「ゴミ収集車」は正式名称じゃなかった!? 意外と知らない歴史と仕組み
私たちの暮らしになくてはならない「働くクルマ」のひとつに、家庭から出たゴミを集めて運ぶ「ゴミ収集車」があります。あまりに身近なため、その構造や生まれた背景を知らない人も多いはず。そこで、ゴミ収集車の歴史や仕組みを紹介していきましょう。
基本的な仕組みは60年前にほぼ確立されていた
一般的には「ゴミ収集車」と呼ばれるこのクルマ、清掃業に従事する人たちの間では主に「パッカー車」と呼ばれています。まずは、その歴史から紐解きます。
現在のようなパッカー車が誕生した背景には、1954年(昭和29年)の「清掃法」の制定や、1963年(昭和38年)に制定された「生活環境施設整備緊急措置法」があります。
戦前や戦後直後の日本では、東京などの大都市であっても、ゴミの回収は人が手車を使って行っていました。家庭ゴミのほとんどが生ゴミだった時代は、それで十分だったのです。
しかし、焼却場や埋立処分場に運搬するため、手車からトラックに積み替える際のゴミ飛散や、人力ではカバーできないまでにゴミの量が増えたことなどの問題が表面化し、清掃行政が整備されていきました。
それは行政システムだけではなく、ゴミ回収そのものの自動車化も促進し、東京都内では1958年(昭和33年)ごろにはすでに、密閉式で自動排出装置を備えた、現在のパッカー車と同様の車両が使われていました。
正式名称はパッカー車でもゴミ収集車でもなく「塵芥(じんかい)車」?
日本では、車両に投入したゴミを自動的に荷箱へ押し込み、圧縮する装置を持った機械式のゴミ収集車のことを一般的に「パッカー車」と呼びます。しかし、パッカー車という名前は、正式な呼び名ではありません。ゴミ収集に従事する車両は、国土交通省による区分では「塵芥(じんかい)車」という名称が使われていますが、メーカーでは「塵芥車」「塵芥収集車」「ごみ収集車」など、様々な名称が使われています。
大別すると「回転式」と「プレス式」の2タイプの車両がある
パッカー車は、使用する地方自治体や清掃会社によって細かい仕様の違いなどはあるものの、主に「回転式」と「プレス式」の2種類に分けられます。モリタホールディングス広報担当はこう言います。
「このふたつの形式は、収集したゴミを収集車の中でどのように圧縮するかという点が違います。回転式は、作業員が投入口に入れたゴミを回転板が荷箱へかき込み、押し込み板で奥に詰めていく仕組みです。汚水の飛び散りや戻りを少なくできるため、家庭ゴミの収集に適しています。一方、プレス式は、投入口内にある圧縮板とスライド板を使ってゴミをギュッと圧縮したあと、荷箱へ詰める仕組みです。ゴミを圧縮するため、小さなゴミから粗大ゴミの収集まで幅広く対応できます」(モリタホールディングス広報)
パッカー車は、もちろん始めからパッカー車として生産されているのではなく、既存のトラックにモリタエコノスのような架装メーカーが荷箱や油圧装置などを架装することで、完成します。パッカー車のベースとなるのは、主に小型・中型トラックです。
「小型トラックでは、トヨタ『ダイナ』や日野『デュトロ』、いすゞ『エルフ』といった2~3トンクラスが、中型では日野『レンジャー』やいすゞ『フォワード』などの4トンクラスが使われますね」(モリタホールディングス広報)
消臭装置や回転版をモーターで動かすハイブリット駆動車両もある!?
パッカー車も進化しており、モリタエコノスではゴミの悪臭対策として花王と「ミラクルキヨラ」という塵芥車臭気抑制装置を共同開発したそう。
「これは、専用香料とナノ化噴霧技術を使って、ゴミ投入口の内側から森林浴をイメージしたハーブ系ゴミ臭低減剤により悪臭を抑制し、ゴミ収集の作業環境を改善する装置で、2021年1月から発売しています。新車装着だけでなく、既存車両への搭載も可能です」(モリタホールディングス広報)
また、回転板の油圧をエンジンではなく、モーターで制御するハイブリッド駆動システムなどもあるそう。排ガスを抑制できることから大気汚染対策になるだけでなく、地下収集所などの密閉空間での作業員の安全性や健康面にも有効とのこと。またLEDシグナルライトや音声を使って接近する人やクルマを作業員に知らせ、事故を未然に防ぐシステムも普及が進んでいます。
ゴミを収集する仕事は、社会の維持のため必要不可欠な「エッセンシャルワーク」のひとつ。私たちがキレイな街に住めるのは、パッカー車の運転や操作をしてゴミを回収している作業員さんたちのおかげです。そんな気持ちを持って街を走るパッカー車を見ると、これまでとは違った視点で見られるかもしれません。
<取材協力>
株式会社モリタエコノス
https://www.morita-econos.com/
(取材・文:斎藤雅道 写真:モリタエコノス 編集:木谷宗義+ノオト)
[ガズー編集部]
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