「自動防眩ルームミラー」の仕組みと将来のルームミラーの行方を聞いた
クルマの真後ろを確認するために、なくてはならないルームミラー。そして、そのルームミラーには「防眩:ぼうげん」という機能が備わっています。夜間、後ろのクルマのヘッドライトが眩しくないように、ミラーの映り方を暗くする機能です。
これまで、ミラーの下にあるレバーを操作して昼/夜を切り替える手動式が一般的でしたが、最近では光を検知して自動的に明るさを調整する自動防眩ルームミラーも増えています。
今回は、そんな自動防眩ルームミラーと、未来のルームミラーの姿をご紹介していきましょう。
世界トップシェアはアメリカのジェンテックス社
自動防眩ルームミラーの話を聞いたのは、アメリカのジェンテックス社で最高技術責任者/開発担当副社長のニール・ベーム氏です。
ジェンテックス社は、自動防眩ルームミラーに関して世界でトップシェアを誇る企業で、2021年には4000万個以上のルームミラーを出荷。自動防眩ルームミラーでは、世界で90%以上のシェアを誇っています。
クルマだけでなく、航空機の調光式の窓や、防災製品も手掛けるほか、ガラスやフィルムだけでなく、ソフトウェアも自社で開発する幅広い技術を持っていることが特徴です。レクサス各車やハリアーなどにも、ジェンテックス社の最新のルームミラーが採用されています。
電気でジェルの反射率を変化させる
まず聞いたのは、自動防眩ルームミラーの仕組みです。
「自動防眩式ルームミラーは、2枚のガラスで挟んだエレクトロクロミック・ジェルに電圧をかけることで、反射率を変化させて、明るさを調整します。具体的には、クルマの内外の明るさを検知して、6~90%の広い範囲で反射率を変えています。生産品質が高く安定していて、耐久性に優れていることが弊社製品の強みです」(ベーム氏)
ちなみに、同じエレクトロクロミックの原理で、自動防眩の機能を持つサイドミラーも出荷されています。また、航空機の窓の明るさを変化させるのも同じ原理で、壊れる可能性のあるシェードを不要にしています。
2022年1月にアメリカ・ラスベガスで開催された世界最大級のエレクトロニクス展示会である「CES2022」で、ジェンテックス社は、同機能を使ったサンルーフやサンバイザーの提案を行っていました。
デジタルミラーにドライブレコーダー機能を追加
高機能なルームミラーとして登場した自動防眩ルームミラーですが、世の中にはすでにその上の高機能ルームミラーが登場しています。それが、デジタルディスプレイを内蔵したルームミラーです。トヨタでは「デジタルインナーミラー」の名で、ハリアーなどいくつかの車種で採用しています。
「弊社でも、すでに100万個を超える、フルディスプレイミラー(ジェンテックス社製品名)を出荷しています。最新のハリアーには、録画機能となるデジタル・ビデオ・レコーダー・システムも採用されました」(ベーム氏)
日本では、近年になってドライブレコーダーが大人気商品となっています。そうしたムーブメントに対しても、クルマの前後を録画できるデジタルインナーミラーは注目の製品と言えるでしょう。またベーム氏は、次世代のルームミラーのアイデアを教えてくれました。
「将来的には、ルームミラーにカメラを内蔵することも考えています。車内でセルフィーを撮りたいという方もいますし、クルマの中からビデオ会議を行うというアイデアもあります」(ベーム氏)
ドライバーモニター付きへと進化
さらにベーム氏は、「将来のルームミラーの姿は、法規制とも関係がある」と説明します。
「今、欧州でドライバーのモニタリング装置のルールを定めているところです。もし、車内向けのモニタリングが義務付けられたとすると、そのとき、どこにカメラを設置すればよいのでしょうか。ルームミラーにつけば、自動車メーカーなどへの供給は非常に楽になるでしょう。ドライバーのモニタリングは当たり前になると思うので、我々としては、さらなるメリットを求めて、車内をもう少し広く見ることのできるシステムを考えています」(ベーム氏)
法規制によって使われるようになった装置は、数多く存在します。最近でいえば、シートベルトの装着をうながす「シートベルトリマインダー」もそのひとつ。将来的には、ドライバーモニタリングシステムも、同じように義務化されていく可能性もあるでしょう。
ルームミラーは防眩機能からディスプレイ付き、録画機能付きに進化し、さらにはドライバーモニタリングシステム付きへと進化しようとしています。もはや、「ただ後ろを映すだけ」の装置ではないのです。
<取材協力>
ジェンテックス
(取材・文:鈴木ケンイチ 写真:ジェンテックス、トヨタ自動車 編集:木谷宗義 type-e+ノオト)
[GAZOO編集部]
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