レトロカー好きはたまらない！　コロンとかわいい「MULTI cafe」＜キッチンカー探訪＞

2020.11.19 10:00

“映える”という言葉が市民権を得て久しいですが、こちらはまさに“映えキッチンカー”！　フィアットの「600MULTIPLA(ムルティプラ)」のコーヒー店「MULTI cafe（ムルティカフェ）」は、店主がとにかくレトロカーが好きな人でした。

ワーゲンバスに恋い焦がれた日々

店主の谷内隆さんは、二十歳過ぎにはフォルクスワーゲンのバスに乗っていたそう。「とにかく乗りたかった」と、1962年式の21窓のバス、1961年式ウエストファリア社製キャンパー、1978年式レイトバスと3台も乗り継いだ強者。ワーゲンバスの移動カフェを見つけた時、「いつか自分も」と思ったそうですが、あちこちでワーゲンバスの移動カフェを見かけるようになったことと、改造が現実的ではないと感じ、一旦は断念したそうです。

「ムルティプラを購入したときは移動カフェの夢はとっくに諦めていましたが、しばらくして『もしかしたらエスプレッソマシンが積めるのでは？』と思いチャレンジしました」(谷内さん)

営業中の「MULTI cafe（ムルティカフェ）」

そして2016年7月、かわいらしいクルマで移動カフェをオープンしました。

時にはカフェ、時には街乗りカーとなる「600ムルティプラ」

赤いシートがかわいらしいムルティプラの車内

「ワーゲンバスを3台も乗り継ぎ、『次はとにかく小さいクルマに乗りたい』と思って。スバル360かFIAT500を探していたところ、偶然ムルティプラを見つけ、小さいわりに6人乗りというのも魅力的でした」(谷内さん)

ムルティプラの座席を畳んだ状態

座席を畳むとかなりフラットな空間ができるので、この空間を活用してカフェができるかも、と思いついたのだとか。

「平日は会社員として働き、休日のイベント時だけでもこのクルマでエスプレッソ系メニューを提供するカフェを始めたら、リスク少なめで楽しめるのではないか、と思い始めました」（谷内さん）

普段はカフェの道具は全部取り外し、通勤をはじめ、街乗りのクルマとして乗っているそうです。

大切な車体を生かした造作

細やかに計算してカフェ仕様の造作は行われた

ムルティプラを購入したのは2009年。カフェ仕様の制作は2014年から始めたそうです。材料はホームセンターで買い求め、足場を平面にする板を敷いて、ダンボールで型紙を作り、板を切ったり削ったりとコツコツ水回りやマシン台を作成したそう。少しずつ作り進め、完成までは約2年。エスプレッソマシン、グラインダーは家にあったものを使用したため、改造費用は5万円弱ほど。

「後々の修正やアップデートも考えると、すべて自分で作った方が融通が効くと思ったので。節約というより、使ってみないと不具合はわからないので」（谷内さん）

上下水道の取り付けも谷内さん自身で行った

普段は通勤車として使用するため、カフェ仕様の部分が分解して取り外せることが大前提。また貴重な車体であるため、ボディへの穴あけは一切行わず、プラスドライバー1本だけで組み立て、撤収できる仕様にしたそうです。小さな車内なので冷蔵庫や発電機、上水・下水各40リットル分のタンクを積むスペースを確保するため、ミリ単位で設計されています。