念願達成!だったのですが…安東弘樹連載コラム
私、申し上げるまでも有りませんが、常軌を逸したクルマ好き、いや運転好きです。それが高じて、日本の47都道府県、全てクルマで走ったことがあります。
それも沖縄以外はすべて、自分のクルマを自分で運転して走破してきました。さすがに沖縄だけはレンタカーを使ってのドライブでしたが、いずれは鹿児島からフェリーを使って自分のクルマで上陸しようとたくらんでいます。
しかし、そんな私が、喉に刺さった魚の骨の様に、ずっと気になって仕方がなかった道がありました。ここを走らずに、日本全国の道を走ったと言えるのか?
そう自問してきた日々…。その道とは、そう日本で唯一、砂浜をクルマで走ることができる、千里浜なぎさドライブウェイです。
日本海に面した石川県羽咋市にある、その道は、クルマはもちろん、バイクや自転車でさえ走行することが可能で、全国のクルマやバイクを愛する人たちの憧れとなってきました。
その周辺の砂が非常に硬く締まっているため、4輪駆動のクルマやオフロード用のバイクや自転車でなくても、ほとんどの「普通の」クルマでスムーズに砂浜の上を走ることができるのです。
私は、これまでロケや取材等で、すぐ近くまで訪れたことは何度もあるのですが、一度も走ったことがありません。
一度は、テレビのロケで、自分の運転ではないものの、そこを走るはずだったのですが、天候に恵まれず、その機会は得られませんでした。
これまで何度か「安東さんだったら、千里浜なぎさドライブウェイは走ったことはありますよね?」と訊かれることがあったのですが、その度に「イヤー走ってみたいんですけど、実はまだなんですよ」と答えると必ず、「意外ですねー」という反応が返ってきていたので、その度に申し訳ないやら恥ずかしいやらで、悔しい?思いをしてきたのです。
しかも最近はバイク乗りのユーチューバー、モトブロガーの動画をみていても、本当に多くの方が、この「千里浜なぎさドライブウェイ」を走る動画を上げていて、それをみる度に焦燥感すら駆り立てられていました。
これは、本当に行かなければ!と思い立ち、所属事務所に連絡し日程も確保し、9月のある週末に石川県へとクルマを走らせたのです。
しかし、葛藤もありました。まだ新型コロナウィルスが収束した訳ではありません。
遠距離の移動をしていいものなのか?しかし経済は深刻なダメージを受けていてそれに起因すると考えられる自殺者も増えている状況も考慮するのがよいのか。
色々と考えたのですが、一人、クルマで目的地まで、限りなくノンストップで向かい、そのまま石川県で一人でホテルに泊まり、食事も一人ですれば、かなり感染リスクは減るのではないかという結論に達し、結局、決行することにしました。
土曜日の午前10時に千葉の自宅を出発し、実際にトイレ休憩で一回、サービスエリアに寄りましたが、ほとんど他の方と接触すること無く16時半には、念願の「千里浜なぎさドライブウェイ」の近くまで到達したのです。予定では金沢に一泊して翌日の午前中から午後まで、たっぷりと、この海沿いのビーチドライブを堪能しようと考えていました。翌日はおおむね晴れるという天気予報でしたので通行止めはないだろうとの予想によるスケジューリングです。
ですので、中途半端な時間に目的地に到達して、少しだけ走り、中途半端な状態で翌日に、また走るより、感動は明日に取っておいて、初見で思う存分、走り回る方がよいのではないかと悩みました。
しかし、「千里浜なぎさドライブウェイ」と書かれた看板を見てしまったら、我慢できませんでした(笑)。
はやる気持ちをおさえながらも、気付いたら本能的にステアリングを、看板の指し示す道に向けてしまっていたのは言うまでもありません。
そして、ついに、その道の入り口にたどり着いたのです!砂浜と海が視界に入った瞬間、思わず「おースゲー!」と呟いてしまいました。
そして、いよいよクルマを砂浜に乗り入れます!
私のクルマは4輪駆動なので不安はありませんでしたが、やはり多少の緊張感を持って走り始めました。しかし、走ってみるとこれが、ビックリ!本当に砂の上とは思えない位に「普通の感覚」で走れることに感動してしまいました…。
むしろ少し物足りないくらいで、これなら4駆でなくても自転車ですら走れる、というのに納得です。クルマのすぐ近くまで波が寄せてきて、窓を開ければ、しっかりと波の音まで聞こえてきました。
しかも時間は夕刻と言う絶好のタイミング!
写真を撮りたくなったので、砂浜でクルマを停めて写真を撮ることにしましたが、土曜日のわりには、やはりコロナ禍故なのか混雑はしていません。
人とほとんど接触することなく、砂浜の波打ち際にクルマが停まっている、という非日常的な写真や動画を存分に撮ることができたのです。およそ8キロの道を往復し、得も言われぬ満足感に包まれながら、宿泊地の金沢に向かいました。
翌日は午前中にこの道を再び走る予定でしたので後ろ髪をひかれることはありません。
意気揚々とクルマを走らせます。
特に意識していなかったのですが、私が千葉県在住のため、既に「Go Toトラベル」の対象になっており、予約の段階で宿泊費が安くなることに気付き、おかげで、いつもより高級なホテルに泊まることができました。
ホテルに着くと、やはり、あまりお客さんは多くありません。チェックインの時も並ぶことなくスムーズに部屋に入ることができたのですが、安心感と同時に心配にもなってきました。
誰もが知る有名な日本ブランドのホテルです。しかも、その日は土曜日。通常であれば、海外からの人も含め、多くの観光客で賑わっているはず…。何とも言えない気持ちになりながらも部屋に入りました。
夕食を、まだ食べていなかったのですが、外に出て人と接触する機会を増やすより、ホテルの中で食事をした方がよいと考え、多少、高価になることを覚悟して、ホテル内の日本料理のお店で食べることにしました。
お店は高級感のあるたたずまいで一瞬、たじろぎましたが、意を決して入ります。
すると受付ではマスクの上にフェイスシールドを付けた方がお辞儀をして迎えて下さり、広いのに誰もいない店内を席まで案内して下さいました。
店内に一人だけ、という状況に、ますます緊張しましたが、スタッフの皆さんのマスク越しの柔和な笑顔に助けられ、お庭が見える席に、一人陣取ることになりました。
お料理は一品ずつ出てくる懐石で、時間を掛けていただいていたのですが、私以外のお客さんは一人も来店しません。
料理は、どれも美味しく、幸せな気持ちで食事をしているのですが、流石に、いつになっても私以外、誰もいないという空間に、違和感をおぼえ、心から心配になってきました。
恐らく、料理の用意は、しっかりとしているでしょう。生ものも多いので、保存がきかないものもあるはずです。
有名ブランドホテル内のお店に土曜日の夜、お客さんがいない。
やはり尋常ではありません。
そして私が食事を終えて会計を済まし、エレベーターで部屋に戻る瞬間まで、とうとう他にお客さんは来ませんでした。
時短営業になっていたので、私が去ったときには営業時間終了まで、残りわずか。
恐らく、この日の売り上げは少なくとも夕食時間に関しては私が払った金額だけだったと思います。
観光地の宿泊、飲食業の方々の状況が深刻なのが実感できました。
今回、意を決して、念願成就を果たしてよかったと心から思いました。
本当に微々たるものですが、ほんの少しだけ、石川県に貢献できたのではないかと思えたからです。
ちなみに次の日は、午前中から「千里浜なぎさドライブウェイ」に直行して、もう一度、走行を楽しんで、そのまま帰るつもりだったのですが、少しでも貢献を増やそうとネットで調べた金沢の古民家カフェで朝食兼昼食をとることにしました。
もちろん、店内が密になるようでしたら、入店はやめようと思っていたのですが、良いことか悪いことか、小さなお店とはいえ、お店には一組のカップルだけしかい居ませんでしたので、そこで食事をすることにしたのです。
ディスタンスは完璧にとれますが、やはり複雑な心境…。そのお店は基本的に女性が一人で切り盛りしているようでしたが、日曜日だからか、恐らく7、8歳位の娘さんが、料理を出す以外の、食器の片付けや、テーブルを拭くといった作業を手伝っていました。
とても微笑ましい光景で、私は幸せな気持ちをいただきましたが、同時に一刻も早い日常の回復を祈らざるを得ません。
食事を終えて、そんな気持ちのまま「千里浜なぎさドライブウェイ」に向かったのですが、何と、その日は風が強いという理由で通行止めになっていたのです!そうなると、本当に予定を変更して、金沢で食事をしてよかったと思いました。
クルマというのは、この様な状況下での移動手段として本当に優れていると思います。
普段は長距離の運転はしないという方も今回をきっかけに、少し足を延ばして感染リスクの少ないクルマで旅をしてみませんか?特に一人旅ですと会話も少なくなり、より安全です。これまで経験がない方も、クルマ一人旅デビュー、いかがでしょうか。
危機的な状況の公共交通機関の会社もあるとは思います。ですが、まずはできることから、観光に頼っている自治体のためにも、そんな提案をさせていただきます。
今回は念願を叶えることが主目的のはずでしたが、改めて日本経済、特に観光、旅行業の現状を目の当たりにして考えさせられる旅になりました。
安東 弘樹
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