人々のニーズを巧みに捉え、世界で最も売れるクルマへと成長【60年目のカローラ/3代目・4代目】
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カローラ30セダン 1400デラックス
1966年11月に初代が発売されて以来、多くの人に愛され続けるトヨタ カローラ。これまでに12世代が世に送り出され、派生モデルも数多く登場しています。そしてカローラは日本の、そして世界のベーシックモデルというコンセプトはぶらさずに、時代が求めるニーズを巧みに取り入れながら進化してきました。2025年11月に誕生から60年目を迎えるカローラの歴史を6回にわたって振り返っていきましょう。
厳しい排ガス規制を克服した3代目(1974年~1979年)
一般財団法人 自動車検査登録情報協会の資料 によると、初代カローラが発売された1966年の自動車保有台数(乗用車)は228万9665台。そして3年後の1969年には551万4190台と1966年の倍以上の数字になり、1972年には乗用車の保有台数が1000万台を突破しました。
この時代はトヨタ 2000GT、日産 フェアレディZ、マツダ コスモスポーツといった各自動車メーカーを象徴するスポーツモデルが発売されて、日本の自動車産業の技術力を国内だけでなく世界にも知らしめました。
そして1964年の東京オリンピックや1970年の日本万国博覧会(大阪万博)開催に沸き立ち、高度経済成長により人々の暮らしも豊かになり、「三種の神器」と呼ばれた白黒テレビ・洗濯機・冷蔵庫に次いで、「新・三種の神器」「3C」と呼ばれたカラーテレビ・クーラー・自動車(Car)が人々の憧れになりました。この時代に乗用車の保有台数が大きく伸びているのは、まさに日本が豊かになった証と言えるでしょう。
自動車メーカー各社は「自動車が欲しい」という庶民の声に応えるために、多くの大衆車を開発。トヨタのカローラやコロナ、日産はサニーやチェリー、ブルーバード、ホンダシビック、マツダ ファミリアなどが庶民の足として活躍するとともに、スポーツカーやハイオーナーカーも人々の注目を集めました。
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カローラ セダン GSL 30 1600
一方で人々の暮らしが豊かになるとともに問題化したのが、深刻な大気汚染でした。そんな中1974年に登場した3代目カローラは、「50年排出ガス規制対策への準備と、大衆車としての経済性を維持しながら上級車なみの安全性、快適性を確保し、いわゆる快適経済車を完成することをその設計思想とした」と当時のプレスリリースでも謳われている通り、排ガス規制への対応も余儀なくされました。
発売時点での排ガス規制に対応したうえで、昭和50年排ガス規制に対応するための準備措置として、「対策システムが完成し次第装着できるよう、エンジンルーム内およびフロアにスペースを拡大確保するとともに、冷却性能を向上させた」と書かれています。カタログカラーもグリーン系が使われており、環境を意識していることが伝わってきます。
エンジンは2代目のものを踏襲しつつ、排ガス規制に対応する改良を実施。1.6Lエンジンはセリカ、カリーナ、コロナに搭載している2T型エンジンを採用しました。トヨタは昭和50年排ガス規制に対応するために「TTC-V(複合渦流方式)」と「TTC-C(触媒方式)」を開発。カローラはTTC-Cを採用し、1975年11月の改良で昭和50年排ガス規制に対応したエンジンが搭載されました。
安全性と快適性も大きく向上
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カローラ セダン GSL 30 1600の運転席
もちろん改良ポイントは排ガス対策だけではありません。2代目よりホイールベースを35mm、前後トレッドを40mm拡大してボディを大型化。これは排ガス規制とともに世界各国の安全基準に対応するための措置になります。万が一衝突事故が発生した際に乗員を守るボディ構造や、歩行者保護を目的にプロテクターを採用したりエッジを少なくした前後バンパーが装着されました。フロントシートには全グレードで3点式シートベルトが標準装備されました。
ボディが大きくなったことで、優雅さが増しているのも3代目の特徴。ガラス面も広くなって開放的な雰囲気に溢れたデザインになりました。もちろん大型化したことで居住性も向上しています。
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3代目カローラ
ボディタイプは2ドアと4ドアのセダン、そしてクーペに変わりハードトップが新たに設定され、2ドアと4ドアのバンも用意されました。1976年には2ドアワゴン風のリフトバックも追加されるなど、ボディタイプのバリエーションを豊富に揃えたことは、用途や好みが多様化していった時代背景の現れではないでしょうか。
トランスミッションは4速MT、5速MT、トヨグライド(2速MT)に加えて、3速ATが設定されました。カーステレオがオプション設定されたり、内外気の切り替えができるヒーターが採用されたりするなど、多くの人が求める快適性が高められているのも特徴です。
3代目カローラの国内販売目標は乗用車で月2万3000台。この数字からもカローラがいかに多くの人から求められていたかがわかります。1966年のカローラ誕生から10周年の1976年には累計500万台を突破、そしてカローラは3代目で車名別生産台数の世界一のモデルになりました。
80年代を見据え、直線的なスタイルになった4代目(1979年~1987年)
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4代目カローラ 1500SE
日本の技術力、そして経営手法が高く評価され、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」(エズラ・F・ヴォーゲル)が世界でベストセラーになった1979年。カローラは4代目へとフルモデルチェンジしました。
「No.1カローラ」「時代の結論」「生活の拡大」「愛情の完熟」といった上向きのキャッチコピーが並ぶカタログ。その中には「1980年代」という言葉が多く使われています。次の10年、新しい時代をカローラが牽引する。そんな思いが伝わってくるフレーズです。
4代目カローラは、それまでのふくよかさを感じさせるスタイルから、直線的でシャープなデザインに変貌しました。「フロントを低く、リヤを高く。空力特性を追求したヒップ・アップ型スーパーシェイプによる理想の走り」とカタログで謳われ、セダンではありながらも空力性能に力を入れたことが伺えます。
フロントフェイスには、当時、高級やスポーティといったイメージがあった丸目4灯のヘッドライトが採用されました。ホイールベースは3代目より30mm長くして、居住スペースと荷室スペースが広げられています。
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4代目カローラ 1500SEの運転席
ボディタイプのバリエーションはカローラシリーズの中で1番多いモデルです。
●セダン(2ドア/4ドア):居住空間の確保に最重点を置いた3ボックス・ノッチバックスタイル。
●ハードトップ:軽快さを強調しながら、同時に居住性を確保。
●クーペ:スポーティさを追求した直線的なファストバックスタイル。後席には分割可倒式シートを採用。
●リフトアップ:後席の居住性と荷室サイズを拡大して、多用途性を追求。後席には分割可倒式シートを採用。
●バン(2ドア/4ドア):他のボディタイプより少し遅れて登場。1.3Lと1.6Lエンジンを搭載。
エンジンは1.3L、1.5の他に、カローラクーペのスポーツグレードのレビンや、兄弟車のスプリンターのクーペに設定されたトレノには、最高出力115PSを発揮する1.6L直4 DOHCエンジンの2T-GEUを搭載。4ドアセダン、ハードトップ、リフトバックで同エンジンを搭載したモデルにはGTの名称が与えられています。特に4ドアセダンの1600GTはラリーで活躍するなど“羊の皮を被った狼”的なモデルとして人気がありました。また4ドアセダンには1.8Lと1.8Lディーゼルも追加されました。
この4代目期間中の1982年には累計1,000万台を達成しています。
4代目カローラのライバル ファミリアXG
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5代目ファミリアXG
1980年代に入ると、FF化されたマツダの5代目ファミリアが大ヒット。1.5L直列4気筒エンジン搭載の3ドアハッチバック「XG」の中でも「サンライズレッド」と呼ばれる赤いファミリアは若者を中心に支持を集め、独自のカルチャーを築き上げました。
発売からわずか1年半で生産50万台、2年3カ月で生産100万台を達成。カローラを販売台数でしのぐ月もあるほどの人気ぶりでした。
トヨタは1978年からFFのコンパクトハッチバックとしてターセル/コルサを販売していましたが、1982年のフルモデルチェンジでターセル/コルサに加えてカローラIIを投入。ターセルとコルサにはセダンの設定もありましたが、カローラIIは3ドアと5ドアのハッチバックのみのラインナップにするとともに、スポーティなデザインでファミリアに対抗しました。
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4代目カローラ
時代の移り変わりとともにスタイルを変え、派生車を含めてさまざまなバリエーションを投入して多様なニーズに応えていったカローラ。この次の世代ではさらなる変化を遂げていきます。
(文:高橋満<BRIDGE MAN> 写真:トヨタ自動車、マツダ)
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