No Attack No Chance 夢に向かって ~コロナ禍のアメリカで修行中のメカニックからの便り その3~
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Rd.3-4 テキサス・モーター・スピードウェイにて
みなさんこんにちは!オフシーズンも地味に取材活動をしている私です。コロナ過もいよいよ3年目に入りましたね。心配事だらけですが、健康第一、みんなで乗り越えましょう。
さて、世界へ修行に出たメカニックたちが頑張っていて、いつも気にしております。SNSは便利なもので彼らがこのような何事も困難な世の中で一歩ずつ前進していること、拝見できて感謝しております。今回、アメリカのインディカーシリーズで頑張る須藤翔太くんに一年ぶりに近況を伺うことができました。昨年のコラムは下記よりご覧くださいね。海外を志すメカニックたちの参考にもなればとも思います。それでは、どうぞ!
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2020年のインディ500優勝ドライバーとチームオーナーに贈られるものベイビーボルグワーナトロフィ贈呈式後 2021 Rd.1にて
皆さまこんにちは!また、初めまして!2020年シーズンよりアメリカのNTT INDYCAR SERIESでメカニックをしている須藤 翔太です。昨年に引き続き今シーズンも同カテゴリーのメカニックとして活動をして行くことになりました。よろしくお願いします!
アメリカでレースメカニックをしている須藤翔太の近況報告
今シーズンは佐藤琢磨選手のデルコインレーシング(Dale Coyne Racing *以後DCR)への移籍とともに僕自身も移籍をいたしました。この移籍に関しては、僕自身かなり長い間話し合いをし、個人でもいろいろと考えた末、琢磨選手とともに移籍をするという判断をしました。琢磨さんからも一緒にやりたいと言っていただき、付いていくことに決めました。
昨シーズンまで、レイホール・レータマン・ラニガン・レーシング(Rahal Letterman Lanigan Racing *以後RLL)に2020年3月から約1年半所属をし、RLLの皆さんにはアメリカでインディカーのメカニックとして働くというチャンスを与えて頂きとても感謝をしております。
日本では感じれなかったことをインディカー2シーズン目に感じる
渡米して2シーズン目となった昨シーズン、レースをご覧になられた方、雑誌やSNS等で記事をご覧になられた方はご存じだと思いますが成績としてはとても苦しいシーズンでした。僕自身もこんなにも苦しいシーズンになるとは開幕前は思っていませんでした。その中でも僕らメカニックとしては、大きな車両トラブルを開幕戦以降、出すことなく終えることができたのではないかと思ってます。
昨シーズンは前回こちらのコラムに書かせて頂いた通り、琢磨選手の車両のフロントエンドメカニック、インサイドフロントのタイヤ交換のピットクルーとして活動。僕自身としては、新しいポジションで1シーズンを過ごしたことになります。
昨年1年間はさまざまな事をチームクルーと何度もディスカッションし、毎レースごとに前回のレースよりも良いクルマを作っていこうと取り組みました。その中でも日本人としての考えとアメリカ人(チーム)としての考えでは、さまざまな部分で違いを感じ、新たに学ぶことが多くある1年でした。
その一つとしてどの作業をするに対しても考えの違いを感じることがありました。毎イベントごとにチーフクルーから次のイベントに向けてのメンテナンスのターゲットを聞き、ウィークデーの仕事の組立を行ってきました。毎回、先読みをして、時間を組み立て仕事をするという日本に居た時に学んだことを念頭に置いて仕事をしていました。
その際、同じセクションを担当する他のメカニックともディスカッションをして仕事を組み立てていったのですが、彼には彼なりのやり方があり、最初は少し意見のぶつかることがありました。最終的にはお互い納得のいくやり方でシーズンを通して作業をすることができましたが、日本とアメリカでは考え自体がそもそも違う部分があり少し戸惑う部分も当初はありました。しかし、気が付けば僕自身は日本とアメリカのハイブリッドな仕事の仕方に変わり、仕事量に対しての効率を考えるとその考えにたどりつきました。
日本にいた時には感じることのなかった感覚でしたが、今となって僕自身の糧となり、それはアメリカでのメカニックとして仕事をしていく中でのベースとなっています。
昨シーズン琢磨選手のファンの皆さんやモータースポーツファン、知り合いなど多くの人からインディカーにピット作業に関してSNS等を通じて質問されることが多くありました。
インディカーはヨーロッパやアジア圏の主要レースとは違い、コンクリートウォールの外でピットワークを行い、パっと見はとても危険という印象を多くの方が持っていると思います。正直、最初は少し恐怖心がありましたが今ではウォールの外が“ものすごく楽しい”って思えます。実際はかなり危険ですが、そのスリルを僕はある意味楽しんでます。
そしてその中でもよく聞かれるのが緊張しないのか?また、どのくらい練習しいるの?等々。
正直、今は良い意味で程よい緊張感の中でレース時のピット作業を行うことが出来ています。昨シーズンは1年通してナーバスになることは一度もなく“楽しい”という気持ちの方が上でした。
このような感覚に至ったのも、日本で最後に所属していたTOM’Sでの経験がとても大きいと僕自身は思っています。あの緊張感の中で2シーズン、チャンピオンシップを最後まで争いピットクルーをやらせて頂けたこと、あれで今の自分があると思っています。TOM’Sの山田淳さんを始め多くの日本国内レース関係者の皆様に感謝しております。
渡米して以降、僕自身はかなりリラックスしてピット作業はできてますが、唯一、“INDY500”のあの独特な雰囲気だけはレースが終わるまでものすごく胃が痛くなります。あの雰囲気は他のどのチャンピオンシップのチャンピオン争いとも比べられないくらい大きな何か感じます。勝てない時の悔しさを言葉でどう表現したら良いのかわかりません。他のレースと比べることのできない、それだけ伝統的で偉大なレースなのだと…。
また、練習に関してですがピットワークをする上で必要なトレーニングをし(体幹や基礎的な筋トレ)、毎週決まった日程で電気で動く実車を使って行っています。実車を使っての練習は、あくまでも次のイベントに向けての自分自身のウォームアップや新たな改善点を発見をするためです。
実際のレースウィークは毎回ピットボックスのサイズが違うので、そこに対してアジャストしないといけないので、その時に自分のベストを短時間で見極めてレースに臨みます。またインディカーは、セーフティルールの関係でピットストップ練習をできるセッションが決められていて、ウォームアップ走行の30分間でしかやることができません。その30分の走行のなかでの数回の練習で、レースに向けて全てを合わせ込みます。僕は楽しむことを第一に常日頃トライしています。
移籍先でも目標は同じ
昨シーズンエンド後に移籍したデルコインレーシング(Dale Coyne Racing*以後DCR)は、イリノイ州にチームのショップを構えているチームです。チームオーナーのデイルはとても気さくな方で、チームもオーナーの人柄からなのか、みんな親しみやすくとても雰囲気も良いです。シリーズのなかでは少数精鋭なチームですが、僕自身とても良いフィーリングです。
チームメンバーは、アメリカ人はもちろんのこと、メキシコ/スペイン/アルジェンティーナ/カナダ/フランス/イギリス、そして日本人とワールドワイドなメンバーでいつもとても楽しく仕事しています。
移籍先でもこれまで同様、琢磨さんの車両のフロントエンドメカニックを担当しています。タイヤ交換に関しては、チームのトータルバランスを見て、インサイド(ピットウォール側)のフロントかリアを決める予定です(今の時点ではインサイドリアが濃厚です)。どのポジションでも僕自身のフィーリングとしては同じですし、目標は同じなので楽しくベスト尽くすのみです!
続く!
(テキスト、写真 須藤翔太)
レポーター(お)ねえさん・大谷幸子
随時、クルマに関する様々なイベント・テーマでレポートしていきます!
[GAZOO編集部]
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