アメリカで80年代に放映された『ナイトライダー』のドリームカー「ナイト2000」が間近で見られるカフェ
1980年代に放映されたアメリカのテレビドラマ『ナイトライダー』。その中でも、主人公のマイケル・ナイトの相棒である「ナイト2000」は絶大な人気を誇ったドリームカーです。このナイト2000を精巧に再現したカスタムカーとともにお茶ができる愛知県春日井市の「アロハコーヒー」を取材。劇中から飛び出したような再現度高いナイト2000を展示するカフェのオーナー・奥村佑季さんに話を伺いました。
プレスリー好きの母の影響で好きになったアメリカカルチャー
エルヴィス・プレスリーが大好きな母の影響で、幼少期からアメリカの文化が身近だったという奥村さん。母のクルマに乗るといつもプレスリーの曲がかかっていて、初めて見た映画は『E.T.』だったと振り返ります。
そして子どもの頃、夢中になったのがテレビドラマ『ナイトライダー』。アメリカでは1982年から放映が始まり、一大ブームを巻き起こした作品です。ナイトライダーは、私立探偵のマイケル・ナイトが、電子知能を持ち、言葉を話すドリームカー「ナイト2000」、通称K.I.T.T.(キット)と一緒にさまざまな事件を解決するカーアクションドラマ。ナイト2000の活躍と迫力満点のカーチェイスで人気を博しました。日本で放映が始まったのは87年。当時、奥村さんは11歳で、3つ歳上のお兄さんとテレビの前でくぎ付けになって見ていたそうです。
「人口知能が搭載されていて意思を持っているクルマ自体が、当時は夢のような話だったんですよね。クルマと会話ができて、時には主人公を助けてくれる。そんな姿に私と兄は夢中になりました」(奥村さん)
当時の憧れを、現実化させたのは「いつか大人になったらこのクルマを手に入れる」と固く決意していた奥村さんの兄・桑原知孝さん。その決意は約30年後、ナイト2000のレプリカを製作する会社を見つけたことで実現に向けて動き出します。埼玉の会社へ足を運ぶと、カスタムカーのあまりの再現度の高さに驚いたのだとか。そこから、子ども時代からの夢だったナイト2000の製作を依頼する流れとなりました。
劇中から飛び出してきたような再現度の高い「ナイト2000」
まずは、ナイト2000の土台となるゼネラルモーターズ「ボンティアック・トランザム」の車両をアメリカで探すところから始まりました。製造中止の車体であることに加え、アメリカではいまだに「ナイトライダーフェスティバル」が開催されるほど根強い人気の作品。ベースとなるクルマ自体がとても手に入りづらい状況だったそうです。いつ車体に出合えるか分からない中での依頼でしたが、そこから1年ほどで見つかり、埼玉のAREA TEN-ONEと大阪にあるタカオートの2社に協力してもらってカスタム。2015年に完成しました。その車体のディティールを写真とともに紹介します。
劇中では、主人公・マイケルがつけている腕時計型の通信機「コムリンク」を通じて、会話ができるナイト2000。少し皮肉めいたキャラクターであるのも、ナイト2000が愛されるゆえんです。そして、ボンネットに取り付けられたフロントスキャナーは当時から人気のパーツ。左右に流れる赤い光の“残像感”がしっかり再現されています。
運転席には、さまざまな特殊機能を表示するダッシュボードが取り付けられています。劇中で、敵陣を映し出すスキャナーや爆弾を発射するのに使われていたボタンなども精巧に再現。天井には容疑者情報を入力して送信するためのキーボードが。
数年前まで車検を通していたため、公道を走行可能でしたが、クルマのイベント展示で貸し出す時以外はガレージで大切に保管されていたそうです。
そんな中、空きテナントとの巡り合わせで、20年3月から旦那さんと一緒にカフェをオープンすることになった奥村さん。4番目の息子さんがダウン症候群だったこともあり、「その子の居場所を作りたい」という思いから開業しました。
「お客さんに喜んでもらえるクルマを兄が持っていたので、せっかくならカフェで展示したらいいんじゃないか、と考えました。近所の年配の常連さんが、ナイト2000の横で朝のコーヒーを飲んでいたりするんですよ」(奥村さん)
アロハカフェがオープンしたことをきっかけに、誰でも気軽に奥村さんのナイト2000を見られるようになりました。中には関西や四国から足を運ぶナイトライダーファンやクルマ好きも。
「10代、20代でナイトライダーに触れて、“ずっと実物を見たかった、何十年越しの夢だった”と話してくださる方や、ナイトライダーファンである親の影響で好きになったという若い世代のお客さんも訪れています。車体の再現度が高いので、こちらが恐縮してしまうくらい感動してくれる方も多いです」(奥村さん)
実際にアメリカで活躍していたポリスカーも展示
そして驚きなのが、このカフェにはナイトライダーだけでなくアメリカで実際に使われていたポリスカーも展示されています。アメリカ好きが高じて、2016年にオークションで入手したそうです。警察車両のままでは輸入できないため、パーツで輸入して国内で再び組み立てられた車体は、2008年式のフォード「クラウンビクトリア ポリスインターセプター」。こちらも車検を通しており、実際に公道を走行可能。こちらは、テレビ番組の再現ドラマからの貸し出し依頼が多いのだとか。
車体は、無線、マイク、サイレン、ランプなど、すべて使える状態になっており、内装はアメリカの警察で実際に使いこまれた雰囲気が残っています。シートが固く、座り心地が悪い後部座席は、窓枠に鉄格子がはめられていて、ドアを閉めると中からは開けられない仕様です。容疑者を照らすライトも装備されています。展示されているポリスカーは、実際に乗車できるので臨場感を味わってみるのもおすすめです。
「ナイトライダーを皮切りに、アメリカの希少車体や映画に登場するクルマが欲しくなっていますね。いま兄は、バック・トゥ・ザ・フューチャーの名車デロリアンを狙っています」(奥村さん)
日本で希少なナイトライダー・ナイト2000 とアメリカのポリスカーが並ぶハワイアンカフェ。営業は平日のみですが、中には有休を使ってナイト2000を見に来るお客様もいて、クルマ談義で盛り上がることもあるのだとか。ぜひレアなクルマを眺めながら、日替わりランチやハワイアンコーヒーを味わってみてはいかがでしょうか。
<取材協力>
アロハコーヒー
愛知県春日井市東野新町1丁目8-4
Instagram:@alohacoffee4
(取材・文・写真:笹田理恵/編集:奥村みよ+ノオト)
[ガズー編集部]
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