レクサスUX300e「ライバルに引けを取らないパフォーマンス」(森口将之)

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(前半からの続き)
一体、何がここまでレクサスのBEVを取り巻く状況を急に変えたのでしょうか。理由のひとつとして思い当たるのは、トヨタ自動車の社長交代です。

2023年4月1日に社長に就任した佐藤恒治氏は、それまでレクサスインターナショナルに在籍し、東京モーターショーで電動化宣言をした直後の2020年1月から、プレジデントに就任していました。

2021年12月のトヨタのBEV戦略説明会で、「レクサスは2030年までに欧州、北米、中国でBEV100%、2035年にグローバルでBEV100%を目指す」と宣言したのも、当時の佐藤プレジデントでした。

それ以前からのマルチパスウェイというトヨタの電動化戦略を受け継ぎながら、やや慎重だったBEVへの取り組みが、彼が会社のトップに立ったことで、一気に積極的になったように感じます。それは5月の組織改正で、BEVファクトリーという組織が新設されたことでも明らかではないでしょうか。

ほかにも、グループ会社である日野自動車とダイムラー傘下にある三菱ふそうトラック・バスの経営統合などシビアな話題を含め、リーダーとして課題に真摯(しんし)に向き合い、迅速に対応していく姿勢が印象的です。その経営手法は、大胆でありながら軽快。僕自身は、佐藤社長になって、今後のトヨタがさらに楽しみになりました。

最初に書いたように、UX300eは今回のアップデートで、グローバルのライバルに引けを取らないパフォーマンスを持つに至ったというべきでしょう。だからこそUXならではの躍動感あふれるスタイリングや、和のテイストを巧みに取り入れたインテリアなどが、日本人のひとりとして、これまで以上に好ましく映りました。

2022年にレクサスブランドの販売の半分を占めた北米では、テスラのスーパーチャージャーが充電の標準規格になっており、BEVを巡る動きはまだまだ先が読めないという印象があります。でも佐藤社長であれば、次々に押し寄せる波を、しなやかに軽やかにこなしながら進んでいくのではないかと期待しています。

(文:モータージャーナリスト・森口将之)

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森口将之さんが解説するレクサス・UX300eの注目ポイント

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