パワーアップだけじゃない!? マフラー交換の絶大な効果!

  • GR86に取り付けられたマフラー

チューニングと言えばマフラー交換が定番。とりあえずマフラーを変えたという経験のある方も多いのではないだろうか。
ただ、つけるだけでパワーが数十馬力上がったという時代もあったが今は昔。それでも、今でも付けるだけの効果は十分にある。その理由を届けしていこう。

マフラーの基本的な役割は「消音」と「浄化」

マフラーは排気音を消音する装置。エンジンから排気ガスが出るとまずはエキゾーストマニホールド(エキマニ)で各気筒から1本にまとめられる。ターボ車ならこの位置にターボチャージャーが置かれ、排気ガスの勢いでタービンを回して吸気側の空気を押し込む力を得ている。

最近のクルマでは、ターボ車ならタービンの後に、NA車ならエキマニ直後に触媒(キャタライザー)が設置される。これは温度の高い排気ガスをぶつけることで素早く触媒の温度を適正にして、排気ガスを浄化するため。

触媒は適正温度(一般的に約350度が一つの目安)でないと思ったように排気ガスを浄化できないので、できるだけエンジンに近い位置に設置される。ちなみに近年のクルマでエンジン始動直後にアイドリング回転数が高いのはこちらも触媒を温めるため。なので、温度が上がるとアイドリングが下がるようになっている。

触媒のあとにはフロントパイプやセンターパイプと呼ばれるパイプがある。そのあとマフラーに接続されている。テールピースだけのマフラーなら、センターパイプよりも後ろを交換する。マフラーによってはセンターパイプまで込みのモデルもある。

  • 排気音を小さくするマフラーのサイレンサー

    このマフラーでは主にタイコとも呼ばれるサイレンサー内部で音を小さくしている

マフラーの消音の仕組み

純正マフラーでは隔壁構造と呼ばれる構造で、小さな部屋に排気ガスを貯めて反対側の穴から排出する。これを繰り返して音を小さくしていく。小さな部屋から小さな部屋に移動して行って、途中で何度も方向転換していく中で音を小さくしていく。

対するアフターパーツのマフラーでの主流はストレート構造と呼ばれるもの。真っ直ぐなパイプには多数の穴が開けられていて、その周りにはグラスウールというガラス繊維でできた綿のようなものが敷き詰められている。このグラスウールが音を吸収して小さくしてくれるのだ。
排気ガスは基本的にまっすぐに進むので排気抵抗が少なく、エンジンパワーアップに効果があるのだ。

しかし、このグラスウール方式だと徐々にグラスウールが劣化する。ときにはグラスウールが飛んでいってしまうことがあり、そうなると徐々に音量が大きくなることもある。
対する隔壁構造は破損がなければ基本的に消音性能は変わらない。そういった寿命の面ではデメリットもあるのがマフラー交換だ。

パワーだけではない魅力がアクセルに対する反応

昭和後期から平成初期にかけてはマフラー交換で数十馬力アップすることも珍しくなかった。しかし、現代ではそうはいかない。コンピュータ制御されたエンジンは排気効率がよくなっても数馬力、トルクもわずかにアップする程度の変化しか起きないことも多い。

しかし、アクセルレスポンスは良くなる。これはアクセルを踏んでからエンジンの回転が上がるまで、加速するまでのタイムラグのこと。エンジンが機敏に反応するようになるとクルマは軽く感じられるくらい意のままに動くようになる。

アクセルに素早く反応して加速してくれるクルマは人馬一体感が高まり、コントロールが圧倒的にしやすくなるのだ。このアクセルに対する反応についてはエンジンパワーやトルクの計測には現れない部分。
パワーチェックはアクセルを全開にして踏みっぱなしにした時のエンジンの最高出力と最大トルクなので、レスポンスは数値にならないのだ。

法規制があり、マフラーとセンターパイプはセット購入が必要!!

  • マフラーのセンターパイプ

気をつけたいのは導入するときの買い方。2010年4月以降に生産されたクルマは事前認証制度を取得したマフラーしか公道では使用できない。

事前認証制度とは、マフラーメーカーが事前にそのマフラーの性能を証明するテストを行っていて、その証明書とタグがついているパーツは車検に通るというもの。

2010年4月以降に生産されたクルマでは、どんなに静かでどんなに排気ガスが綺麗でも自作したマフラーでは違法になるのだ。

<参考>
国土交通省 交換用マフラー事前認証制度
https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_tk10_000019.html

この事前認証は指定のテストに合格し、ISO基準を取得した工場で生産されたものだけに与えられるものなので、ショップでもワンオフマフラーでもダメだし、ISO取得工場で生産しても指定の事前認証テストに合格していなければこちらもダメなのだ。

そして、その事前認証のちょっと面倒なのがマフラーとセンターパイプについて。テールピースだけのマフラーと、テールピース+センターパイプのマフラーがあった場合、どちらも事前認証を取得。その場合に、テールピースだけを使用していて、あとからセンターパイプを購入しても事前認証の制度的にはNG。
センターパイプも使うなら、テールピースとセンターパイプでセットで事前認証を取得したものでなければならないのだ。

そのため、テールピースだけ使っていて、ヤフオクでセンターパイプを見つけたから買って使おうというのは非合法になってしまうのだ。

ただこれは消音器にまつわるものなので、あとからエキゾーストマニホールド交換などはほとんどの場合で問題ない。マフラー購入時にはセンターパイプもセットで購入するかをよく検討しておきたい。

マフラーも消耗品 リフレッシュするのもアリ

マフラーも劣化する。先述のグラスウールの件もそうだし、今やほとんどものがステンレス製だがそれでも降雪地帯で使うと塩害によって腐食したりすることもある。半永久的に使えるものではなく、音量も大きくなったりするので10年も使ったらリフレッシュしても良い。

この場合サイレンサーのリペアでグラスウールを入れ直すこともできるし、そもそもその費用を考えたら買い替えても大差ないことも多い。長い期間使用していたり、中古車を購入してアフターパーツのマフラーがついているなら、そのリフレッシュをしてみるのも手のひとつだ。

(文:加茂新 写真:宮越孝政)