古民家カフェなのにクルマ好きが集まる「Cafe de 祐夢」の想い

千葉県市原市、国道297号線沿いに位置する「Cafe de 祐夢(カフェ・デ・ユウム、以下、カフェ・祐夢)」は、一見クルマとはまったく関わりのなさそうな古民家カフェです。
しかし、クルマ好き乗り物好きが集まるカフェとして知られており、2019年のオープン初日には200台ものクルマが訪れたのだそう。

一体どんなカフェなのでしょうか。また、どのようにしてクルマが好きなお客様の心をつかんだのでしょうか。お店を経営する藤村築(きずき)さんと藤村祐路(ゆうろ)さんに、お話を聞いてきました。

  • 左が藤村築さん、右が藤村祐路さん。親子でお店を切り盛りしている

古民家の間取りを活かし、バラエティに富んだ客室に

「クルマ好きが集まるお店」をコンセプトにオープンしたカフェ・祐夢。

「クルマ好きなら、クルマに乗って訪れたいはず」と、駐車場は30台分ものスペースを確保しています。地域に住まう方々に迷惑をかけないため、あまりに排気音の大きいクルマ(のお客様)は入店を断っているそう。

店舗となっている古民家は、とても広くて立派なもの。この古民家を見たくて訪れる、いわゆる「古民家カフェファン」のお客様も少なくないとのこと。

かつての日本家屋の特徴である“部屋数の多さ”はカフェには不向きな造りですが、これを利用して各客室を異なる雰囲気に仕上げています。

  • 古民家だったころの面影を、色濃く残す座敷部屋

  • 新調したばかりというソファは、ゆったりとした座り心地を提供してくれる

スタッフは築さんと祐路さんのほか、数名のアルバイトが在籍。
お店に到着すると看板カーのGT-Rがお出迎え、加えて看板ネコのちゃーぼうちゃん、そして看板タカの姫ちゃんというバラエティに富んだ特別スタッフが、お客様を和ませ、癒やします。

  • カフェ・祐夢の看板カーである2台のGT-Rがクルマで訪れたお客様をお出迎え。築さんと祐路さんが、それぞれ所有している

  • 看板ネコのチンチラ「ちゃーぼう」ちゃん。ネコが苦手なお客様のため、普段はケージの中で控えている。希望するお客様は、限定された部屋で抱っこができる

  • ハリスホークの「姫」ちゃん。希望する人は「えがけ」(腕カバー)が貸し出され、腕にとまらせてもらえる

カフェ・祐夢は、軽食やスイーツだけでなく、しっかりとしたお食事メニューも用意。
事前の予約が必要ですが、大人数のミーティングに向いたBBQメニューもオーダーでき、オープンテラス席で焼きたてのお肉を楽しめます。

  • ボリュームたっぷりの「海鮮アヒージョとアラカルト・ハーフパスタのフルコースランチ」

  • スイーツメニューは「季節のフルーツケーキ」をはじめ、8種類が提供される

詳しくはのちほど記しますが、築さんと祐路さんが運営する動画配信チャンネル「ゆーろTV」オリジナルグッズも、カフェ・祐夢にて販売されています。

  • オリジナルグッズを目当てに、訪れるお客様も多いそう

クルマが好きな人たちが、安心して集まれる場所を作りたかった

カフェ・祐夢のオープンは2019年10月。それ以前は、築さんはアパートやマンションの管理会社に、祐路さんは鮮魚店に勤めていました。

「カフェを経営したい」と提案したのは息子の祐路さんから。自動車免許を取得し、クルマに乗るようになってから、ずっと考えていたそうです。

「よくクルマ好きが、公共の駐車場やSA・PAに集まっているじゃないですか。楽しい気持ちもわかるんですが、どうしたって普通に駐車場を使いたい人に恐い思いをさせてしまう。

それってすごくもったいないですし、なにより自分たちも危ないですよね。
クルマが好きな人たちが安心して集まれる場を作れないかなってずっと考えていて、父に『カフェをやれないか』と相談しました」(祐路さん)

自身もクルマや乗り物が好きで、やはり現状の“集まりにくさ”に思うところがあった築さん。祐路さんからの言葉を受け、悩むことなく首を縦に振ります。

「物件を探し始めたのは、2019年に入ってからかな。クルマ好きのお客様に集まってもらうなら、広い駐車場は必須だと思ったので、それを一番の条件に探しました。

探し始めてから3カ月が経ったころに、古民家の賃貸物件を紹介されたんです。30台分の駐車スペースを持ち、何年か前まで居酒屋として営業していた物件でした。ちょっと国道から見つけづらいのが難点ですが、祐路と現地を視察して、ここに決めました」(築さん)

古民家の所有者と契約を結んだのち、カフェに向けての改装に乗り出します。自分たちでできる箇所は自分たちで、できない箇所は親しい業者に依頼し、苦労しつつも楽しみながら作業を進めていきました。

  • 協力してくれる知人と一緒に、門から玄関までのアプローチを整地。改装作業は真夏に行われた

  • 床など、お客様の歩きやすさや安全に関わる箇所は、専門の職人さんが手がける

およそ半年ほどかけて、改装作業は終了。オープンを2019年10月と定めました。

先ほど少し触れましたが、築さん、祐路さんはカフェを始める以前からクルマをテーマにした動画配信チャンネル「ゆーろTV」を運営しています。「ゆーろTV」の登録者数は8万人以上、再生数は時に40万回を超える人気のチャンネルです。

そこで、改装中の様子を動画で公開し、オープン日をSNSで告知するなど、積極的にネットメディアを活用。その甲斐あって、オープン日には全国からお客様が訪れ、延べ200台以上のクルマが集まりました。予想をこえた集客っぷりに、2人は慌てて臨時の駐車場を確保し、誘導に走り回ったそうです。

「駐車場にランボルギーニやフェラーリといったスーパーカーや、ハードなチューニングカーが並んでいると、恐縮して入店せず帰ってしまうお客様もいます。

その一方で、逆に興味を持って入店してくれるお客様もいるので、難しいですよね。ちなみに後者は女性が多い印象です」(築さん)

上々な滑り出しをみせたカフェ・祐夢。物珍しさで立ち寄ってくれた地域のお客様も定着し、業績は順調に伸びていきました。しかし、ほどなくして訪れたコロナ禍により、経営は苦境に立たされます。

甘かった当初の見通し…カフェの存続には地域のお客様との両立が不可欠

新型コロナウィルス(COVID‑19)の流行により、緊急事態宣言が発出。
不要不急の外出や都道府県をまたぐ移動に自粛が要請されたのは、記憶に新しいところです。このコロナ禍は、多くの小売店や飲食店に深刻な打撃を与えます。

カフェ・祐夢も例外ではなく、売上はオープン当初と比べて3分の1にまで減少してしまいました。緊急事態宣言は2021年9月30日に全面解除されましたが、未だ客足は十分に戻っていないそうです。

「ありがたいことに、週末にクルマでいらっしゃるお客様の客足は、早いペースで戻りつつあります。ですが、1週間のほとんどは平日。平日にいらっしゃる、地域のお客様にも戻っていただかないと、商売として厳しいですね」(築さん)

「正直、“クルマ好きが安心して集まれるカフェ”という当初のコンセプトは、甘かったと思い知らされています。それだけでは店は続かない。

もちろん、クルマ好きのお客様へのサービスを緩めるつもりはありませんが、SNSや動画配信では届かない、地域のお客様にどうアピールするかが現在の課題です」(祐路さん)

  • ガーデンテラス席の設置やイベントの開催など、お客様を戻すために試行錯誤を繰り返す

カフェ・祐夢を「安心して集まれる場所」として訪れるお客様のために、知恵と行動でお店を守る築さんと祐路さん。苦しい中でも笑顔を絶やさない2人の人柄に、多くのクルマ好きの方が訪れる理由がわかりました。

「ミーティングやオフ会、千葉県へのツーリングを計画しているのなら、ぜひ当店の利用をご検討ください。30台まで停められる駐車場と、風雨の関係のない快適な環境で、美味しいフードやドリンクを用意して、お待ちしています!」(築さん・祐路さん)

大人数のミーティングやオフ会の場合、いきなりの訪問でも対応できるそうですが、貸し切り予約が入っていることもあるので、事前に連絡があると助かるそう。

ミーティングやオフ会にも利用できるカフェ。クルマ好きにとっては嬉しい存在ですね!

<Cafe de 祐夢>
住所:千葉県市原市藤井3−85
連絡先:0436-67-0817
営業時間:11:00~22:00(ラストオーダー21:30)
定休日:毎週月曜日(月曜日が祝日の場合は火曜日)
夏休み・GW・正月につきましては、お店までご確認をお願いします。
※その他臨時休業やイベントなどで一般利用ができない場合があります。

HP:https://co-yrk.com/
SNS:https://twitter.com/Cafede10
YouTube:https://www.youtube.com/channel/UCnt39xY4Esp6AjM95LdH4hQ

(文・撮影:糸井賢一/取材協力・料理写真:Cafe de 祐夢/編集:木谷宗義type-e+ノオト)

[GAZOO編集部]

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