【三菱 トライトン 新型試乗】デカくても快適! ピックアップ人気を再構築できるか?…中村孝仁
『トライトン』と名の付くミツビシのピックアップトラックは2005年に誕生した初代が日本でも販売されていた。
5年間販売されたそうだがその5年間の総計販売台数は僅か1800台ほどだったそうで、以後2代目が誕生した時も日本市場へは導入されなかった。そして昨年3代目がデビューして改めて日本市場へ導入されることになった。
導入の後押しとなったのはトヨタ『ハイラックス』の好調な販売だと思うが、似たようなミッドサイズのピックアップトラックであるハイラックスは、2023年に何と1万台を超える販売台数を記録しているのだ。三菱が商機があると判断するに十分な台数だと思う。
そして2023年の12月に正式に日本で販売を開始したが、ごく控えめな目標販売台数、月販200台に対し、3月の時点ですでに1700台の初期受注を得ているそうだから、初代の5年間で1800台という数値をあっさりと超えているはずである。
日本ではピックアップトラックが市場を形成する可能性が少ないと思われていた。理由はトラックに対するイメージの問題と、使い勝手の問題。しかし世界に目を転じるとアジアにしてもアメリカにしてもピックアップトラックは生活に根付いたまさに乗用車感覚の自動車と言って過言ではない。1990年代から四半世紀アメリカの市場を見続けてきたが、ピックアップトラックは完全に日常に溶け込み、街の景色になっているのである。日本でも一時サーファーなどに好まれた時代もあったが、結局は市場に根付くことはなかった。
◆ピックアップの良さを存分に味わえる仕様になった
今回導入されたトライトンは少なくとも以前導入されていたトライトンとは大きく違って、ピックアップトラックの良さを存分に味わえる仕様となっている気がする。一つはランニングコストに優れたディーゼルエンジンを搭載している点(以前はガソリンV6だった)。もう一つは日本人が一般的に考えるトラックとは異質なスタイリッシュなデザインを持っている点。そして最後は乗用車感覚で乗れるインテリアの仕上がりや乗り味などだ。
確かに日本で乗るには少々サイズがデカい。全長は5.3mを超え、全幅も1.9mを超えているから当然ながら物理的な限界がある。それにディーゼルだからランニングコストが安いと書いたけれど、サイズがデカくて1ナンバーとなってしまうために高速料金などは高くなるというデメリットもある。が、実際に1週間試乗してみて気になる点はそこだけで、ゴルフに行ったり、試乗会に行ったり、さらには買い物に行ったりと普通に使ってみて不便さを感じたところは一つもなかった。
ベッドスペースにしても一般的なトラックのスチールというイメージではなくちゃんと樹脂製のベッドライナーで覆われていて、見た目にもスタイリッシュだし、そのあたりはキャブオーバーの商用トラックとは大いに異なるところである(ただしオプションのようであるが)。
◆ハーフトンのトラックとしては相当に快適な乗り心地
実際の乗り味はどうか。まず大前提としてこのクルマはラダーフレームを持ったいわゆるボディオンフレーム構造である。そして当然ながらハーフトン(500kg)の積載容量を支えるべく、リアの足はいわゆるリーフリジットになる(一応販売上は1tトラックとなっているが最大積載容量は500kgである)。しかし、いわゆるハーフトンのトラックとしては相当に快適な乗り心地を持っている。
東京都内にこのトラックの乗り心地をテストできる道路がある。場所は六本木から溜池方面に下って行って、首都高速の下を走る区間。商用のトラックは必ずここでスピードを落とさないとリアが跳ねてしまうし、そもそも載せているものに傷がつく可能性だってある。トライトンの場合はほぼ乗用車と同じスピードで走ってそこを通過することができるから、立派なものだ。
4N16というコードネームを持つ2.4リットルのターボディーゼルは、おおよそ700km走って15km/リットルを記録する高燃費を示す。ただ、最新のエンジンだということだが、軸足を東南アジア市場に置いているからか、静粛性という点では少し物足りなさを感じるし、パフォーマンス的な印象も同じターボディーゼルを搭載する『デリカD:5』の4N14(2.3リットル)と比べるとやはりざらついたフィーリングがあって洗練度という点では少し落ちる。とはいえ、踏んでいけばパフォーマンス的には申し分ないし、ACCも使えて快適に走れる。
4WDの性能は試したわけではないが、「4H」(4WD)から「2H」(2WD)に切り替えると明らかにフリクションが少なくなるので、日常的に都会を走ったりあるいは高速を走るときは2Hがお勧めである。因みに前述した燃費は2Hで記録したものだ。
◆ピックアップで街を闊歩するのもカッコいい
その昔、陸サーファーと称してサーフボードを屋根に積んで都会を走り回ることが流行ったことがあるが、アウトドアの嗜好が強いピックアップで街を闊歩するのもカッコいいと思う。なにより、ジーンズとTシャツがとても良く似合う。
流石にテールゲートのあおりは重く、開閉が大変だから、オプションのテールゲートアシストはあった方が良い。それにソフトトノカバーがあれば、ベッドの荷物が隠れて安心感が高い。オプションとしてはこの二つがお勧めである。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員・自動車技術会会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来46年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。最近はテレビ東京の「開運なんでも鑑定団」という番組で自動車関係出品の鑑定士としても活躍中。
5年間販売されたそうだがその5年間の総計販売台数は僅か1800台ほどだったそうで、以後2代目が誕生した時も日本市場へは導入されなかった。そして昨年3代目がデビューして改めて日本市場へ導入されることになった。
導入の後押しとなったのはトヨタ『ハイラックス』の好調な販売だと思うが、似たようなミッドサイズのピックアップトラックであるハイラックスは、2023年に何と1万台を超える販売台数を記録しているのだ。三菱が商機があると判断するに十分な台数だと思う。
そして2023年の12月に正式に日本で販売を開始したが、ごく控えめな目標販売台数、月販200台に対し、3月の時点ですでに1700台の初期受注を得ているそうだから、初代の5年間で1800台という数値をあっさりと超えているはずである。
日本ではピックアップトラックが市場を形成する可能性が少ないと思われていた。理由はトラックに対するイメージの問題と、使い勝手の問題。しかし世界に目を転じるとアジアにしてもアメリカにしてもピックアップトラックは生活に根付いたまさに乗用車感覚の自動車と言って過言ではない。1990年代から四半世紀アメリカの市場を見続けてきたが、ピックアップトラックは完全に日常に溶け込み、街の景色になっているのである。日本でも一時サーファーなどに好まれた時代もあったが、結局は市場に根付くことはなかった。
◆ピックアップの良さを存分に味わえる仕様になった
今回導入されたトライトンは少なくとも以前導入されていたトライトンとは大きく違って、ピックアップトラックの良さを存分に味わえる仕様となっている気がする。一つはランニングコストに優れたディーゼルエンジンを搭載している点(以前はガソリンV6だった)。もう一つは日本人が一般的に考えるトラックとは異質なスタイリッシュなデザインを持っている点。そして最後は乗用車感覚で乗れるインテリアの仕上がりや乗り味などだ。
確かに日本で乗るには少々サイズがデカい。全長は5.3mを超え、全幅も1.9mを超えているから当然ながら物理的な限界がある。それにディーゼルだからランニングコストが安いと書いたけれど、サイズがデカくて1ナンバーとなってしまうために高速料金などは高くなるというデメリットもある。が、実際に1週間試乗してみて気になる点はそこだけで、ゴルフに行ったり、試乗会に行ったり、さらには買い物に行ったりと普通に使ってみて不便さを感じたところは一つもなかった。
ベッドスペースにしても一般的なトラックのスチールというイメージではなくちゃんと樹脂製のベッドライナーで覆われていて、見た目にもスタイリッシュだし、そのあたりはキャブオーバーの商用トラックとは大いに異なるところである(ただしオプションのようであるが)。
◆ハーフトンのトラックとしては相当に快適な乗り心地
実際の乗り味はどうか。まず大前提としてこのクルマはラダーフレームを持ったいわゆるボディオンフレーム構造である。そして当然ながらハーフトン(500kg)の積載容量を支えるべく、リアの足はいわゆるリーフリジットになる(一応販売上は1tトラックとなっているが最大積載容量は500kgである)。しかし、いわゆるハーフトンのトラックとしては相当に快適な乗り心地を持っている。
東京都内にこのトラックの乗り心地をテストできる道路がある。場所は六本木から溜池方面に下って行って、首都高速の下を走る区間。商用のトラックは必ずここでスピードを落とさないとリアが跳ねてしまうし、そもそも載せているものに傷がつく可能性だってある。トライトンの場合はほぼ乗用車と同じスピードで走ってそこを通過することができるから、立派なものだ。
4N16というコードネームを持つ2.4リットルのターボディーゼルは、おおよそ700km走って15km/リットルを記録する高燃費を示す。ただ、最新のエンジンだということだが、軸足を東南アジア市場に置いているからか、静粛性という点では少し物足りなさを感じるし、パフォーマンス的な印象も同じターボディーゼルを搭載する『デリカD:5』の4N14(2.3リットル)と比べるとやはりざらついたフィーリングがあって洗練度という点では少し落ちる。とはいえ、踏んでいけばパフォーマンス的には申し分ないし、ACCも使えて快適に走れる。
4WDの性能は試したわけではないが、「4H」(4WD)から「2H」(2WD)に切り替えると明らかにフリクションが少なくなるので、日常的に都会を走ったりあるいは高速を走るときは2Hがお勧めである。因みに前述した燃費は2Hで記録したものだ。
◆ピックアップで街を闊歩するのもカッコいい
その昔、陸サーファーと称してサーフボードを屋根に積んで都会を走り回ることが流行ったことがあるが、アウトドアの嗜好が強いピックアップで街を闊歩するのもカッコいいと思う。なにより、ジーンズとTシャツがとても良く似合う。
流石にテールゲートのあおりは重く、開閉が大変だから、オプションのテールゲートアシストはあった方が良い。それにソフトトノカバーがあれば、ベッドの荷物が隠れて安心感が高い。オプションとしてはこの二つがお勧めである。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員・自動車技術会会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来46年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。最近はテレビ東京の「開運なんでも鑑定団」という番組で自動車関係出品の鑑定士としても活躍中。
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