【試乗記】トヨタ・アルファード/ヴェルファイア
引き継いだのは名前だけ
鶴の一声で残ったヴェルファイア
もともとは「エルグランド」のフォロワーだった「アルヴェル」は、FF土台の室内高や容積でエルグランドを刺し、顔面力で「エリシオン」や「オデッセイ」を圧してきた。他銘柄どころか同門でさえ手に負えない勢いが決定的になったのは3代目の大ヒットだろう。派手な色をまとったりニュルでシゴいたりしていくらあらがおうが、右肩上がりのアルファードに反比例するかのように数字を落としていったのが「クラウン」だ。その史上最大の変革もまた、アルファードが渡した引導によるものだったのかもしれない。
と、そのアルファードの先代は、先々代の20系では販売的に主導権を握っていたヴェルファイアをも駆逐する勢いで台数を伸ばしていく。2018年のマイナーチェンジ後はシャープさを強めたデザインも相まってか、台数面でヴェルファイアを逆転。コロナ禍のなか、販売チャンネル統合の流れもくみながら、次期アルヴェルはアルファードに一本化という流れが既定路線であるようにもうかがえた。
が、結果的には豊田(現)会長の助言もあって、ヴェルファイアは継続販売の道をたどることとなった。そのうえ、エクステリア面でのアルファードとの差別化はグリル形状や加飾、デイタイムランニングライトやテールライトのグラフィック程度とむしろ消極的になったようにも感じられる。とあらば、両銘柄の差異は中身にしっかり見て取れるものでなければならない。
まずは売れ筋グレードを集中生産
新型アルファードとヴェルファイアで最も明確な仕様差といえばパワートレインだ。アルファードには前型からの流れとなる2.5リッター4気筒自然吸気を用意するのに対して、ヴェルファイアには新たに2.4リッター4気筒ターボを搭載。従来の3.5リッターV6に相当する動力性能を得ている。この動力性能に合わせてタイヤは全グレードで19インチを設定。サスセッティングも走りを意識したものになるなど、アルファードとはダイナミクスで明確に差をつけたかっこうだ。ちなみに2.5リッター4気筒ハイブリッドは双方に用意される。
グレード展開は2つとなり、「エグゼクティブラウンジ」は双方に設定されるほか、アルファードには「Z」を、ヴェルファイアには「Zプレミア」をおのおの用意。両グレードの価格差は70万円だが、装備的な違いはシート表皮やADASの充実ぶりに表れている。全グレード、全パワートレインで四駆が選べるようになっている点も購入上のポイントとなるだろう。
走りに振ったヴェルファイア
撮影等の時間も勘案しながら、2.4リッターターボを搭載したヴェルファイアのZプレミアと、2.5リッターハイブリッドを搭載したアルファードのZ、その2グレードを軸に試乗した。パワートレインの差異があるとはいえ、伝わってきたのはこの2銘柄がかなり明確に走りの個性を違えて差別化されているということだ。端的に表そうとすると、ヴェルファイアはすっきりとキレのある、アルファードはまったりとコクのある……と、なんだかビールの飲み比べのような話になってしまうが、乗ってみればそんなニュアンスも伝わるのではないかと思う。
ヴェルファイアはタイヤサイズやサスまわりの設定のみならず、前のクロスメンバーからコアサポート部にブレースを追加して車体側の補強を図るなど、設計段階でもスポーティーネスをはっきりと意識しているが、走り込みの段階でも旋回をしっかり織り込んだしつけがなされていることが分かる。印象的なのは、ともあれ据わりがよく、パワーオンでぐっと沈み込んで粘り抜くリアサスの動きだ。剛性や操舵応答性の向上しろをしっかりクルマの挙動に反映させながら、あえて言うならワインディングロードを安心して攻め込める、そんな走りを実現している。
この巨体にしてそんな運動性能ということに鑑みれば、乗り心地も悪くない。後席に乗せられる側にしてみても、むしろピッチの収束が早いヴェルファイアのほうが案配がいいという方もいるかもしれない。
個性として付与されたゆるさ
対すればアルファードは上屋の動き全体もゆったりしているし、操舵感も滑らかさが際立てられている。昭和世代が慣れ親しんだクラウン的ゆるふわ感を見失って早幾とせ、ここに再び降臨したかのような印象だ。
そういう意味では30系のアルヴェルにもそういう柔和さが感じられるところもあったが、なにぶん床まわりの微振動が取れなかったり上屋の曲げやねじりの剛性が乏しかったりと、土台からヤワなところがあった。40系は待望のTNGA世代へとプラットフォームのアップデートを果たしただけでなく、カウルやピラー形状の最適化、環状構造の多層化を図るなど文字どおりの完全刷新だ。そのうえでゆるさを個性として付与しているわけで、そうならざるを得なかった30系とはやっぱり素性からして違う。いざ踏み込んで曲がってみると、奥底にみえる動的な素性はヴェルファイアと大差はない。言い換えれば、しっかり骨格で走れているということだ。
わずかな時間ながら座った後席では、持病だった床板の微振動がかなり封じ込められていることも確認できた。その真価を知るにはもう少し時間をかけて乗ってみる必要がありそうだが、ともあれ動的質感においての進化とすみ分けにおいては、30系とは比較にならないレベルにあることが断言できる。
テスト車のデータ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4995×1850×1935mm
ホイールベース:3000mm
車重:2230kg
駆動方式:4WD
エンジン:2.5リッター直4 DOHC 16バルブ
フロントモーター:交流同期電動機
リアモーター:交流同期電動機
トランスミッション:CVT
エンジン最高出力:190PS(140kW)/6000rpm
エンジン最大トルク:236N・m(24.1kgf・m)/4300-4500rpm
フロントモーター最高出力:182PS(134kW)
フロントモーター最大トルク:270N・m(27.5kgf・m)
リアモーター最高出力:54PS(40kW)
リアモーター最大トルク:121N・m(12.3kgf・m)
システム最高出力:250PS(184kW)
タイヤ:(前)225/65R17 102H/(後)225/65R17 102H(ブリヂストン・トランザT005A)
燃費:16.5km/リッター(WLTCモード)
価格:872万円/テスト車=908万6520円
オプション装備:ボディーカラー<プレシャスレオブロンド>(5万5000円)/ユニバーサルステップ<スライドドア左右・メッキ加飾付き>(6万6000円)/ITSコネクト(2万7500円)/CD・DVDデッキ(4万1800円) ※以下、販売店オプション フロアマット<エグゼクティブ・エントラントマット付き>(13万2000円)/前後方2カメラドライブレコーダー(4万4220円)
テスト車の年式:2023年型
テスト開始時の走行距離:852km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:--km/リッター
トヨタ・アルファードZ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4995×1850×1935mm
ホイールベース:3000mm
車重:2230kg
駆動方式:4WD
エンジン:2.5リッター直4 DOHC 16バルブ
フロントモーター:交流同期電動機
リアモーター:交流同期電動機
トランスミッション:CVT
エンジン最高出力:190PS(140kW)/6000rpm
エンジン最大トルク:236N・m(24.1kgf・m)/4300-4500rpm
フロントモーター最高出力:182PS(134kW)
フロントモーター最大トルク:270N・m(27.5kgf・m)
リアモーター最高出力:54PS(40kW)
リアモーター最大トルク:121N・m(12.3kgf・m)
システム最高出力:250PS(184kW)
タイヤ:(前)225/60R18 100H/(後)225/60R18 100H(ヨコハマ・アドバンV03)
燃費:16.7km/リッター(WLTCモード)
価格:642万円/テスト車=706万4820円
オプション装備:ボディーカラー<プラチナホワイトパールマイカ>(3万3000円)/ユニバーサルステップ<スライドドア左右・メッキ加飾付き>(6万6000円)/ITSコネクト(2万7500円)/アドバンストドライブ<渋滞時支援>+アドバンストパーク<リモート機能>+パーキングサポートブレーキ<周囲静止物>+エレクトロシフトマチック+シフトパドル+緊急時操舵支援<アクティブ操舵機能付き>+フロントトラフィックアラート+レーンチェンジアシスト(13万9700円)/左右独立ムーンルーフ<電動シェード&挟み込み防止機能付き>(13万2000円)/カラーヘッドアップディスプレイ(5万5000円) ※以下、販売店オプション フロアマット<エグゼクティブ・エントラントマット付き>(13万2000円)/ラグマット(1万5400円)/前後方2カメラドライブレコーダー(4万4220円)
テスト車の年式:2023年型
テスト開始時の走行距離:1253km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:--km/リッター
トヨタ・ヴェルファイア エグゼクティブラウンジ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4995×1850×1945mm
ホイールベース:3000mm
車重:2250kg
駆動方式:4WD
エンジン:2.5リッター直4 DOHC 16バルブ
フロントモーター:交流同期電動機
リアモーター:交流同期電動機
トランスミッション:CVT
エンジン最高出力:190PS(140kW)/6000rpm
エンジン最大トルク:236N・m(24.1kgf・m)/4300-4500rpm
フロントモーター最高出力:182PS(134kW)
フロントモーター最大トルク:270N・m(27.5kgf・m)
リアモーター最高出力:54PS(40kW)
リアモーター最大トルク:121N・m(12.3kgf・m)
システム最高出力:250PS(184kW)
タイヤ:(前)225/50R19 103H/(後)225/50R19 103H(ダンロップSP SPORT MAXX 050)
燃費:16.5km/リッター(WLTCモード)
価格:892万円/テスト車=923万1520円
オプション装備:ユニバーサルステップ<スライドドア左右・メッキ加飾付き>(6万6000円)/ITSコネクト(2万7500円)/CD・DVDデッキ(4万1800円) ※以下、販売店オプション フロアマット<エグゼクティブ・エントラントマット付き>(13万2000円)/前後方2カメラドライブレコーダー(4万4220円)
テスト車の年式:2023年型
テスト開始時の走行距離:654km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:--km/リッター
トヨタ・ヴェルファイアZプレミア
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4995×1850×1945mm
ホイールベース:3000mm
車重:2240kg
駆動方式:FF
エンジン:2.4リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:279PS(205kW)/6000rpm
最大トルク:430N・m(43.8kgf・m)/1700-3600rpm
タイヤ:(前)225/50R19 103H/(後)225/50R19 103H(ダンロップSP SPORT MAXX 050)
燃費:10.2km/リッター(WLTCモード)
価格:655万円/テスト車=681万9720円
オプション装備:ユニバーサルステップ<スライドドア左右・メッキ加飾付き>(6万6000円)/ITSコネクト(2万7500円) ※以下、販売店オプション フロアマット<エグゼクティブ・エントラントマット付き>(13万2000円)/前後方2カメラドライブレコーダー(4万4220円)
テスト車の年式:2023年型
テスト開始時の走行距離:802km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター
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