スポーツカー史に名を残す、初代「ホンダNSX」。その魅力をモータージャーナリスト山田弘樹が熱く語る

今回モータージャーナリスト山田弘樹が試乗するのは、懐かしの国産スポーツカー、初代「ホンダNSX」。デビュー当時の思い出を交えながら、このクルマならではの魅力についてリポートする。

「うはッ、 これは……いい!!」

初代NSXはまるで、ホンダのバイク「CB」だ。「CBR650R」ほど現代的に洗練されているわけではないけれど、カウル(=ルーフ)が付いているから、同世代の「シービーナナハン(CB750)」よりはちょっと高級か……。ともかく、軽くて動かしやすく、核となる部分にはれっきとした“ホンダの血”が流れていて、やっぱり“シービーな感じ”がする。バイクに親しみがない読者もいるはずだから、もう少しわかりやすく言おう。

乗りやすいけれど、高級とは違うのだ。一応、レザー張りのダッシュボードやドアパネルまで備わっているけれど、メルセデスのようにラグジュアリーではないし、フェラーリのように乗り手を威圧してくることもない。どちらかといえば、その素っ気なさは同時代の「ポルシェ911」に似ている。ただNSXはもう少し淡麗な味わいで、それが、今乗ると実にさっぱりとしていて気持ちがいい。

この「脂っこさがまったくない感じ」には、若かりし頃の筆者は、非常に食い足りなさを感じていた。スーパーカーならもっとエンジンやデザインをエキサイティングにしてほしいし、インテリアには色気を出してよ! と、多くのクルマ好きと同じことを思っていた。でもこの純日本的な質素さこそが、ホンダの特徴であり、初代NSXの魅力なのだと、今回の試乗を通して確信した。

イケイケ、ドンドンなバブルの時代にそんなことを言っても、誰も耳を傾けなかっただろう。もしかしたら、つくった当のホンダさえ、NSXが持つこのわびさび感を理解していなかったかもしれない。当時は、「マクラーレンF1」などで知られるカーデザイナー、ゴードン・マレー氏だけが、きちんと評価していたのではないか。

この無駄のなさは、二輪と四輪を一緒につくり続けてきたホンダだからこそ成し得た性質であり、DNAだ。1990年にデビューした初期型から数えると約30年、今回試乗した「タイプS」の後期型(2004年式)でもほぼ20年。そんな長い年月を経て乗った初代ホンダNSXは、懐かしさだけでなく、なにか大事なものを筆者に気づかせてくれたような気がする。

(文:モータージャーナリスト・山田弘樹)

[ガズー編集部]

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