【試乗記】スバル・レヴォーグSTI Sport EX(4WD/CVT)
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スバル・レヴォーグSTI Sport EX(4WD/CVT)
とことんまじめに
まずは視界のよさに驚く
遅ればせながら新型レヴォーグに試乗する機会を得た。「2020-2021日本カー・オブ・ザ・イヤー(COTY)」を受賞し、同業諸氏もすでに数名が実際に購入したと聞く。その出来栄えに、いやがうえにも期待は高まる。
エクステリアデザインは、基本は先代のフォルムを踏襲しながら、より洗練された印象だ。中央に切れ込みの入ったヘッドライトやテールライトが特徴的で、ボンネット上には、今やスバル車でも少数となりつつあるエアスクープが備わっている。
かつて、背丈の低い水平対向エンジンゆえに、その上部にインタークーラーが装着可能で、よってボンネットにエアスクープが必要だったという話を聞いたことがある。しかし、空力的にはないほうがいいだろうし、ましてやレヴォーグのエンジンは一から開発された新型である。想像するに、今の技術をもってすれば取り除くことも可能だったろう。それでもあえて残したというところにこだわりを感じる。
室内に乗り込むと、フラットボトムのステアリングホイールの奥には、12.3インチのフル液晶メーターが、インストゥルメントパネルの中央には11.6インチの縦長のタッチスクリーンが備わる。そうした華やかな装備に目を奪われがちだが、少し俯瞰(ふかん)してみれば、ダッシュボードの上がフラットで視界を遮るものがなく、Aピラーの付け根にはサイドミラーと干渉しないようにデザインされた小窓が設けられている。とにかく見晴らしがいいのだ。個人的にはもう少しだけシートポジションを低い位置に調整できればと感じたけれど、良好な視界を味わうための配慮だとすれば合点がいく。バックミラーに目をやると、後方視界もしっかりと確保されている。
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「レヴォーグ」は2014年に初代が登場したスバルのスポーツワゴン。現行型は2代目のモデルにあたり、「2020-2021日本カー・オブ・ザ・イヤー」に選ばれた。
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ダッシュボードは、上面が低くフラットな形状。Aピラーまわりの死角の少なさと相まって、広々とした視界を提供してくれる。
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「EX」系のグレードに標準で、その他のグレードにオプションで設定される11.6インチのセンターディスプレイ。ナビゲーションやインフォテインメントシステム、ドライブモードセレクトなどはもちろん、空調もここで操作する。
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試乗車のグレードは「STI Sport EX」。運動性能を高める各種装備と、最新の運転支援システムおよびインフォテインメントシステムを備えた、最上級モデルだ。
進化を続ける「スバルグローバルプラットフォーム」
驚いたのはそのボディーの剛性感。現行「インプレッサ」などと同様の「スバルグローバルプラットフォーム」を採用するが、既存のモデルとは隔世の感がある。従来はアッパーやフロア、サイドコンポーネントを別々に組み立ててアッセンブルしていたものを、まずボディー骨格全体を組み上げてから外板をかぶせるフルインナーフレーム構造に変更したことで、軽量化しつつねじり剛性を大幅にアップさせた。
また上級グレードの「STI Sport」にはZF製の電制ダンパーが装備されているが、これがいい仕事をする。メルセデス・ベンツやBMWなど欧州プレミアムブランドが多く採用しているダンパーだが、高剛性ボディーとの組み合わせで、日本車離れした乗り味を実現している。
より高精度かつ多機能に進化したアイサイト
最新のアイサイトXではGPS情報と3D高精度地図データを組み合わせ、自動車専用道路での渋滞時(0〜50km/h)など、一定条件下でのハンズオフ走行(手放し運転)を可能にした。また自動で車線変更してくれるアクティブレーンチェンジアシストなど、限りなく“レベル3”に近い自動運転機能も備えている。
唯一気になったのは、高速道路の料金所できっちりと法定速度までスピードを落とすため、周囲のクルマとの速度差の大きさにヒヤッとする場面があったことだ。これは日産の「プロパイロット」などでも感じたことで、レヴォーグの問題というよりは、建前と本音が混在し、法規と現実世界の乖離(かいり)が大きい日本の道路状況によるものだ。運転支援から本当の意味での自動運転へと進むためには、解決すべき課題だろう。
それはさておき、運転支援システムにみるレヴォーグのいい点が、ドライバーの状態を検知するステアリングセンサーに、静電容量式のタッチセンサーを使用していること。トルク感応式では、ステアリングを軽く握っているだけだとアラートが頻発するケースも多いのだが、レヴォーグではそれにイライラさせられることもない。それでいて、ドライバーは顔に向けられたカメラによっても監視されているので、よそ見をすればしっかりと警告を受ける。
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「EX」系のグレードには、運転支援システム「アイサイト」の中でも、より機能の充実した「アイサイトX」を装備。本文で紹介される機能に加え、ドライバーの異常を検知すると自動で減速・停止するデッドマン対応機能も備わっている。
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運転支援システムの操作パネルはステアリングホイールの右スポークに備わっており、その下のドライブモード切り替えスイッチともども、ステアリングから手を離さずに操作が可能だ。
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「STI Sport/STI Sport EX」の本革シート。色はボルドーとブラックのツートンで、ポジションメモリー機能付きの電動調整機構やシートヒーターが備わる。
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リアシートはリクライニング機構および4:2:4の3分割可倒機構付き。従来モデルより前後席間距離が25mm延び、ゆとりが増した。
カスタマイズ機能で“自家製SNOWモード”を設定
軽井沢の市街地を抜け、国道146号を北上。鬼押ハイウェー経由で万座を目指す。次第に雪深くなり、ところどころに凍結した路面も現れるが、ていねいな運転さえ心がけていれば挙動が乱れるようなことはない。新型ではカタログなどでもことさらに強調してはいないけれど、レヴォーグの駆動系は言わずもがなの「シンメトリカル4WD」であり、雪上走行もお手の物だ。
STI Sportに用意されるドライブモードは「Comfort」「Normal」「Sport」「Sport+」「Individual」の5種類で、いわゆるスノーモードはない。基本的には「Comfort」か「Normal」で事足りるが、ドライブモードセレクトを使って、パワーユニットとステアリングを「Sport」、サスペンションは「Comfort」の組み合わせを「Individual」にプリセットしておいた。これを個人的なスノーモードとして雪上走行するとちょうどいいあんばいだった。ドライブモードは、ステアリングスイッチやセンターのタッチスクリーンで簡単に切り替えられ、自分好みの走行モードを探す楽しみがある。もちろん、それを享受するにはモードセレクト機能とZFの電制ダンパーが必須なので、走りにこだわりたい人はやはりSTI Sportを選んだほうがいいだろう。
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「STI Sport/STI Sport EX」に備わる、ブラック塗装と切削光輝加工を組み合わせた18インチアルミホイール。雪上試乗に合わせ、ヨコハマのスタッドレスタイヤ「アイスガードiG60」が装着されていた。
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ドライブモードでは選択された走行モードに応じて、スロットルレスポンスやステアフィール、4WDの駆動力配分などに加え、空調の効き具合や運転支援システムの加減速度合いも変化。「Individual」では、これらの設定を個別に変更できる。
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「レヴォーグ」の駆動方式は全車共通でフルタイム4WD。燃費的に不利とされる四駆だが、今回の試乗では雪道や急峻(きゅうしゅん)な峠道を含む506kmの道程を走破し、実燃費は10km/リッターを超えた。
熱く支持されるスバルのこだわり
投宿先のホテルに到着すると、駐車場まで出迎えてくれたポーター係のスタッフが、カメラマンの機材バッグを両手に抱えながら、しげしげとレヴォーグを眺めている。「WRブルー」のSTI仕様がたいそう気に入った様子で、「新型初めて見ました。カッコいいですよね」と興奮気味に話す。聞けばまだハタチで、今は父親のお下がりに乗っているが、いずれはスバルが欲しいのだという。そういえばここは群馬県だから、スバルのおひざ元ともいえるけれど、それでも若者に支持されるのはうれしいことだ。
新型レヴォーグには、「レガシィ」から受け継がれるステーションワゴンであること、水平対向ターボの証しであるエアスクープを備えること、走る・曲がる・止まるの基本性能が高められていること、安全のためにアイサイトを進化させたことなど、実にたくさんのこだわりが詰まっている。全幅が1800mm以下であることや、新開発エンジンがレギュラー仕様で価格的にもアフォーダブルであることも、そこに含まれるだろう。
最新モデルなのにパワートレインが電動化されているわけでもないし、とりたてて速いわけでもないけれど、おそらくCOTYの選考委員は、そうしたつくり手の思いを評価したのではなかろうか。他社のキャッチフレーズで恐縮だが、「まじめ まじめ まじめ」という言葉を思い出した。
(文=藤野太一/写真=荒川正幸/編集=堀田剛資)
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万座ハイウェーに入ると天候は雪に。滑りやすく、踏ん張りのきかない積雪の上でも、「レヴォーグ」は安定した走りを披露する。
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「EX」系のグレードに装備される、12.3インチのフル液晶モニター。2眼式のメーターを消して、ディスプレイ全体にナビゲーションの地図画面を表示したり、運転支援システムの作動状態を大きく表示したりできる。
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運動性能や動的質感に加え、ワゴンとしての機能性も従来モデルから進化。ラゲッジスペースは、フロアボード上部が492リッター、サブトランクが69リッターの計561リッターと、先代比で39リッター増となった。
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従来モデルから着実に進化し、多方面で高レベルの性能を実現した新型「レヴォーグ」。スバルのこだわりと、まじめな気質が感じられるクルマだった。
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