チューニングの仕上げはアライメント調整。走りも燃費も左右する必須の項目

  • アライメントを調整している様子

クルマのタイヤはまっすぐに取り付けられているようで、実は細かい角度が決められている。
そしてタイヤがどんな角度で取り付けられているかで、ハンドリングも燃費もタイヤの減りも変わる。

一般的な使い方をしているオーナーにとってはあまり馴染みのない調整ではあるが、クルマをぶつけてしまったり、

  • ハンドルが傾いている
  • 真っすぐ走らない
  • タイヤが偏摩耗している

等の症状がある場合は、実施してみるのも手だ。

いっぽうで、サスペンションを交換したり車高を変えるとアライメントがズレるので、調整が必要となってくる。
細かい調整項目はいろいろあるが、特に調整が必要となる「キャンバー角」と「トー角」について説明していこう。

キャンバー角

  • 正面から見た時のタイヤの角度がキャンバー角

正面から見たときのタイヤの傾きのこと。サーキットを走るクルマやレーシングカーでは「ハの字」になっていることが多い。これをネガティブキャンバーと呼ぶ。
逆ハの字になっている場合はポジティブキャンバーと呼ぶ。現代では少ないがクラシックカーでは見られる。

基本的に狙いはコーナリング時にクルマはロールして傾く。その時に外側タイヤの全面を路面に接触させるために角度をつけておこうというもの。

キャンバー角をつければ付けるほどコーナーでのグリップ力が良くなるわけではなく、サスペンションの硬さと密接に関係する。レーシングカーのような引き締まったサスペンションほどキャンバー角をたくさんつけたほうが良さそうだが実は逆。

サスペンションがソフトなクルマほどたくさんロールしてしまうので、タイヤを全面使うには大きなキャンバー角が必要になる。F1のようにわずかにしかサスペンションが沈まないクルマの場合、左右へのロール量も少ないのでキャンバー角は少なくて済む。

キャンバー角をある程度つけるとコーナリング時のグリップは良くなるがデメリットもある。それが直進時のグリップ力ダウンとタイヤの片減りだ。

タイヤを傾けた状態で走るので真っすぐ走ったときはグリップが下がる。ブレーキを掛けてもABSが入りやすくなり止まりにくい。ステアリングの手応えもいまいち。そして、タイヤは内側ばかりが接地してしまうので、片減りしてしまう。

そういったネガティブな効果もあるので、コーナリング性能と直進性能の妥協点を見つけることになる。

先述のようにロールしやすいサスペンションほど大きなネガティブキャンバー角があったほうがコーナリング時のタイヤの性能は引き出しやすい。でも、そうなると普段乗りで片減りしやすい。

引き締まった足回りほどキャンバー角は少なくて済み、内減りもしにくい。しかし、そういった足回りのクルマほど街乗りでは不快という、なんとも街乗りとの両立が難しい項目でもある。

トー角

タイヤを上から見た時の角度のこと。スキーのボーゲンのように、内股になっているのを「トーイン」。逆にガニ股状態を「トーアウト」という。クルマをまっすぐ走らせるために重要な項目だ。

トーゼロ(どちらにも角度がついていない状態)にしておけば理論上はまっすぐ走るはずだが、サスペンションは沈んだり伸びたりするとトーが変わるように設計されている。そうなると静止した状態でトーをどうするのかということになる。

一般的にトーインは直進安定性がアップ、トーアウトは回頭性が上がるなどとも言われる。しかし、それも1Gでの静止した状態の話で、そこからサスペンションが沈むとどちらに変化するかは車種にもよるので、静止時の設定値だけではなんとも言えないのだ。

サスペンションが沈み込むほど大きくトーも変化しやすい。そうなるとサスペンションがソフトなクルマほど変化量が多くなる。

たとえば、コーナリング時にフロントタイヤにトーアウトが付きやすい車種で、ソフトな足回りを装着。サーキット走行を優先してコーナリング時にスムーズな挙動を目指す。
そうなるとコーナリング時にトーがゼロ付近を狙いたい。となれば、静止状態でのトーはかなりインにせざるを得ない。

わずかにトーインを付けると挙動が安定したりするが、大きくトーインにすると左右タイヤが両方とも車体中心に向かって転がろうとするので走行抵抗が大きくなる。
ハンドリングはどちらのタイヤにも強くテンションが掛かった状態になるので、ちょっと切るだけでクルマが反応する過敏な状態になりやすい。

トー角もキャンバー角と同じでソフトな足回りほど設定が難しくなるのである。

  • フロントのトー角はタイロッドの長さで調整する

    フロントのトー角はタイロッドの長さで調整する

それぞれ標準設定値が自動車メーカーで定められているが、その数値には幅がある。例えば、トー角は0からプラスマイナス○度のような設定値に幅がある。その数値内で調整できるし、サスペンションを交換して車高が変わったらその限りではない。
また、キャンバー角が増えたら、その分トーアウトにしてバランスを取るなどの調整が必要になるのだ。

なお、車検に抵触するのはサイドスリップの数値で、これはトー角と直進性の点検で、1m走らせた時にクルマが左右にずれる範囲が一定範囲に収まる必要がある。

アライメント調整は現車合わせで

  • アライメント調整を行うメカニック

そういった細かい調整をするのがアライメント調整。ノーマルサスペンションのクルマでもある程度幅があるので、その中でも調整できるし、ノーマルといえども直進性重視や回頭性アップのようなトーにすることで乗りやすさは格段にアップできる。

車高調を入れたりして車高が変わったらそもそものアライメントの数値から見直す必要がある。アライメントはクルマごとに異なり、車高によって変化していく。

車高を下げるとその状態からさらに下がっていく時にどう変化するかは車種ごとに違う。それを見越して1Gの静止状態でのアライメント設定を決める必要があるのだ。
わずか数ミリ車高を変えただけならいいが、大きく車高を変えた、車高調を入れたというときには再調整したい。

そのため、異なる車種でアライメントの数値を比較して意味がない。友人のクルマがトーアウトでも自分のクルマがトーインでも、車種が変われば話は別。同じ車種でも車高が変わればまた別の話となるため、現車や好みに合わせて調整していくこととなる。

徐々に数値がズレていくので、タイヤを綺麗に使って、まっすぐ走ることにこだわるには、車検ごとを目安にアライメント調整をしてもいいかもしれない。スポーツ走行を楽しむなら年に1回の調整がオススメだ。

(文:加茂新)