世界で愛されるがゆえに、日本市場に合わせて独自に進化【60年目のカローラ/9代目、10代目、11代目】

  • 9代目のカロ―ラに設定されたカローラフィールダー

    9代目のカロ―ラに設定されたカローラフィールダー

1966年11月に初代が発売されて以来、多くの人に愛され続けるトヨタ カローラ。これまでに12世代が世に送り出され、派生モデルも数多く登場しています。

カローラは日本の、そして世界のベーシックモデルというコンセプトはぶらさずに、時代が求めるニーズを巧みに取り入れながら進化してきました。2025年11月に誕生から60年目を迎えるカローラの歴史を6回にわかって振り返っていきましょう。

21世紀のグローバルスタンダードを掲げた9代目(2000年~2017年)

  • トヨタ・カロ―ラ(9代目)

    トヨタ・カロ―ラ(9代目)

今振り返ると、1990年代〜00年代前半は人々のクルマに対する嗜好が大きく変わった10年だったと感じます。80年代に人気を博したハイソカーやデートカーのような華やかなイメージのあるクルマは影を潜め、排ガス規制などの影響もあり多くのスポーツモデルが姿を消しました。生産終了になった理由の一つとして、排ガス規制をクリアできるモデルを開発しても投資を回収できるだけの販売台数が見込めなかったことが挙げられます。

この時代に逆風を受けたボディタイプがセダンでした。4枚ドアの3ボックススタイルであるセダンの中でも走りの性能を高めたスポーツセダンやプレミアムモデルは支持されたものの、ファミリータイプのセダンは逆風に立たされます。

ファミリーセダンに変わり台頭したのが大勢で移動できて荷物がたくさん積めるミニバンや、小さくても広い室内空間が与えられた軽トールワゴンでした。さらに90年代後半になると乗用車感覚で乗れる都市型のクロスオーバーSUVや、パッケージングの工夫により大人4人がゆったり乗れるスペースが与えられたコンパクトカーも登場しました。

独立したトランクルームを持つセダンはたくさんの荷物を積んで遊びに行ったりするのは不向き。子育て世代がベビーカーやかさばる子どもの荷物を持って出かけるのも大変です。車種によってはリヤシートを倒して荷室を広げられるトランクスルー機構を備えたものもありましたが、荷室の使いやすさは他のモデルに比べると落ちてしまうのは否めません。

セダンの販売台数が徐々に減少していった背景にはさまざまな理由があると思いますが、ファミリーセダンに変わる利便性に優れたファミリーカーが台頭したことも、一つの大きな要因ではないかと思います。

その意味で、2000年8月に登場した9代目カローラは、コンパクトセダンとしての岐路に立っていたモデルだったのかもしれません。

「NCV(New Century Value)」というコンセプトを掲げ、本質的な価値である機能性の進化や社会要請への対応はもとより、快適性、スタイルの美しさ、走る楽しさといった、豊かな新世紀が求める感性に応える性能・品質を、誰もが享受できることを目指して開発。プラットフォームやエンジンなど、クルマの主要コンポーネントの多くを刷新し、走りや居住性、品質などの面において21世紀のグローバルスタンダードを提示したとされています。

  • トヨタ・カロ―ラ(9代目)の車内

中でも注目なのは居住性。カローラはこの世代でも全幅を1,700mm以下に抑えた5ナンバーサイズで設計されていますが、ロングホイールベースのパッケージにより室内空間はミディアムクラスに匹敵するゆとりが与えられました。トランクにはゴルフバッグを4セット収納できたのも驚きです。

この広さは、セダンはもちろん、ワゴンモデルであるカローラフィールダーでも生きていました。たくさんの荷物を積んでロングドライブする機会が多いステーションワゴンは、室内が広いほうがリラックスした姿勢でゆったり移動することができます。90年代後半になると日産 ステージアや三菱 レグナム、トヨタでもマークIIクオリスやクラウンエステートなど、室内空間の広さを武器にしたワゴンが多く発売されます。

  • トヨタ・カロ―ラ(9代目)に設定されたカローラフィールダーのリヤ

5ナンバーサイズのカローラフィールダーはこれらに比べると室内空間はコンパクトなものの、十分なゆとりがあるのでさほど窮屈感を感じずにロングドライブを楽しめるモデルに仕上げられていました。筆者の友人がこの世代のフィールダーに乗っていて冬は一緒にスノボに行ったりしましたが、荷物が積めなくて困ったことはないし、移動も快適で驚いたのをよく覚えています。

この世代のカローラは、セダンのカローラ、ワゴンのカローラフィールダー、そしてハッチバックのカローラランクスが設定されました。ヨーロピアンスタイルを持つ5ハッチバックのランクスもセダン同様に広い室内空間を売りにしたモデルでした。

そして1997年からコンパクトミニバンのカローラスパシオが販売されていて、スパシオは2001年に9代目カローラと同じMCプラットフォームを使った2代目にモデルチェンジしました。

そしてこの世代では、先代まで設定されていたセダンのGTグレードやスポーツモデルのカローラレビンが廃止。兄弟車だったスプリンターも先代をもってモデル終了となっています。

日本独自の5ナンバーサイズとして登場した10代目(2006年 - 2020年)

  • トヨタ・カロ―ラ(10代目)の国内仕様カローラアクシオ

    トヨタ・カロ―ラ(10代目)の国内仕様カローラアクシオ

1989年(平成元年)4月、クルマを購入する際にかかる税制が大きく変更されました。消費税の導入により、物品税が廃止されたのです。

5ナンバーの小型乗用車は総排気量が2000cc以下かつ長さ4.70メートル以下、幅1.70メートル以下、高さ2.00メートル以下と決められています。これをひとつでも超えると3ナンバーの普通乗用車になります。

1989年3月まで3ナンバー乗用車は23%、5ナンバーの小型乗用車は18.5%、軽乗用車は15.5%の物品税が課税されていました。そのため5ナンバーサイズに収まる小型乗用車の需要が高かったのですが、物品税の廃止によりボディサイズによる税率の差がなくなったため、5ナンバーサイズだったクルマがモデルチェンジを機に3ナンバーサイズに拡大されるケースが増えました。

一方でユーザーの中には、取り回しの良さから5ナンバーサイズのクルマを支持する人も多くいました。

  • アメリカで発売された10代目カローラ

    アメリカで発売された10代目カローラ

ボディサイズを決めるためには、国内だけでなく海外の声にも耳を傾ける必要があります。元々5ナンバーサイズというのは日本独自の基準であり、海外の人にとっては関係ありません。そのため海外では「ボディサイズを拡大してゆったり乗れるモデルにしてほしい」という声もあったのでしょう。10代目カローラは国内で販売されるモデルと海外で販売されるモデルを別モデルにすることで、多様なニーズに応える戦略が取られました。

日本では2006年にカローラアクシオという名称で登場。海外で販売されるカローラとはプラットフォームが異なります。海外版のカローラは全幅が1760mmに拡大されたのに対し、カローラアクシオの全幅は1695mmで5ナンバーサイズを堅持。日本の道での取り回しの良さが損なわれることはありませんでした。

  • トヨタ・カロ―ラ(10代目)の国内仕様カローラアクシオのリヤ
  • トヨタ・カロ―ラ(10代目)の国内仕様カローラアクシオの車内

この世代ではカローラアクシオにバックモニターを標準装備して駐車時のドライバーへの負担を軽減。ステーションワゴンのカローラフィールダーにはラゲッジルームからワンタッチでリアシートを格納して荷室を広げられる世界初の機能が搭載されました。

アクシオ、フィールダーともにFF車はリヤシートのフロアトンネルの張り出しを抑えてフロアがフラット化されているのも特徴。これにより5ナンバーサイズの限られたスペースながら大人3人がゆとりを持って座れるレッグスペースが確保されました。

  • トヨタ・カロ―ラ(10代目)に設定されたカローラフィールダー

    トヨタ・カロ―ラ(10代目)に設定されたカローラフィールダー

フィールダーにはエアロパーツでスポーティなエクステリアに仕上げられたエアロツアラーも設定していました。

5ナンバーサイズにこだわった日本のカローラですが、アクティブな若者たちは必ずしもこのサイズにこだわる人が多いわけではありません。この世代ではハッチバックのカローラルミオンが1,760mmという3ナンバーサイズで登場しました。

ダウンサイジングしながら快適な室内空間も確保した11代目(2012年~2025年)

  • トヨタ・カロ―ラ(10代目)の国内仕様カローラアクシオ

    トヨタ・カロ―ラ(11代目)の国内仕様カローラアクシオ

2012年に登場した11代目カローラは、先代に引き続きセダンがカローラアクシオ、ワゴンがカローラフィールダーという名称が使われました。

この世代はカローラの原点に戻り、大人4人が快適に移動できるミニマムサイズのクルマとして開発されたのが特徴。プラットフォームは先代より一回り小さなものになり、ボディサイズも全長が50mm(フィールダーは60mm)短縮されています。

最小回転半径は先代の5.1mから0.2m短くなり4.9mに。街中での取り回しの良さが高められました。

  • トヨタ・カロ―ラ(11代目)に設定されたカローラフィールダー

    トヨタ・カロ―ラ(11代目)に設定されたカローラフィールダー

  • カローラフィールダーの車内

    カローラフィールダーの車内

小さくなったとはいえ、それにより室内空間を犠牲にしないのがカローラです。リヤの膝前スペースを先代より40mm拡大してゆったり座れるようにし、フィールダーは荷室長を90mm拡大して積載性を高めています。

搭載エンジンは実用性重視のアクシオが1.3Lと1.5L、レジャー需要も見込んだフィールダーは1.5Lと1.8Lを搭載。どちらもCVTに加え5速MT搭載グレードも設定されました。

  • アメリカで発売された11代目カローラ

    アメリカで発売された11代目カローラ

日本市場でのニーズに合わせ、独自の進化を進める方向に舵を切った9〜11代目カローラ。セダン、中でもコンパクトセダンの市場が縮小して他社がこのジャンルに属するモデルを生産終了する中でも一定の支持を得ました。

そんなカローラアクシオとカローラフィールダーは、2019年に現行型の12代目カローラが登場してからも引き続き併売されましたが、2025年10月末をもって生産終了がアナウンスされています。
特にカローラアクシオは、2020年にはホンダのグレイス(教習者は2021年)、そして2021年にプレミオ、アリオンが生産終了となったことで、カローラが追求してきた“5ナンバーセダン”の歴史に幕が下ろされることになります。
次回はこの連載の最終回。さまざまなボディタイプでますます多様なニーズを叶える現行型のカローラシリーズをお届けします。

(文:高橋満<BRIDGE MAN> 写真:トヨタ自動車)

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