「幻の多角形コーナリング」「なんぴとたりとも俺の前を走らせねぇ!」など、決め台詞続出! 今、読み返したいクルマ漫画<年代別>

©六田 登 「F(エフ)」1巻にて最初に登場した決め台詞は、微妙に後半が違っていたりします。
©六田 登 「F(エフ)」1巻にて最初に登場した決め台詞は、微妙に後半が違っていたりします。

クルマの魅力を端的に伝える優れたツール。それが漫画です。子どものころにクルマを題材にした漫画に夢中になり、そこからクルマ好きになったという人も多いことでしょう。今回は、そんなクルマをテーマにした漫画作品を年代ごとに一部紹介します。

レースを題材にした本格的な作品が登場した1970年代

1970年代に「スーパーカーブーム」という社会現象を生み出した超ヒット作が『サーキットの狼』(全27巻・池沢さとし=作)です。1975年(昭和50年)から少年週刊ジャンプにて連載をスタート。実際に発売されている本物のクルマが作品中に登場して活躍するという、クルマ系漫画のスタイルを確立させた名作です。

『サーキットの狼』(池沢さとし=作)。主人公である風吹裕矢が街の走り屋から、プロのレーシングドライバーになって活躍するまで。 ゴマブックス株式会社より電子書籍が発売中。©池沢早人師/animedia.com
『サーキットの狼』(池沢さとし=作)。主人公である風吹裕矢が街の走り屋から、プロのレーシングドライバーになって活躍するまで。 ゴマブックス株式会社より電子書籍が発売中。©池沢早人師/animedia.com

レースの最高峰F1が日本で初開催されたのが1976年。その翌年となる1977年より週刊少年サンデーにてF1を題材にした『赤いペガサス』(全14巻・村上もとか=作)の連載が始まります。

『赤いペガサス』(村上もとか=作) “赤いペガサス”との異名がある天才レーサーの主人公・赤馬研が日本チームの一員としてF1を戦う物語。小学館より電子書籍が発売中。©︎村上もとか/小学館 
『赤いペガサス』(村上もとか=作) “赤いペガサス”との異名がある天才レーサーの主人公・赤馬研が日本チームの一員としてF1を戦う物語。小学館より電子書籍が発売中。©︎村上もとか/小学館 

カスタムやエンスーなど深みを増す1980年代

1980年代に入ると『CAR BOY』や『OPTION』といったチューニング雑誌が相次いで登場し、チューニングカーが注目されるようになります。そんな1982年に週刊少年ジャンプで連載が始まったのがチューニングをテーマにした作品『よろしくメカドック』(全12巻・次原隆二=作)でした。

『よろしくメカドック』(次原隆二=作) メカニックとしてもドライバーとしても凄腕の主人公・風見潤によるチューニングショップ「メカドック」での活躍が描かれます。コアミックスより電子書籍が発売中。©次原隆二/コアミックス 1982 
『よろしくメカドック』(次原隆二=作) メカニックとしてもドライバーとしても凄腕の主人公・風見潤によるチューニングショップ「メカドック」での活躍が描かれます。コアミックスより電子書籍が発売中。©次原隆二/コアミックス 1982 

1980年代後半の自動車関連のトピックは、日本におけるF1ブームの到来です。そのブームを先取りする1986年にビッグコミックスピリッツで連載をスタートしたのが『F(エフ)』(全28巻・六田登=作)でした。

『F(エフ)』(六田登=作) 「なんぴと(何人)たりとも、オレの前を走らせねぇ」を口癖にする主人公・赤木軍馬の物語。迫真のレース描写もさることながら、夢に追いつけ追い越せと挑む人間ドラマも大きな魅力。 ゴマブックス株式会社より電子書籍発売中。©六田 登
『F(エフ)』(六田登=作) 「なんぴと(何人)たりとも、オレの前を走らせねぇ」を口癖にする主人公・赤木軍馬の物語。迫真のレース描写もさることながら、夢に追いつけ追い越せと挑む人間ドラマも大きな魅力。 ゴマブックス株式会社より電子書籍発売中。©六田 登

1980年代後半、「カー・エンスージアスト(car enthusiast)」を短縮した「エンスー」という言葉が生まれました。よりディープで、通なクルマ好きを意味する言葉です。そんな「エンスー」気分を満喫できるのが、1986年よりヤングジャンプなどで連載された『GTロマン』(全11巻・西風=作)です。

『GTロマン』(西風=作) 現在はリイド社より電子書籍版が発売中。 ©西風/リイド社 
『GTロマン』(西風=作) 現在はリイド社より電子書籍版が発売中。 ©西風/リイド社 
強面のマスターが経営するカフェバー「ロマン」に集う面々とクルマの物語が1話完結のスタイルで描かれています。©西風/リイド社
強面のマスターが経営するカフェバー「ロマン」に集う面々とクルマの物語が1話完結のスタイルで描かれています。©西風/リイド社

ストリートの走り屋漫画が人気を集める1990年代

1990年には、80年代から90年代にかけて充実した東京首都圏の高速道路網を舞台にした作品が誕生しています。それが『湾岸ミッドナイト』(全42巻・楠みちはる=作)です。

『湾岸ミッドナイト』(楠みちはる=作) 主人公・朝倉アキオが“悪魔のZ”と呼ばれる愛車で公道バトルするという物語。派手なカーアクションだけでなく、クルマに対する作者の思いなど内証的な部分も魅力のひとつ。講談社よりコミックと電子書籍が発売中。©︎楠みちはる/講談社
『湾岸ミッドナイト』(楠みちはる=作) 主人公・朝倉アキオが“悪魔のZ”と呼ばれる愛車で公道バトルするという物語。派手なカーアクションだけでなく、クルマに対する作者の思いなど内証的な部分も魅力のひとつ。講談社よりコミックと電子書籍が発売中。©︎楠みちはる/講談社

「ドリフト」という言葉を世界に定着させ、トヨタ「86」の名前の由来となったのが、1995年に週刊ヤングマガジンで連載が始まった『イニシャルD』(全48巻・しげの秀一=作)。年代を超えるメガヒット作です。

『イニシャルD』(しげの秀一=作) 深夜の峠道を舞台に、主人・藤原拓海はスプリンタートレノ(AE86型)・通称「ハチロク」を駆って、公道最速伝説を目指してバトルを繰り広げます。小学館よりコミックと電子書籍が発売中。©︎しげの秀一/講談社
『イニシャルD』(しげの秀一=作) 深夜の峠道を舞台に、主人・藤原拓海はスプリンタートレノ(AE86型)・通称「ハチロク」を駆って、公道最速伝説を目指してバトルを繰り広げます。小学館よりコミックと電子書籍が発売中。©︎しげの秀一/講談社

峠を舞台にしたバトルモノでは、1997年より週刊ヤングサンデーで連載が始まった『オーバーレブ!』(全31巻・山口かつみ=作)という作品も人気となりました。

『オーバーレブ!』(山口かつみ=作) 主人公・志濃涼子が格安で手に入れたトヨタMR2を愛車に、ドライビングテクニックを磨き、バトルを繰り広げます。小学館から電子書籍が発売中。©︎山口かつみ/小学館
『オーバーレブ!』(山口かつみ=作) 主人公・志濃涼子が格安で手に入れたトヨタMR2を愛車に、ドライビングテクニックを磨き、バトルを繰り広げます。小学館から電子書籍が発売中。©︎山口かつみ/小学館
主人公・涼子だけでなく、森田佐和子(サワコ)や片山愛香(アイカ)、橘沙璃(サリ)などの美少女が数多く登場するのも特徴。©︎山口かつみ/小学館
主人公・涼子だけでなく、森田佐和子(サワコ)や片山愛香(アイカ)、橘沙璃(サリ)などの美少女が数多く登場するのも特徴。©︎山口かつみ/小学館

とことんリアルになってゆく2000年代の作品

モータースポーツの基本となるのがレーシングカート。その戦いをリアルに描いた作品が、2003年に月刊少年マガジンで連載が始まった『カペタ』(全32巻・曽田正人=作)です。

『カペタ』(曽田正人=作) 主人公・平勝平太(通称・カペタ)は、小学校4年からカートに挑み、フォーミュラーへと戦い続けます。これは本当のレーシングドライバーと同じリアルなものでした。現在は講談社よりコミックと電子書籍が発売中。©︎曽田正人/講談社
『カペタ』(曽田正人=作) 主人公・平勝平太(通称・カペタ)は、小学校4年からカートに挑み、フォーミュラーへと戦い続けます。これは本当のレーシングドライバーと同じリアルなものでした。現在は講談社よりコミックと電子書籍が発売中。©︎曽田正人/講談社

現代のリアルなカーライフを描いたのが2004年に週刊プレイボーイで連載が開始された『彼女のカレラ』(全24巻・麻宮騎亜=作)です。
※画像は『彼女のカレラEV』

『彼女のカレラEV』(麻宮騎亜=作) 現在、リイド社から電子書籍版『彼女のカレラEV(エレクトロニック・バージョン)』が発売中。 続編『彼女のカレラGT3』がコミックサイト・リイドカフェで連載中。©麻宮騎亜/リイド社
『彼女のカレラEV』(麻宮騎亜=作) 現在、リイド社から電子書籍版『彼女のカレラEV(エレクトロニック・バージョン)』が発売中。 続編『彼女のカレラGT3』がコミックサイト・リイドカフェで連載中。©麻宮騎亜/リイド社
突如、ポルシェ911カレラRSのオーナーになった主人公・轟麗菜の日常がリアルに描かれます。麗菜を取り巻く人間模様は、美人漫画家やモデルなど美女ばかり。クルマもポルシェだけでなく、フェラーリやランボルギーニなど、現代のスーパーカーが数多く登場。©麻宮騎亜/リイド社
突如、ポルシェ911カレラRSのオーナーになった主人公・轟麗菜の日常がリアルに描かれます。麗菜を取り巻く人間模様は、美人漫画家やモデルなど美女ばかり。クルマもポルシェだけでなく、フェラーリやランボルギーニなど、現代のスーパーカーが数多く登場。©麻宮騎亜/リイド社

1970年代の『サーキットの狼』から紹介してきたクルマ漫画ですが、その時代の空気を反映させ、いくつもの人気作品が登場してきました。過去の名作を読み返せば、当時の空気感を再び味わうことができるでしょう。ぜひとも、ゆっくりと堪能してみるのはいかがでしょうか。

(取材・文:鈴木ケンイチ 画像提供(版元):ゴマブックス、小学館、コアミックス、リイド社、講談社 編集:奥村みよ+ノオト)

[ガズー編集部]

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