【試乗記】レクサスRC F/RC
- レクサスRC F“パフォーマンスパッケージ”(FR/8AT)/RC F(FR/8AT)/レクサスRC350“Fスポーツ”(FR/8AT)/レクサスRC300h“バージョンL”(FR/CVT)
バトルの火種となるか
パワフルなV8エンジンから足まわり、そして空力性能と、あらゆる点に改良が加えられた高性能スポーツクーペ「レクサスRC F」。最新型の到達点を確かめるべく「RC350」や「RC300h」とともに富士スピードウェイで試乗した。
ドイツのライバルを横目に
レクサスRC Fの開発スタッフの方に、「今度の“F”はニュルブルクリンクでテストを重ねたとのことですが、ベンチマークは何ですか?」とうかがうと、「特にコレと決めたクルマはありません」との“模範”解答。ちょっとガッカリした当方の顔を見てか、「でも、(メルセデスAMGの)『C63』や(BMWの)『M4クーペ』には乗りましたよ」とヒントを与えてくれた。
「やはり『M3』じゃなくて『M4』なんだァ」と枝葉のことに感心していたら、同席していたジャーナリストの人が、「(ニュルブルクリンクのタイムは)8分切りですか?」とストレートな質問。「いや、タイムは計っていないんです」との答えに、「そんなはずはないでしょう!」と一同笑って、次のクルマの試乗に赴いた。
2018年10月にレクサスのFRスポーツクーペRCが、2019年5月にはそのハイパフォーマンス版であるRC Fがマイナーチェンジを受けた。ノーマルのRCは、内外装の質感向上と、空力の洗練、足まわりのファインチューニングなどが改良点。RC Fは、軽量化と空力の改善、そしてサーキット走行に焦点を当てたスパルタンなグレード“パフォーマンスパッケージ”の新設がニュースだ。
価格は、2リッター直4ターボを積む「RC300」が556万円から、2.5リッター直4+モーターのハイブリッドモデル「RC300h」が600万円から、3.5リッターV6搭載の「RC350」が683万円からとなる。フロントに5リッターV8を押し込んだRC Fは、1021万0909円から。ちなみに、先に車名が挙げられたM4クーペは1185万円、C63は1235万円からである。
「やはり『M3』じゃなくて『M4』なんだァ」と枝葉のことに感心していたら、同席していたジャーナリストの人が、「(ニュルブルクリンクのタイムは)8分切りですか?」とストレートな質問。「いや、タイムは計っていないんです」との答えに、「そんなはずはないでしょう!」と一同笑って、次のクルマの試乗に赴いた。
2018年10月にレクサスのFRスポーツクーペRCが、2019年5月にはそのハイパフォーマンス版であるRC Fがマイナーチェンジを受けた。ノーマルのRCは、内外装の質感向上と、空力の洗練、足まわりのファインチューニングなどが改良点。RC Fは、軽量化と空力の改善、そしてサーキット走行に焦点を当てたスパルタンなグレード“パフォーマンスパッケージ”の新設がニュースだ。
価格は、2リッター直4ターボを積む「RC300」が556万円から、2.5リッター直4+モーターのハイブリッドモデル「RC300h」が600万円から、3.5リッターV6搭載の「RC350」が683万円からとなる。フロントに5リッターV8を押し込んだRC Fは、1021万0909円から。ちなみに、先に車名が挙げられたM4クーペは1185万円、C63は1235万円からである。
ダイエットは「1人分」
ソニックチタニウムにペイントされたRC F“パフォーマンスパッケージ”に、富士スピードウェイで乗る。マイナーチェンジ後のRC Fは、RCと合わせてヘッドライト内に3連のLEDランプが縦に並べられ、フロントの華やかさを増している。さらにFには、「レース育ちのスタイリング」をうたったモディファイが施された。具体的には、フロントスポイラーの角にレースカーからインスピレーションを得たカナードが張り出し、サイドのロッカーモールの後端はカットされ、前後ホイールタイヤ後端に設けられたエアアウトレットと併せ、エアロダイナミクスへの配慮を視覚化する。
新たに加わった“パフォーマンスパッケージ”では、そのうえリアに固定式のカーボンウイングが生え、フロントスポイラー、サイドシルのロッカーフィン、ボンネット、ルーフがカーボン化された。さらに軽量の鍛造アルミホイール、チタン4連エキゾーストマフラーがおごられる。車重は、素のRC Fが1770kgのところ、なんと50kgも軽い1720kg。RC Fそのものが、従来モデルより20kg軽くなっているから、合わせて70kgの軽量化。ひと1人分だ! ホイールはもちろん、タイヤやスプリング、ブレーキにまで軽量化の手が及んでいる。
“パフォーマンスパッケージ”の内装は、専用のフレアレッド仕様。シート、ドア内張りはもちろん、ステアリングホイールの下端、センターコンソールの側壁、足元のフロアにも艶(あで)やかなレッドのカーペットが用いられ、いやが応でもドライバーの気分を高揚させる。シート地にはレザーとアルカンターラというぜいたくなコンビネーションが採られたが、一方、ステアリングホイールの位置調整は電動機構が廃され、手動となった。ここで、約600gの軽量化。
新たに加わった“パフォーマンスパッケージ”では、そのうえリアに固定式のカーボンウイングが生え、フロントスポイラー、サイドシルのロッカーフィン、ボンネット、ルーフがカーボン化された。さらに軽量の鍛造アルミホイール、チタン4連エキゾーストマフラーがおごられる。車重は、素のRC Fが1770kgのところ、なんと50kgも軽い1720kg。RC Fそのものが、従来モデルより20kg軽くなっているから、合わせて70kgの軽量化。ひと1人分だ! ホイールはもちろん、タイヤやスプリング、ブレーキにまで軽量化の手が及んでいる。
“パフォーマンスパッケージ”の内装は、専用のフレアレッド仕様。シート、ドア内張りはもちろん、ステアリングホイールの下端、センターコンソールの側壁、足元のフロアにも艶(あで)やかなレッドのカーペットが用いられ、いやが応でもドライバーの気分を高揚させる。シート地にはレザーとアルカンターラというぜいたくなコンビネーションが採られたが、一方、ステアリングホイールの位置調整は電動機構が廃され、手動となった。ここで、約600gの軽量化。
ボタンひとつでレースカーに
ステアリングホイールを握って走り始めると、RC F“パフォーマンスパッケージ”は素晴らしい加速を披露する。フロントに積まれた4968ccのV型8気筒は、最高出力481ps/7100rpm、最大トルク535Nm/4800rpmを発生。トランスミッションは、2速からトップギアまでロックアップ機構を持つ8段ATだ。エンジンをフルスケールで回して加速すると、おおよそローで65km/h、セカンドで110km/h、サードで160km/hに達する。回転計の針は、ギアが上がるたびに4500rpm、5000rpm、5500rpm付近に落ちて途切れなく速度を上昇させる。
大排気量の自然吸気ユニットらしく、回転数に合わせてリニアに速度を上げていくさまが印象的だ。新型は、エンジン出力のマッピングを変更。従来よりもペダル操作に対応する実際のスロットル開度を抑えて、直線的な加速を得るようになった。「絶対的な加速力が落ちるのでは!?」との心配はいらない。新しいRC Fは、ディファレンシャルギアをローギアード化して、より加速に振っている。メカニカルに根本的な処置が施されたわけだ。気になる最高速は、これまでと変わらない270km/h。そこでリミッターが作動する。
ドライブモードには、「エコ」「ノーマル」「スポーツ」「スポーツ+」と4つのモードが用意され、シフター横のダイヤルで切り替えられる。スポーツ+はサーキット走行に特化したまったく特殊なモードで、ステアリングのパワーアシスト量は減らされて操作感が重くなり、ギアチェンジは俊敏に、ザックス製ショックアブソーバーを用いた足まわりは、がぜん、硬くなる。平滑な路面の富士スピードウェイでも、運転者は細かく上下に揺すられ、なんだかレースカーをドライブしているよう。スロットル操作に合わせて、人工的に生成されたエンジン音が室内に響いて、硬軟両面から気分を盛り上げる。
大排気量の自然吸気ユニットらしく、回転数に合わせてリニアに速度を上げていくさまが印象的だ。新型は、エンジン出力のマッピングを変更。従来よりもペダル操作に対応する実際のスロットル開度を抑えて、直線的な加速を得るようになった。「絶対的な加速力が落ちるのでは!?」との心配はいらない。新しいRC Fは、ディファレンシャルギアをローギアード化して、より加速に振っている。メカニカルに根本的な処置が施されたわけだ。気になる最高速は、これまでと変わらない270km/h。そこでリミッターが作動する。
ドライブモードには、「エコ」「ノーマル」「スポーツ」「スポーツ+」と4つのモードが用意され、シフター横のダイヤルで切り替えられる。スポーツ+はサーキット走行に特化したまったく特殊なモードで、ステアリングのパワーアシスト量は減らされて操作感が重くなり、ギアチェンジは俊敏に、ザックス製ショックアブソーバーを用いた足まわりは、がぜん、硬くなる。平滑な路面の富士スピードウェイでも、運転者は細かく上下に揺すられ、なんだかレースカーをドライブしているよう。スロットル操作に合わせて、人工的に生成されたエンジン音が室内に響いて、硬軟両面から気分を盛り上げる。
走行モードはコースに合わせて
富士でタイムアタックするならスポーツ+で決まりだが、自分のような軟弱ドライバーは、むしろ「スポーツモードの方が楽しい」と感じた。サスペンションがしなやかさを取り戻すので車両の挙動がわかりやすいし、Dレンジのままでも、こちらの心を読み取るかのようにギアを変えてくれる。VSCボタンを押してオフにしても、実際にはトラクションコントロールが切れるだけでVSCは生きているので、安心感が高い。それでいて電子デバイスの介入は抑えられるので、十二分にスポーツができる。ニュルブルクリンクのような荒れた路面のコースでは、「足が十分に動くスポーツモードの方が速いんです」と、試乗後に開発メンバーのひとりが教えてくれた。
ごく短時間だが、一般公道にRC Fを持ち出すことができた。スポーツ+では、さすがに乗り心地が厳しいが、ノーマルモード、スポーツモードなら、「スポーティーに締まった」と評することができる。ベーシックなRC Fより400万円弱お高い1404万円のプライスタグが付く“パフォーマンスパッケージ”だが、助手席にわが家の財務省を乗せたとて、横から激しい非難を浴びることはなさそうだ。いうまでもなく、ノーマルモードでも、過剰といっていい速さを保っている。
レクサスRC Fは、公式には(!?)輸入車のハイパフォーマンスモデルをライバルとするが、その実、「日産GT-R」あたりもうかうかとしていられないのではないか。自動車メディア的には、ターボを積んだ4WDのハイメカモンスターとして別カテゴリーに入れられるはずだが、レクサスが地道に改良を重ねるのを横目に、「ウチは指名買いが大半ですから」と安穏としているわけにもいくまい。RC F“パフォーマンスパッケージ”が、意外な所に火をつける、かもしれない。
ごく短時間だが、一般公道にRC Fを持ち出すことができた。スポーツ+では、さすがに乗り心地が厳しいが、ノーマルモード、スポーツモードなら、「スポーティーに締まった」と評することができる。ベーシックなRC Fより400万円弱お高い1404万円のプライスタグが付く“パフォーマンスパッケージ”だが、助手席にわが家の財務省を乗せたとて、横から激しい非難を浴びることはなさそうだ。いうまでもなく、ノーマルモードでも、過剰といっていい速さを保っている。
レクサスRC Fは、公式には(!?)輸入車のハイパフォーマンスモデルをライバルとするが、その実、「日産GT-R」あたりもうかうかとしていられないのではないか。自動車メディア的には、ターボを積んだ4WDのハイメカモンスターとして別カテゴリーに入れられるはずだが、レクサスが地道に改良を重ねるのを横目に、「ウチは指名買いが大半ですから」と安穏としているわけにもいくまい。RC F“パフォーマンスパッケージ”が、意外な所に火をつける、かもしれない。
「RC350」は大人のクーペ
この日はRC Fのほかに、“ノーマル”のRCにも試乗した。まずは3.5リッターV6(最高出力318ps)を積む、トップモデル「RC350“Fスポーツ”」である。
“Fスポーツ”は、BMWのMスポーツ同様、よりスポーティーに装ったグレードだ。ただでさえアグリーな……じゃなくて、アイキャッチなスピンドルグリルが、漆黒メッキを施されたメッシュタイプとなり、窓枠のモール類がブラックステンレスとなって、ニヒル度を増す。ホイールはインチアップして19インチに。
試乗車は、ずいぶんと派手な黄色のボディーペイント。ドアを開ければ、黒の本革シートに、これまた派手な黄色の縁取りが施された2トーンシート。せっかくのクーペなのだから、これくらい派手に「やっちゃえ!」というレクサスからの提案なのでしょう。祝祭感がわかりやすくてイイと思います。
走り始めれば、むしろ穏やかな大人のクーペ。3.5リッターという余裕の排気量が、ペダル操作に合わせてじんわりパワーを上げていくさまが、いまどきぜいたく。乗り心地はフラットで、踏めばもちろん速いのだけれど、全般に旦那な雰囲気。FRのさりげない上質さが、ドライブフィールによく溶け込んでいる。21世紀の最新「ソアラ」、といえるかもしれない。
“Fスポーツ”は、BMWのMスポーツ同様、よりスポーティーに装ったグレードだ。ただでさえアグリーな……じゃなくて、アイキャッチなスピンドルグリルが、漆黒メッキを施されたメッシュタイプとなり、窓枠のモール類がブラックステンレスとなって、ニヒル度を増す。ホイールはインチアップして19インチに。
試乗車は、ずいぶんと派手な黄色のボディーペイント。ドアを開ければ、黒の本革シートに、これまた派手な黄色の縁取りが施された2トーンシート。せっかくのクーペなのだから、これくらい派手に「やっちゃえ!」というレクサスからの提案なのでしょう。祝祭感がわかりやすくてイイと思います。
走り始めれば、むしろ穏やかな大人のクーペ。3.5リッターという余裕の排気量が、ペダル操作に合わせてじんわりパワーを上げていくさまが、いまどきぜいたく。乗り心地はフラットで、踏めばもちろん速いのだけれど、全般に旦那な雰囲気。FRのさりげない上質さが、ドライブフィールによく溶け込んでいる。21世紀の最新「ソアラ」、といえるかもしれない。
バランスのいい「RC300h」
トヨタ……じゃなくて、レクサスのクーペなのだから、やはりハイブリッドがないと……。という政策面が感じられるグレードが、「RC300h“バージョンL”」だ。とはいえ、ベーシックな2リッター直4ターボのチューン違いでラインナップを構成しないあたり、トヨタ……じゃなくて、レクサスの底力を感じさせる。
最大トルク221Nmの2.5リッター自然吸気エンジンに、同じく300Nmの電気モーターを組み合わせる。3リッター並みのトルクをいきなり供給するモーターの霊験あらたかで、走り始めの力強さは、運転者をして「オッ!?」と驚かせる。絶対的なシステム出力は限られるので、加速の伸びの「頭打ち感」は否めないが、ストップ&ゴーの多い街なかドライブでは、満足度が高いはずだ。
1740kgの車重は、RC350のそれを40~50kg上回るが、その分(!?)前後の重量配分は、前:後=870:870kg(車検証記載値)と良好。ワインディングロードの下りでは、思いのほかバランスのいい走りを見せて“スポーツ”を楽しませてくれる。試乗車は、オプションの19インチ(前後異サイズ)を履いていたが、ノーマルの前後235/45R18のママの方が、300hのよさが出るかもしれない。
(文=青木禎之/写真=宮門秀行、webCG/編集=関 顕也)
最大トルク221Nmの2.5リッター自然吸気エンジンに、同じく300Nmの電気モーターを組み合わせる。3リッター並みのトルクをいきなり供給するモーターの霊験あらたかで、走り始めの力強さは、運転者をして「オッ!?」と驚かせる。絶対的なシステム出力は限られるので、加速の伸びの「頭打ち感」は否めないが、ストップ&ゴーの多い街なかドライブでは、満足度が高いはずだ。
1740kgの車重は、RC350のそれを40~50kg上回るが、その分(!?)前後の重量配分は、前:後=870:870kg(車検証記載値)と良好。ワインディングロードの下りでは、思いのほかバランスのいい走りを見せて“スポーツ”を楽しませてくれる。試乗車は、オプションの19インチ(前後異サイズ)を履いていたが、ノーマルの前後235/45R18のママの方が、300hのよさが出るかもしれない。
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