カスタムで正しいドライビングポジションを手に入れよう!
運転をするときのシートの位置や角度、ステアリングやペダルの位置などからなるドライビングポジションはとても重要。きちんとしたポジションでなければ疲れやすいし、適切な操作もできない。
とくにレースの世界は、極限のスピードで極めて的確な操作が求められる。そこでドライバーは細かくポジションにこだわる。
F1のようなフォーミュラカーでは、発泡ウレタンの上に座ってカラダに合わせた形状のシートを製作し、それをはめ込んで座っている。完全オーダーメイドのオリジナルシートというわけだ。
それだけカラダをきっちり支えてくれなければ、強い前後左右のGが掛かるなかで、素早く的確な操作ができない。
ドライビングポジションの基本
ドライビングポジションがきちんとしていなければ操作が雑になるのは市販車も同じ。そこで正しいポジションにすることが大切。
まずシートの前後位置。これはマニュアル車ならクラッチを床まで踏んでも膝が伸び切るか切らないかくらい。
AT車なら右足でブレーキを一番奥まで踏んだときに膝が伸び切らず120°くらいの角度になるようにする。
ステアリングは10時10分から9時15分の位置を持ったまま回したときに、一番手が遠くなる頂点付近のときに肘が軽く曲がる程度が目安となる。
このときに、肘が伸び切きってしまう場合は、もう少し前に座るか、ステアリングを手前にすることになる。
そこで問題になるのが、何をどうしても理想的なポジションが取れないときだ。体型の違いもあるし、車種によっても足で合わせると手が遠い、手で合わせるとペダルが近いというクルマがある。
であればチューニングの出番である。シートやステアリングを変えることで、正しいドライビングポジションを取れるように調整がしやすくなる。
シートの種類と座り方のコツ
シート交換は大掛かりになるが、カラダを支えているパーツだけにその変化は大きい。ざっくりとわけて3対応に分かれる。
①リクライニングシート
ノーマルのシートのようなアフターパーツメーカーのシート。幅やクッション性から角度、座面の床からの高さなどが各種ラインアップされていて、好みに合わせて選ぶことになる。とくに腰痛の方向けのシートがあったり、疲れにくい形状を追求したものもある。
純正シートに極めて近いものもあるが正直掛けられているコストが違うので、アフターパーツのシートの方が高い質感を得られることも多い。大まかに価格は10~30万円ほど。
②セミバケットシート
座面のサイドサポートがあり、背もたれもサイドサポートが立っていて、カラダを横から支えてくれるのがセミバケットタイプ。このあと登場するフルバケットほどのサポート力はないが、ノーマルやリクライニングシートに比べると圧倒的にカラダを支えてくれる。
これと6点式シートベルトなどを組み合わせればサーキット走行でも十分にカラダを支えてくれる。価格は15~30万円ほど。
③フルバケットシート
リクライニングなしの一体成型シェルでできているのがフルバケットシート。これはサーキット走行やレース向けのもので、高い剛性のシェルがカラダを包み込み、強い横Gが発生してもカラダはビクともせず、的確な操作が可能だ。
カーボン製シェルやFRP製など種類があるが、基本的に純正シートよりも軽くできるので軽量化の効果もある。サイズにシビアなのでメーカーによってはXLサイズなど、カラダが大きな人向けのサイズや、XSサイズなど女性向けサイズを用意している場合もある。価格は10~50万円ほど。
シートにはこれだけ種類があり、さらにメーカーによってややタイトなメーカー、大きめなメーカー、硬めなモデル、柔らかめなモデルなどさまざな種類がある。実際に座って、自分のカラダにどうフィットするかで選んでもらいたい。
基本的にはある程度シートの背もたれを寝かせて、体重はその半分くらいを背中で受け止めたい。お尻と背中で半々くらいで受け止めることで、カラダはリラックスできるし、強めにブレーキを踏んだ時にも上半身が前に倒れずに耐えることができる。
サーキットの世界ではとくに強いブレーキを掛けるので、シートはやや寝かせ目にして予めブレーキに備えたポジションにする。その上で手足はフリーで動くようにすることで適切な操作ができるのだ。
ステアリング、ペダルでのドライビングポジションの対策は?
そして、ステアリング交換も重要な要素。最近ではステアリングの前後位置を調整するテレスコピックを装備しているクルマも増えたが、それでももっとステアリングを手前にしたいことも多い。
ステアリング交換にはこれまで任意保険にエアバッグ特約があることが多く、それがネックになることが多かった。現在は多くの保険会社でエアバッグ特約がなくなっているので、ステアリング交換してエアバッグがなくなっても保険の契約には問題はないことが多くなった。
エアバッグを残したい場合は純正ステアリングの位置を手前にするスペーサーなども発売されているので、気になる場合はそういったパーツを選ぶのも手。
車検の面で言えばエアバッグの有無は関係なく、ホーンにイラストが書いてあって認識できるかなどしか問われないので、ステアリングを交換しても問題はない。
さらにペダルの位置が合わない場合は、厚底ペダルが発売されている。純正ペダルのゴムカバーを厚いものにすることでペダルの位置を少し手前に持ってくることができる。
小柄な女性などはクラッチペダルのみ、厚いゴムカバーにすればクラッチペダルを踏み切りやすくなるので、少し後ろの方に座ることができ、余裕を持ったドラポジを構築することも可能なのだ。
シートやステアリングの交換はきちんと専門店で
シート交換は国内外の有名メーカーの商品で所定の手続きを行えば車検も問題ない。逆に言えばドライバーの安全を守るパーツだけに無名海外メーカーのシートとレールでは車検は通過できないし、そもそもドライバーに危険が及ぶこともありうる重要なパーツ。
ただシート交換程度だからとDIYで取り付けを行って、きちんと付いていないとか、シートベルトのホルダーが危険な取り付けだったということも多い。
また、エアバッグを外す際は所定の対策品を使ってエアバッグ警告灯を消す必要もある。
そういった面からシート交換やステアリング交換はプロの手でお願いしたいところだ。
(文:加茂新 写真:宮越政孝、加茂新)
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