知りたいことがここにある! ASOMBROSO 北海道の『キッチンカー開業の手引き』
さまざまな料理や飲み物を手軽に提供してくれるキッチンカー。近頃、特に目にすることが増えたキッチンカーですが、実際に経営するとなるとそう簡単なものではないと聞きます。そんなキッチンカーの開業を目指す人たちの手助けをしようと立ち上がったのが、自らも「ハンドカットフライズ(フライドポテト)」を提供するキッチンカーの経営者であるASOMBROSO(アソンブロッソ) 北海道の齋藤誠輔さんです。『キッチンカー開業の手引き』を発行する齋藤さんにお話を聞きました。
流行ってはいるものの……続けていけるのか? キッチンカー
――『キッチンカー開業の手引き』を発行されたのはなぜですか?
最近、いろいろなキッチンカーがどんどん開業していて、テレビなどでも特集されていますよね。キッチンカーは「実店舗を持つよりは身軽で、簡単に開業できそう」、あるいは、「運営するのが楽しそう」といったイメージばかりが先行しているように思います。しかし、現実には料理の質の低いものも多く、経営面でもかなり苦戦を強いられることも多いそうです。
実は、ハンドカットフライズを提供するASOMBROSOも緊急事態宣言以降、イベントやお祭りの中止が相次ぎ、大打撃を受けています。キッチンカーにとってイベントでの売上はかなり大きく、通常の営業だけではなかなか立ち行かないのが現状です。
そこで、イベント営業がなく空き時間ができたので、自分の実際の経験を基に、これからキッチンカーをやってみたいと思っている人、キッチンカーを始めたはいいがあまりうまくいっていないと感じている人に向けて、手助けとなるものを作っていこうと、YouTubeチャンネル(https://www.youtube.com/channel/UCcVYazRUithrKU9QZ8U_5xw)を立ち上げたり、キッチンカー経営のヒントとなる記事を書いたり(https://note.com/asombroso)し始めました。
そして、それらの内容をまとめたものが『キッチンカー開業の手引き(https://asombroso.official.ec/items/33112466)』になります。
教員からニュージーランドへ、そして、キッチンカー開業
――齋藤さんはもともと飲食業を目指していたのですか?
いいえ。大学院で教育学の修士を取り、小学校の教員をやっていました。ただ、大学院にいる頃から、「自分はあまり教員に向いてないのでは?」という思いがあり、でも、何事も経験しなければいけないと2年間は先生をやってみようと考えました。そして、2年間教員をやったあと、ニュージーランドに行きました。
――いきなりニュージーランドですか?
はい。ニュージーランドには1年半ほど滞在しました。その間、現地の日系の飲食業関連の会社で働いていました。新店舗の立上げなど経営面に関する仕事にも携わりましたが、その時点では、日本に帰国してから何をしたらよいか、まったく浮かんでいませんでした。どうしたものかと思いながら、帰国が迫る最後の3週間ほどを使って、バスやヒッチハイクでニュージーランドを縦断したんですね。その旅の途中で食べたフライドポテトが衝撃的においしくて、「これだ!」と思いました。
そこから、僕の目標は「日本中・世界中においしいフライドポテトを広める」というものになりました。飲食業の大変さは身に染みていたので、本当は飲食業だけは始めるまいと思っていたのですけど(笑)。
――そして、帰国後にキッチンカーを開業されたと
2019年の4月に開業しました。キッチンカーにしたのは、実店舗を構えるリスクや難しさがわかっていたから。キッチンカーを皮切りにして、事業を広げていこうと考えたわけです。現在は、提携店や愛知県にフランチャイズキッチンカーを展開し、冷凍ハンドカットフライズの通信販売も行っています。来年には実店舗を出す予定で準備を進めているところです。
失敗から学んだことを後に続く人たちに提供したい
――ニュージーランドでの経験以外に飲食業経営について勉強はされていたのですか?
いいえ、まったくしていませんでした。実は、2019年の8月に一度、旭川に実店舗を出したのですが、うまくいかなかったのです。東京のベンチャー企業が取りまとめをする共同経営で、マーケティングなどもしてくれる契約だったので、任せっきりにしていたのですがなかなかうまくいかない。そこで、これではいけないと自分で経営やマーケティングの勉強をし始めました。勉強すればするほど、任せていた企業のやり方ではダメだということがわかりました。
今年の春、はからずも時間ができた際に、せっかくなので、自分が学んだことがキッチンカーを始めたいと思っている人たちの役に立てれば……と思ったわけですね。僕が実践して積み上げていったやり方を伝えることで、キッチンカーで成功をする人が増えるといいなという気持ちでした。
「本書『キッチンカー開業の手引き』は、惜しみもなく僕の考えや知識が綴られた超具体的手法である。この内容の通り進めることができるならば、あなたのキッチンカー開業の失敗の99%を防ぐことができると思っている。残りの1%は不運によるものだということにしよう。大丈夫。ここまで読んでくれたあなたはきっと強運の持ち主だ、だって僕と出会うことができたのだから」(『キッチンカー開業の手引き』より抜粋)
――経営のノウハウ本は数多くありますが、リアルな経験に基づいた内容というのはこれから目指す人にとってはありがたいものですね。
一般的な内容よりも、もっと一歩突っ込んで、こんなことに困っている、こんなときはどうしたらよいかというのに応えていけたらと思って書きました。
――YouTubeや『キッチンカー開業の手引き』などに対して反応はいかがですか?
問い合わせは結構来ますね。わざわざ知床からキッチンカーを訪ねて来てくれた方もいます。今、コンサルタントとして相談も受けていて、長野県でキッチンカーをスタートされた方もいるんです。あと、『キッチンカー開業の手引き』をきっかけに、冷凍ハンドカットフライズを購入してくれる方もいるなど意外な展開もみせています。今後も、「ハンドカットフライズを日本中・世界中に広げる」という目標の達成を目指すとともに、キッチンカーをやりたいと希望する方たちの手助けをしていきたいと思っています。
「キッチンカーなら気軽に始められるのでは」というのは大間違い。経営の仕方、目標の設定などをきちんと定めてこそ、成功するのだというのが齋藤さんのお話からわかりました。これからも、キッチンカーという経営形態は根付いていくことでしょう。おいしいものと出会えて、健全な経営を続けられるキッチンカーが増えていくことを願っています。
<取材協力>
ASOMBROSO(アソンブロッソ) 北海道
https://www.asombroso.jp/
https://asombroso.official.ec/
(取材・文:わたなべひろみ/写真:ASOMBROSO 北海道/編集:奥村みよ+ノオト)
[ガズー編集部]
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