新型「スバルBRZ」試乗インプレッション、これは10年楽しめる、かけがえのないクルマだ、山田弘樹

モータージャーナリスト山田弘樹が、フルモデルチェンジした「スバルBRZ」に試乗。エンジンから車体まで徹底的に磨くことで、FRスポーツカーの走りはどう変わったのか。その印象をリポートする。

新型スバルBRZをオープンロードで走らせてみると、サーキットとはまた違う印象で驚いた。

率直に言うと、乗り味がとても“若い”(笑)。サーキットで見せた、あのしなやかな走りとは対照的に、しっかりした足取りでキュンキュン曲がるBRZに、オジサンはちょっと驚かされたのだった。

でも考えてみれば、それは当然のことだ。サーキットで大きな荷重を受け止められる足腰でオープンロードを走ったら、足まわりが硬く感じられるのは当たり前である。特に今回の試乗車は18インチの「ミシュラン・パイロットスポーツ4」を履いた「S」グレードであり、タイヤのキャラクターが乗り味に対して支配的だったから、なおさらである。もしこれが17インチで「プライマシーHC」を履いた「R」グレードなら、もっとしなやかな印象になるかもしれない。

ただその乗り心地は、硬すぎて「オッサンにはとても無理ですぅ……」とへこたれるほどではない。……ない、と思う。いや、ここが、乗り手がオッサンなのか、スポーツマンなのかの境目かもしれない。

ともかくそのダイレクトな応答性からは、多くのドライバーが「スポーツカーを買った満足感」を得られるだろう。そして走り込むほどに、その先にあるスバルらしいロードホールディング性能を感じ取って、「買ってよかった」としみじみ思うはずだ。

こうしたシャシー性能に対して、2.4リッター化されたエンジンは、かなり見事にマッチングしている。「もう少しだけパワーがあったらいいのに!」と感じた先代2リッターの歯がゆい部分が、中速トルクの増大できちんと補われている。なおかつ――水平対向エンジンだから(エンジンの全幅拡大につながる)ストロークアップはしにくいという理由もあるのだろうが――ボアの拡大によって排気量が上がっているため、その回転上昇感から切れ味が失われていない。だから自然吸気エンジンのままでも、満足度が高いのである。これ以上のパワーを望むなら、トヨタで言えば「GRスープラ」、スバルで言えば次期型「WRX STI」を買えばいい。BRZ(と「GR86」)は、これでいいのだ。

いつかはスポーツカーに乗りたい。スピードや派手さは要らない。バランスのとれたFRのスポーツカーを、マニュアルシフトでずっと乗り続けたい。そんな気持ちを胸に抱え続けているアナタにこそ、筆者はBRZを薦めたい。新型スバルBRZとGR86がたくさん売れることで先代モデルの市場価格が下がれば、若い世代がそれを手に入れやすくもなる。新型にずっと乗り続けて、最後は息子に譲り渡すなんてのもいい。

筆者は相変わらずくたびれた初代ハチロクに乗り続けるけれど、ともにスポーツカー文化をつくり上げていこうじゃないか。

(文:モータージャーナリスト・山田弘樹)

[ガズー編集部]

【動画】「スバルBRZ」試乗インプレッション車両紹介編

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