GRヤリス ラリーカーのエボリューションが息づく
「GRヤリス」の魅力は、なんといっても「本物のラリーカーに乗れる」ということだ。これはもう、“オラがWRカー”である。
かつて日本では「三菱ランサーエボリューション」や「スバル・インプレッサWRX」をはじめ、数々のラリーベース車が市販化された。そのなかでもGRヤリスは、スペックだけでなく“やる気”が群を抜いている。
残念ながらWRCの規定が変更されたことでホモロゲーションに合わせた改良はかなりの部分が無駄になってしまったようだが、市販車のGRヤリスには、WRカーと同じエボリューションがふんだんに盛り込まれている。
ただ単に、「ハイパワーな4WDターボカーができました」じゃないところが、このクルマのキモなのだ。
「でも『ヤリス』でしょ?」という声は本当によく耳にする。けれど小さなヤリスが選ばれたのは、ラリーで勝つため。現代のクルマで断崖絶壁の細い峠道を最速で駆け抜けるには、Bセグメントのコンパクトカーが最適解なのは少し考えればわかるだろう。それは厳しい環境で活躍する「ランドクルーザー“70”」のサイズが、いつまでも拡大されないのと同じ理屈だ。
「でもエンジン、3気筒でしょ?」
直列3気筒を選んだのも、コンパクトなボディーにハイパワーなエンジンを搭載するためだ。確かにアイドリングだと、バランスシャフトを備えたとはいえエンジンはブルブルとステアリング越しに振動を伝えてくる。回してもそのサウンドは、まったく官能的とは言い難い。
でも、それでいいのだ。たった1.6リッターの排気量で(それすらWRCの規定をにらんでのことだった)、304PSものパワーが出ている3気筒の市販ユニットなんて、世界中見渡しても、どこにもない。
「3ドアで不便だし、トランクルームも狭い」
これは筆者も、ちょっと不便だなよなぁ……と思う。「フォルクスワーゲン・ゴルフGTI」が5ドアモデルしか輸入されなくなったときに「ひよったか!」とプンスカ怒った記憶があるけれど、やっぱり後部にもドアがあると、ちょっとした荷物が素早く放り込めて快適だ。
だがしかし! それを押してでも買うのがGRヤリスなのだ。
3ドアになったのは、デビュー当時のWRCで勝つために、リアクオーターまわりの空力を優先したから。トランクルームが狭いのも、4WDシステムやバッテリー、インタークーラー冷却用スプレーのタンクの搭載でスペースが食われてしまっているからだ。
「そこまでやるか!」と、ちょっとクレージーにも思える“勝つための貪欲さ”にワクワクできるあなたこそが、GRヤリスを買うべき人なのだ。
(文:モータージャーナリスト・山田弘樹)
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山田弘樹さんが解説するGRヤリスの注目ポイント
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