奴田原選手にグラベルの走りを教わり、弘前のラリーに挑戦
ネッツ東京レーシングから塚本奈々美選手とともにTOYOTA GAZOO Racing ラリーチャレンジに参戦していますが、後半戦を控え、もう一歩上位に食い込むべく何が足りないかを見極めたい。そこで奴田原文雄選手が講師を務める「NUTAHARAラリースクール」に奈々美選手が参加し、ラリードライバーからより専門的な指導をしていただきました。
奴田原選手といえば、全日本ラリー選手権で10度の年間チャンピオン、2006年にはラリー・モンテカルロ(FIA PWRC プロダクションカー世界ラリー選手権)で日本人初優勝、そして2012年にはパイクスピークインターナショナルヒルクライムにTMG(トヨタ・モータースポーツGmbH)が製作したEVマシンで参戦し、EVのコースレコードをマークして優勝した国内外で数々の栄冠に輝いたラリードライバー。すでに30年以上のラリー経験をもち、ラリーに真剣に挑みたい選手たちに伝えたいとスクールを立ち上げ、また次世代のラリードライバー育成のために現役高校生ドライバーを採用して、ジュニアチームのアドバイザーも務めています。
奴田原選手に教わり、グラベルでの走りを磨く
今シーズン初参戦した第2戦の長野県・茅野八ヶ岳では、奈々美選手はサーキット、ドリフトと経験豊富なので、ターマック(舗装路)は上位に食い込むのですが、グラベル(未舗装路)は経験がなく、ついマシンをいたわってしまうやさしさが出てしまい上位とのタイム差が大きく開いてしまいました。そこで次戦の第5戦の青森県・弘前ではグラベルがメインとなるため、奴田原選手に鍛えていただきます。
滑りやすいグラベルでパイロンを使って荷重移動やブレーキングなど基礎からチェックしてもらいます。そして林道コースで奴田原選手が助手席に乗り、ドライビングのアドバイスをしていただいたり、奴田原選手がドライビングして助手席で走り方を覚えていきます。
そしてペースノートの作り方を勉強します。奴田原選手とコ・ドライバーは新井敏弘選手のコ・ドライバーも務める田中直哉選手がコンビを組み、後部座席からレッキとペースノートの作り方をライブで見られます。これはとても勉強になります。私は都合で参加できなかったのですが、これはぜひ見てみたいと思いました。
奴田原選手がひとりひとり丁寧に教えたいということで4組限定のスクールなので、一気に上達できるスクールです。奈々美選手もグラベルの経験値を一気に上げられ、大満足で次戦に挑みます。
- 奴田原選手にラリードライビングをレクチャーしていただく
- 弘前の練習にはもってこいのコース
弘前は9台がリタイアする波乱のラリー
ラリー当日は晴れだったのですが、レッキをすると数日前に降った雨が林道に染み出ていてグラベルのSS(競技区間)はところどころ滑りやすくなっていました。SS1は先行しているクラスのマシンが早くもコースオフしてリタイアしていました。私たちは慎重に走り、クラス4位でゴールしました。さっそくNUTAHARAラリースクールの成果が出ていて、奈々美選手のグラベルでの走りが見違えるようにレベルアップしていました。私たちが参戦しているC3クラスはTOYOTA 86のチャレンジクラスなのですが、上位3台がとても速く、ここに追いつくのがなかなか難しい。しかし続くSS2では奈々美選手からペースノートの作り方を教わり、コンビネーションもうまくいくようになり、クラス3位でゴール。6本あるSSのうち、2本目で上位に近づけたので、上々の滑り出しです。
- 青森の大自然を堪能しながら走れる。ただ、暑かった
- レッキをしてサービスへ戻る。下りも多くかなりハードなコースだった
そしてSS1と同じルートのSS3。序盤の路面がSS1のときより乾いてきて、ペースも上げやすくなりました。ペースノートの読み上げも早くなるほどに車速が上がるようになり、手応えを感じていたところ、ブラインドになっていたコースの先がぬかるんだままで、そこで車速を落としきれず、コース脇の木に右フロントタイヤをヒット。幸いそのまま走れたので、車速を落としてSSをゴールしました。その後ヒットした部分を見たところ、フロントロアアームとステアリングタイロッドが少し曲がってしまいました。ただ走行できるので、SS4は車速を落として走り、サービスへ戻りました。
- サービスでのパーツ交換。ギャラリーがだんだん増えてくる
1時間もない限られた時間でのパーツ交換を、ネッツ東京のメカニックが挑んでくれました。観客もその手際のよさに感心するほどで、走り出すときには拍手までしてくれました。
しかしSS5へ向かうリエゾンで、ステアリングに不具合があると奈々美選手から聞き、これ以上無理はできないとリタイアしました。前回より速くなってきたからなおさら残念でしたが、速くなればなるほど、もっとリスク管理をしていかなければならないことに気づきました。チームに大変迷惑をかけてしまい申し訳ない気持ちでいっぱいですが、次戦の福島では、今回学んだことを活かし、よりよい結果で完走できるよう準備していきます。
(写真:NUTAHARA RALLY SCHOOL / 撮影:斉藤武浩)
(写真:TOYOTA GAZOO Racing ラリーチャレンジ / 撮影:真壁強・栗山尚広)
(テキスト:寺田昌弘)
ダカールラリー参戦をはじめアフリカ、北米、南米、欧州、アジア、オーストラリアと5大陸、50カ国以上をクルマで走り、クルマのある生活を現場で観てきたコラムニスト。愛車は2台のランドクルーザーに初代ミライを加え、FCEVに乗りながらモビリティーの未来を模索している。自身が日々、モビリティーを体感しながら思ったことを綴るコラム。
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