジンは確かにトルキーで、しかも高回転まできれいに回った。さらにフットワークは、驚くほどの“コーナリング型”。ストレートをパワーで押し切るというよりは、最高出力511PSというパワーをシャシーが上手に生かしてタイムを出す、バランスのとれたレーシングスポーツだった。

そのころ富士スピードウェイでは、足まわりをファインチューンしただけのZ06が、アマチュアオーナーの手で「ポルシェ911 GT3」に負けないタイムをたたき出していた。なおかつそれが、新車価格だと945万円、中古車市場では500万円台で手に入ったのだから、友達の間でコルベットは一躍スター選手となった。そしてそのとき初めて筆者も、その名前が“ゼット・ゼロロク”ではなく“ズィー・オー・シックス”だと知った。うん、カッコいいじゃないか!

そんなコルベットがC7の世代を経て、最新型ではミドシップスポーツカーへと大変身。

賛否両論のあるデザインは、これが現代のアメリカにおける、スポーツカーの表現方法(のひとつ)なのだろう。先代「ホンダ・シビック」を見ても分かるが、アメリカンコミックから飛び出してきたかのようなエッジーさはデジタルネイティブ向けのデザイン言語であり、“わび・さび”や曲線美の良さが分かるようになってくるアナログ世代が受け入れられなくても当然。たとえアナタが「GR 86」を手に入れても、車高を下げてリムの深い大径ホイールを履かせ、ロケットバニーのエアロは付けないでしょう? そういうことだ。

そしてよく見れば、これが先代C7型から正常進化したデザインで、突然変異的にこの姿になったわけではないことも分かる。(GMは困るかもしれないが)こういうクルマは、嫌いなら買わなければいいだけの話なのだ。

さてそんな新型コルベットの走りはどうかというと、今回はオープンロードをさらり走らせた程度だが、最高だった。逆に言えばその程度でも、軽くノックアウトされた。後編では、その走りの魅力についても言及したい。

(文:モータージャーナリスト・山田弘樹)

[ガズー編集部]

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