明るさが変わる!日焼けを防ぐ! 最新「自動車ガラス」事情

トヨタ「新型ハリアー」のルーフに搭載され話題となっている「調光ガラス」をはじめ、自動車のガラスは日々進化し、機能が多様化しています。今回はAGCオートモーティブさんにご協力いただき、実際の製品からクルマのガラスにまつわる最新事情を紹介します!

瞬時に透過光を調節 『パノラマ調光ルーフ WONDERLITE® Dx』

こちらはガラスそのものが調光モード⇔透過モードの切り替えを行い、差し込む光のやわらかさが調節できるというもの。調光ガラスは2枚のガラスの間に特殊なフィルムを挟み込む「合わせガラス」の構造で、そのフィルム中には目に見えないほど小さな特殊材料が詰まっています。その特殊材料の分散⇔配向を電圧によりコントロールすることで、調光モード⇔透過モードが瞬時に切り替わる仕組み。さらに調光モード、透過モードのどちらの場合も紫外線を約99%カットしてくれます。

透過光を制御する切り替えの速さは自動車用の外装ガラスとして世界最速。かつ、2020年6月に発売された「新型ハリアー」への搭載が量産車としては世界初という、まさに最先端の技術が詰まったガラスです。

見えていない情報も即座にキャッチ 『ガラスアンテナ』

  • フロントガラスに一体化されたガラスアンテナ

    フロントガラスに一体化されたガラスアンテナ

デジタルテレビやラジオのアンテナというと、棒状あるいはシャークフィンタイプのものがボディーに取り付けられた車種をよく目にしますよね。最近では、そのアンテナをガラスと一体化させた「ガラスアンテナ」を搭載した車種が登場し、レクサス「LC」、トヨタ「センチュリー」などが代表的です。

また、「新型ハリアー」には「ITSガラスアンテナ」を世界初搭載。クルマに搭載されたカメラやセンサーだけでは捉えきれない「隠れた危険」はあらゆる場所に存在しています。その危険を少しでも回避するために、このITSガラスアンテナを介してクルマ同士(あるいは道路とクルマ)が接近中の車両や歩行者、信号機の情報などを直接通信することによって、安全運転のサポート役を担うというもの。

ガラスアンテナがさまざまな情報をキャッチし、リアルタイムでドライバーに知らせてくれるのは心強いですよね。さらにボディーに立体型のアンテナを取り付けるよりも無突起でスタイリッシュな外観に仕上がり、クルマのデザイン性向上にも一役買っているそう。

日焼けしたくない人の味方! 『IRカットUVベールPremium®シリーズ』

  • 上:ガラスなしでは紫外線を受けて赤く変化するチェッカー 下:ガラスが紫外線をカットし、チェッカーは白いまま

    上:ガラスなしでは紫外線を受けて赤く変化するチェッカー 下:ガラスが紫外線をカットし、チェッカーは白いまま

ドアガラスやリアガラスは単板の強化ガラスが使われていることが多く、2枚のガラスの間にフィルムを挟んだ合わせガラスに比べると紫外線を通しやすい構造になっています。そこで従来あった90%UVカット強化ガラスに「高性能UV+IR吸収膜」をコーティングすることで、紫外線99%と赤外線をカットするガラスが登場しました。

ドラッグストアなどで皮膚に塗る日焼け止めを手に取り、その効果がどれくらいあるのかパッケージの表示をチェックしたことがある人も多いと思います。この「IRカットUVベールPremium®シリーズ」はなんと「SPF50+/PA++++相当」のUVカット効果が! 日焼けを気にせずドライブを楽しめるのはうれしいポイントですよね。

こちらは2016年6月からトヨタ「エスティマ」のドアガラスとリアガラスに採用され、車内360°のUVカットを実現。「ヤリス」や「アクア」といった車種のドアガラスなどにも、幅広く採用されています。

視界を邪魔せずクリアな表示 『ヘッドアップディスプレイ用ガラス』

ヘッドアップディスプレイに各種の情報がハッキリと表示されるのを見て、その構造を不思議に思っている人も少なくないのではないでしょうか? フロントガラスは2枚のガラスの間にフィルムを挟んだ合わせガラスの構造になっているのですが、ヘッドアップディスプレイ用のガラスは特殊なフィルムを挟み込み、クリアな情報表示を実現。デジタル表示のクオリティを高めるためにも、ガラスの構造が大きく貢献しています。

こちらを採用している代表的な車種は、「カローラ」や「RAV4 PHV」、「ランドクルーザー」など。運転中に大きく視線をずらすことなく、車速やナビの情報をチェックできて便利です。

実用化に向けた実証実験も 『ガラス一体型5Gアンテナ』

  • 指先でつまめるほど小さな5Gアンテナがガラスに取り付けられる

    指先でつまめるほど小さな5Gアンテナがガラスに取り付けられる

第5世代移動通信システム、いわゆる28GHz帯の「5G」サービス開始が期待されるなか、5G対応の製品や通信環境の整備が進められています。NTTドコモ、AGC、エリクソン・ジャパンは、28GHz帯の電波通信が可能な「ガラス一体型アンテナ」を使った5G通信に世界で初めて成功。

「28GHz帯」という周波数は従来の通信方式に比べると直進性が強いため、車室や建物内で通信する際、電波が弱まってしまう傾向があります。ですが、このアンテナがガラスに取り付けられていれば、電波を送受信することができ、安定した5G高速通信が可能に。アンテナ自体が小さくて薄く、さらに透明性が高いのが特長で、クルマのガラスに取り付けても視界に影響を及ぼさないのも美点といえます。すでに市街地での実証実験に成功しており、こちらを実際に搭載したクルマが販売される日もそう遠くなさそうです。

一見しただけで察するのはなかなか難しいのですが、普段から目にしているクルマの「ガラス」は最先端の技術によって常にアップデートされています。未来の自動車ガラスはどう進化していくのか、その動向が楽しみです!


<取材協力>
AGC株式会社 オートモーティブカンパニー
https://www.agc-automotive.com

(取材・文:吉田奈苗 写真:AGC株式会社オートモーティブカンパニー 編集:奥村みよ+ノオト)

[ガズー編集部]

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