ETC利用の仮想パーキングエリア 路外パーキングサービスって何?

高速道路でのドライブ中には欠かせないサービスエリア(SA)やパーキングエリア(PA)。最近ではお店や施設が充実し、さまざまな形で楽しむことができる場所も多くなっています。

阪神高速道路には路線内ではなく、高速道路を下りて沿道の施設をパーキングエリアとして利用できるサービスがあるそうです。

2009年から社会実験として行われている路外パーキングサービスについて阪神高速道路株式会社 営業部利用促進課サービス推進担当課長 川端浩平さんに伺いました。

高速道路の外の施設をパーキングエリアとして利用

――路外パーキングサービスとはどのようなものなのですか?

高速道路の外の対象施設を仮想のパーキングエリアとして利用していただくサービスです。
高速道路の指定の出口から下りて、その沿道の対象施設をトイレ休憩や食事などで利用し、再び指定の入口から高速道路へ戻っていただきます。

こちらはETCを搭載しているクルマ限定のサービスとなっていて、普通車、軽自動車、バイクが対象です。
高速道路の出入り、施設の出入りの際にそこを通ったという確認がETCにより行われ、高速道路を目的地まで寄り道せずに走るのと通行料金は変わりません。

  • 一旦、高速道路を出て戻っても料金は変わらない

――利用できるのはどんな施設ですか?

現在、ご利用いただける施設は3カ所あります。

路外パーキングサービスの社会実験スタート時に初めて対象施設となったのが、尼崎テクノランドというゴルフ練習場です。

――ゴルフ練習場ですか? 意外な気がしますが

こちらは駐車台数が250台と広い駐車場を備えていて、トイレはもちろんクラブハウスのレストランも利用できます。パーキングエリアとして休憩するのに必要な設備がすべて揃っているのです。

――なるほど。駐車場の広さや設備がパーキングエリアとしての条件にかなっているということですね。

そうですね。2番目に利用できるようになったのが豊中にあるロイヤルホームセンター。大型の駐車場とともに、午前6時30分にオープンと朝早くから開いているのが利点です。

そして、昨年2020年3月から利用開始になったのが大型ショッピングセンターのamado(アマドゥ)です。こちらはスーパーやホームセンター、ラーメン屋、ファミリーレストランなどの飲食店が集まっていますので、食事や買い物をしていただくことができます。

――いろいろできることがあって時間もかかりそうですね。路外パーキングサービスの利用時間はどのくらいなのですか?

高速道路から下りて、施設を利用し再び高速道路へ戻るまでの利用時間は2時間となっています。実は、2020年度まで1時間だったのですが、ご利用のお客さまから「1時間では足りない」との声が多く、今年度から2時間としました。「ゆっくり食事ができるようになった」などご好評をいただいています。

パーキングエリア不足を補うため……周辺地域の施設の協力を仰ぐ

――なぜ路外パーキングサービスを始めることになったのですか?

弊社では「先進の道路サービスへ」という企業理念に基づいてお客さまサービスに取り組んでいるのですが、アンケートなどからお客さまのニーズに対するパーキングエリアの数や規模が足りない傾向にあるというのがわかりました。

そこで、パーキングエリアの新設や既存施設の規模拡大などを模索しました。しかし、阪神高速道路は都市高速ということで都市の真っ直中を通っているわけです。そのため、つくりたいところに土地がないとか、建物を建てられないとか、さまざまな制約がありました。

また、実際につくるとなると費用面でも莫大なものになります。そこで、沿道の施設に協力をいただいて「仮想のパーキングエリア」として活用する路外パーキングサービスという社会実験をスタートさせることになったのが2009年のことでした。

――国土交通省が進めている「賢い料金」との違いは?

国土交通省の「賢い料金」は、高速道路から一旦下りて、道の駅に立ち寄り、再び高速道路へ戻っても下りずに通行した時と料金は同じ……と、路外パーキングサービスと仕組み的には同じですが、対象がETC2.0の搭載車に限られ、制限時間も3時間と聞いています。

また、「道の駅をきっかけとした地域づくりを共に行うための地域の連携機能」」という側面も持ちながら実験を行っているそうです。

それに比べて、路外パーキングサービスはあくまでも不足しているパーキングエリアを補完するサービスです。
ですから、より多くの皆さんに利用していただけるようにということで、ETC1.0を含めたすべてのETCを搭載したお客さまが対象となっています。地域振興の促進とパーキングエリアの補完というところにも大きな違いがあるかと思います。

――路外パーキングサービスはあくまでもパーキングエリアの代替として機能しているということですね? ところで、パーキングエリアとサービスエリアの違いってなんですか?

国土交通省の定義によると、基本的にサービスエリアは人とクルマを休ませるためのところ、パーキングエリアは人を休ませるところなどと区別するのだそうです。

なので、サービスエリアにはトイレや休憩所とともに給油のためのガソリンスタンドがあります。一方、パーキングエリアにはトイレ、休憩所とともに売店を設置しているところが多いです。

ただし、設置場所や利用状況によって設備やサービスはそれぞれなので、一概にすべてがこのような形であるわけではないようです。

実は、阪神高速道路は都市高速ということもあり、パーキングエリアのみでサービスエリアはないのです。山間部などを走る都市間高速道路と違い、もしガソリンが不足したとしても下りればすぐに給油はできますから。

一度利用するとリピーター率は約半数!

――利用状況はいかがですか?

年間で2500台から、多い施設で3000台くらいですね。なので、1日に7~8台くらい。多いところだと1日10台くらいのお客さまにご利用いただいています。

利用時間が2時間になってからはやっぱり台数が増えています。例えばお子さんと食事すると思ったより時間がかかるものですよね。そういうことを考えると2時間にした効果は出ているのかなと思っています。

アンケートを分析すると、利用するために一度高速道路を下りなければならないというところがお客さまの精神的なハードルのひとつになっているのかなと。

しかし、どんな方にも緊急時というのはあると思います。お腹が痛くなったり、急に連絡を取らなければならなくなったり。そういう時のためにもこのような施設に寄ることができることを知っておいていただければなと考えています。

――高速道路を下りたくないというのは、失礼かもしれませんが、関西の方の気質というところもあるのでしょうか? ちょっとせっかちとか。

まあ、私がそうですので、気質はあるかと思いますね(笑)。「目的地に早く着きたい」と思いますから。そのために時間を買うということで高速道路を使っているお客さまが、特に都市高速には多いのかなとは考えております。

ただ、一度使っていただくと約半数のお客様がリピーターになって複数回利用されているのです。「意外と使えるやん」と理解していただけたということかと思っています。

休憩のタイミングを決めて「ここのレストランでごはん食べていこか」と時間組みをしているというお声もいただいています。

いざという時のためにこういう施設があるよということを訴求し、初めて利用するまでのハードルをどうやって取り払うかというところをまずは考えているところです。

  • 自分の予定に合わせて食事や買い物ができる商業複合施設も路外パーキングサービスならでは

いずれは多様な路外パーキングサービスの提供を

――今後、どのように路外パーキングサービスを展開していきたいとお考えですか?

路外パーキングサービスを利用するお客さまは、短時間利用と長時間利用がおよそ半々で、2パターンに分かれるというデータが出ています。

トイレやちょっと電話連絡しなければならないという方は1時間も利用時間があれば十分。ゆっくり食事をしたいという方はやはり1時間では足りない。

現在は路外パーキングサービス対象の出入口のルートの中に利用施設はひとつという形で運用しています。
また、大型駐車場や豊富な店舗が利用できるのは長時間利用する方には便利ですが、一方、短時間で利用したい方にとっては使い勝手がよくないかもしれません。

そこで、まだ検討段階ではありますが、今後、さっと用事を済ませたい方のために、例えばコンビニエンスストアを対象施設に加えてはどうか。あるいは、お腹は空いたけどクルマから降りたくはないという方向けにドライブスルーの飲食店もどうだろう……などと考えています。

対象のルート上に用途・目的に合わせて選べる施設をいくつか設けることができたらいいのではと思っています。

いずれにしてもお客さまの声をしっかり聞いて、その声にお応えできるような社会実験を行い、本番に向けて、最良のサービスができたらと考えております。

  • いずれは大型駐車場のある施設と小規模施設と用途別の設置を目指す

路外パーキングサービスの使い方や阪神高速道路沿線の情報をお知らせするために、川端さんが自ら社員YouTuber(ユーチューバー)として活躍する「阪神高速ドライブチャンネル『どらちゃん』」も始められたそうです。路外パーキングサービスの利用促進のために2022年2月まで「路外パーキングサービス感謝祭」も行っているとのことです。

万が一の時のために必要でもあり、今後もっと便利になる可能性を秘めた路外パーキングサービス。利用方法や場所をチェックしておき、ドライブの際の参考にするとよいかもしれません。

<取材協力>
阪神高速道路株式会社
阪神高速ドライブチャンネル「どらちゃん」

(取材・文:わたなべひろみ/写真:阪神高速道路株式会社/編集:奥村みよ+ノオト)

[ガズー編集部]

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