「交通量調査」っていったい何を、どうやって調査しているの!?

  • 交通量調査

クルマでドライブしている際、道路脇で時折見掛けるパイプイスに座って数をカウントしている人たちの姿。そう、「交通量調査」です。決して珍しい光景ではありませんが、実際はどんな会社が何に活用する目的で調査をしているのでしょうか。
市場調査会社として全国で交通量調査を実施している株式会社サーベイリサーチセンターの広報担当者に交通量調査の方法や目的、活用方法について伺いました。

渋滞が頻発している道路で計測を行う場合が多い

全国のさまざまな場所で実施されている交通量調査。まずは、どのような企業・団体から調査を依頼されているのかを伺いました。

「中央官庁でいえば、国土交通省がもっとも多いです。都道府県・市区町村の自治体からも発注があります。道路管理者(NEXCO・首都高・阪神高速など)も多く発注されます。民間企業では、出店検討のために小売・流通、ガソリンスタンド、外食、ディベロッパーからも多く依頼がありますね。近年はネットの広告が多くなってきた影響もあるのか、屋外広告の視認率確認のため、広告代理店からの依頼も増えています」(担当者)

大型店舗を新規開店する際は、「周辺の交通状況に変化が生じないか」といった調査をします。大規模工事のために道路をふさいだりする場合などは、警察協議のための交通量調査を行うケースもあるそうです。渋滞予測や緩和など私たちの交通インフラを守ることに調査結果が活用されています。

「渋滞が発生している道路を中心に交通量調査が実施されることが多いです。渋滞箇所を把握するために調査を行い、渋滞解消のために新規道路が開通した場合、その開通効果(整備効果)が出ているかを検証する目的で、道路開通直後・1カ月後・3カ月後・6カ月後と調査を継続的に行う場合があります。渋滞などの問題が発生していなくとも、統計データとして時系列的に交通量調査を行うケースも多いです」(担当者)

コロナ禍以前では、観光地の交通量調査も実施されていたそうです。オーバーツーリズムといわれる観光地における渋滞を把握し、どのような渋滞対策を行うかの基礎資料として使われていました。

一般的に調査が多く行われるのは、9月~11月

では、実際の現場ではどのように交通量調査が行われているのでしょうか。一般的な交通量を計測する場合は、9月から11月にかけた秋に行うのが一般的です。国土交通省が実施する、道路の統計データである全国道路・街路交通情勢調査(道路交通センサス)もこの時期に行われています。調査を行う曜日や時間帯について教えてもらいました。

  • 交通量調査

「平日は、道路の利用状況が異なることが多い月曜日と金曜日を除いた火・水・木曜日に通常は実施します。休日は日曜日に実施します。7時から19時の12時間調査が一般的で、幹線道路では7時から翌7時の24時間調査もよく行われます」(担当者)

具体的な調査方法も気になるところ。よく見掛けるのは手元の機械でカチカチとカウントしているようですが、実際はどのように計測しているのでしょう。

「基本的には、カウンターを用いた人手による観測がメインです。道でたまにご覧になっているかもしれませんが、パイプイスに調査員が座り、車種別にカウントしています。車種は、乗用車・バス・普通貨物車・小型貨物車の4分類が基本で、これに二輪車も加えた5分類の調査もあります。よって、カウンターは5分類になっており、これを方向別に準備して計測しています」(担当者)

  • 交通量調査

    自動車・歩行者それぞれ2方向ずつを計測する「断面交通量調査」

  • 交通量調査

    自動車12方向、歩行者8方向の計測が必要となる「交差点交通量調査」

目的によって方法はさまざまですが、自動車・歩行者それぞれ2方向ずつを計測する「断面交通量調査」や自動車12方向、歩行者8方向の計測が必要となる「交差点交通量調査」などの調査方法があります。

交通量調査員は、性別、世代問わず誰でもなれるのだとか。同社では、採用説明会を実施して調査内容を理解した上で調査員を採用しているそうです(同社は高校生不可)。 ただし、行政から業務の発注を受ける場合には、技術士や測量士の資格を持った人員を配置し、建設コンサルタント登録を行った企業である必要があります。

時代とともに変化する交通量調査、人の手だからこそできる計測も

調査員によるカウント以外にも、赤外線を活用したトラフィックカウンターや画像解析によるカウントも増えてきています。実際に国土交通省の道路交通センサスでも、監視カメラなどで利用されているCCTV画像を活用したAI観測を取り入れ始めています。AIの発達によって調査・計測方法に変化はあるのでしょうか。

「主な国道ではCCTVを活用したAI画像解析を活用した交通量調査も行われていますが、それほど多くはありません。理由としては、交通量調査の目的のためにCCTVが設置されていないため、現状の画角ではうまく解析できないこと、CCTVの画像が荒く、画像解析に耐えられないことなどです」(担当者)

CCTVは、1年中撮影しているので長期間の観測には向いています。しかし、画像である以上、夜間の解析は著しく精度が落ちてしまい、雨や雪の観測も困難です。その反面、調査員は道路が見える場所であればどこでも観測できるという利点があります。

まだまだ、人の手による計測が主流である交通量調査。私たちが便利に暮らすためのデータ分析を行っていますが、ドライブ中に見掛けると「何をしているのだろう?」と気になってしまう人もいるのでは。最後に、同社の担当者からドライバーに向けてのメッセージを頂きました。

「交通量調査を行っている目的は、渋滞対策、整備効果検証、統計データ入手、出店検討などさまざまです。中には映像を撮影したり、ナンバープレートを撮影したりしているときもあり、ドライバーの皆さんは不審に思う方もいらっしゃるかもしれません。しかし、交通量調査が道路を利用する方の役に立っていることは間違いありません。どうかあたたかく見守っていただければと思います」(担当者)

交通量調査が、私たちの暮らしを支えている側面があると知るとちょっと見方が変わってきませんか。今日もどこかで行われている調査のデータによって、より快適で安全なドライブ環境が実現していくのかもしれませんね。

<関連リンク>
株式会社サーベイリサーチセンター

(取材・文:笹田理恵 / 編集:奥村みよ+ノオト)

[GAZOO編集部]

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