ラジオ→カセット→CDそしてストリーミングへ!カーオーディオの歴史をたどる

ドライブの気分を盛り上げてくれる、車内の音楽。少し前まではCDで聴くのが当たり前でしたが、今はスマートフォンの音源をBluetooth接続で聴いたり、車載の通信機器を使ってストリーミング再生したりと、その聴き方は進化しています。では、CD以前はどんな方法で音楽を聴いていたのでしょうか?

カーラジオの時代から現代までの歩みを、オーディオ&ビジュアルに精通するライターの野村ケンジさんに聞きました。

世界初のカーラジオは1930年に誕生

――そもそもカーオーディオが、生まれたのはいつ頃でしょうか?

カーオーディオの原点は車内で聴けるラジオで、世界初のカーラジオが誕生したのは1930年でした。アメリカのガルビン・コーポレーションが製作した「モトローラ5T71型」がルーツです。なお、モトローラの名前に聞き覚えある方もいるかもしれませんが、この名前は通信端末メーカーのモトローラ社に受け継がれています。

その後、1936年にアメリカのGM(ゼネラル・モーターズ)傘下のデルコ・エレクトロニクスが、ダッシュボード内に装着するカーラジオを開発。これにより、現在のようにクルマに備え付けの製品が登場しました。

――日本国内ではいつ登場したのでしょうか?

日本で初めてのカーラジオが登場したのは、1951年です。カーナビやカーオーディオの老舗メーカー、クラリオンが「ル・パリジャン」と呼ばれるラジオを開発しました。その4年後の1955年には、カーエレクトロニクスメーカーのデンソーテンが市販用カーラジオの製造を開始し、初代トヨタ「クラウン」に納入されました。

  • 1930年に開発された日本初のカーラジオ・クラリオン「ル・パリジャン」(画像:クラリオン)

さらに、1960年代になるとカーラジオはさらなる進化を遂げました。1963年には、クラリオンが製作した日本初のカーステレオが登場したからです。

  • 1963年に製作された日本初のステレオ再生できるクラリオンのカーラジオ(画像:クラリオン)

当時、ラジオでFM放送がスタートしたのをきっかけに、カーラジオの機能も向上していきました。

カーラジオから “カーオーディオ”の時代へ

――ここまではいわば“カーラジオ”でした。その後は、どのような進化をたどったのでしょうか?

1960年代後半になると、大きな変化がありました。ラジオに加えて、カセットテープという選択が加わったからです。1968年にクラリオンが日本初のカセットカーステレオを開発したことで、ラジオから流れる情報だけではなく、それぞれが好きな音楽を自由に車内で楽しめるようになり、現代につながる“カーオーディオ”が定着し始めました。

  • 1968年にクラリオンが開発した日本初のカセットカーステレオ(画像:クラリオン)

また、1970年代から1980年代前半にかけて、カセットテープがカーオーディオの主流になる中で、もうひとつ変化していたのが、車内のスピーカー環境です。当初は、足元やダッシュボードに配置されていたスピーカーをセダンのリアトレイに置くスタイルも広まり、スピーカーのロゴでそれぞれのこだわりを表せるようになりました。

――カセットテープの次にCDが出てくるのですね?

CDの登場は、1980年代半ばです。原点になったのは、1984年にパイオニアが発売した世界初のカーCDプレイヤー・CDX-1。CDの普及によりカーオーディオで音楽を聴く手段が変化し、1990年代にかけては、CD全盛の時代がやってきました。

  • ホンダ「インスパイア」の純正CD/カセットオーディオシステム(画像:本田技研工業)

プレイヤーも外から持ち込む時代に

――ラジオ・カセット・CDと変化をたどってきましたが、その後はどういった進化を遂げたのでしょうか?

2000年代に入ると、カーオーディオの環境は再び大きく変わりました。転機となったのは、2005年5月に自動車用音響機器などを手がけるALPINEが、カーオーディオユニット「CDA-9855J」を発売したことです。この製品に世界で初めてポータブルオーディオプレイヤーのiPodをデジタル接続する機能が搭載され、備え付けの装備で音楽を聴くのではなく、プレイヤーすらも外から持ち運ぶ時代にさしかかっていきました。

  • iPodと接続するボルボの純正オーディオ(写真:ボルボ・カーズ)

そこから現在に至るまでに、Bluetoothでスマートフォンを接続する時代になっていったのは、誰もが体感しているはずです。

――最後に、今後のカーオーディオの進化についてどう見ていますか?

現在のペースだと早ければ数年後、遅くとも数十年後にはクルマが常にインターネットにつながる未来がやってきます。車載用のWi-Fiルータも流通していますが、今後はよりいっそう流れが加速して、クラウド上の音楽・映像データを車内で存分に楽しめる、そんなスタイルが主流になると思います。実際、すでにSpotifyなどの音楽配信サービスを利用できるカーナビやインフォテイメントシステムが登場しています。

  • インターネットに接続することでストリーミングが可能となっている(画像:ボルボ・カーズ)

インターネット接続で聴ける音源は無限に

歴史をたどってみると、一方的に“流れてくるもの”を楽しんでいたカーラジオの時代から、カセットテープが主流になって以降は、手段こそ変化したものの“自分のお気に入りの音楽”を聴くスタイルになり、それが普遍的なカーオーディオの形になっていることがわかりました。インターネットの常時接続が当たり前になれば、聴ける音源の数は無限になるといっても過言ではありません。10年後、20年後のカーオーディオはどんな姿になっているのでしょうね。

(取材・文:カネコシュウヘイ/編集:木谷宗義+ノオト)

[ガズー編集部]

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