レクサスLM クルマの枠を超えた新しいおもてなしの形
国内初となるレクサスのミニバン「LM」は、まず2列シート4人乗り仕様として発売されたことも話題になっています。とはいえミニバンで2列シートという車種は、これが初めてではありません。例えば、僕が約20年にわたり所有している「ルノー・アヴァンタイム」もその一台です。
もちろんLMとアヴァンタイムの成り立ちは大きく違います。LMは前席まわりのスペースは、このクラスのミニバンの平均レベルとした代わりに、本来2列のシートがある後部空間に、贅(ぜい)を尽くした2脚のシートを置いたというパッケージングです。
対するアヴァンタイムは、ヨーロッパのミニバンの代表格だった「エスパス」をベースにクーペとしたものです。単に3列目のシートを取り去っただけでなく、フロントウィンドウを寝かせ、リアゲートにノッチをつけてキャビンを小ぶりにしたうえで、ドアも2枚としていました。
当然ながらシートの位置も違っていて、前席はエスパスのものより後方で、ホイールベースのほぼ真ん中。後席はセダンのそれと同じような位置にあります。
そんなクルマを20年も持ち続けている理由は、トラブルがほとんどないこともありますが、2列シートのミニバンというパッケージングがとても気に入っているためもあります。
とはいえミニバンのクーペという前代未聞のコンセプトに共感する人はごくわずかであり、2001年に欧州で発売したものの、わずか2年で生産を終えてしまいました。ミニバンはドアもシートの数も多いほうがいいという人が、当時は多数派だったのでしょう。
とりわけ日本は、5ナンバー枠内に3列のシートを設け、それぞれに平均的体格の大人が座れるというモデルがいくつもあります。しかも年に1~2度しか3列目を使わなくても、いざというときに家族や友人が全員乗れることが大切と思うユーザーが多数派でした。
でもここへきて、流れが変わってきたと感じています。ミニバンの代わりに同じ3列シートのSUVを選ぶ人、ミニバンであっても2列シートでいいと考える人が出てきたからです。車内空間や乗車定員などの“数”より、ライフスタイルなどの“質”を大切にするクルマ選びに変わってきたと思うのです。
長さも高さも余裕たっぷりなのだから、できるだけ人を乗せなければモッタイナイと思う人もいるでしょう。でも僕は、自身の経験からも、むしろ人を多く乗せるためだけに使うのがモッタイナイと思っていました。
スポーツカーでいえば、4人乗りより2人乗りのほうがぜいたくに感じられるはずです。それと同じように、ミニバンの広い空間を2列シートで使うというのは、他のパッケージングでは得られないぜいたくが得られると思うのです。
レクサスLMはそれを究極のかたちで示してくれました。後部のシートは2列ではなく2脚。しかもリクライニングやオットマンだけでなく多彩なマッサージ機能を備え、「クライメイトコンシェルジュ」によって照明やサンシェードなどまで自動的に調整されます。
高級ホテルやエグゼクティブオフィスなどを参考にしたと思われる仕立ては、クルマの枠を超えています。長年ミニバンを提供し続けてきた日本だからできる、新しいかたちのおもてなしだと思いました。
(文:モータージャーナリスト・森口将之)
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森口将之さんが解説するレクサスLMの注目ポイント
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