サーキット、ドリフト、ラリーに挑む塚本奈々美さん ~モータースポーツに挑戦する女性~
テニスの大坂なおみ選手や水泳の池江璃花子選手など、近年特に女性アスリートの活躍が目覚ましい。モータースポーツにおいても女性ドライバー限定の競争女子選手権「KYOJO CUP」が始まったり、私が参戦しているTOYOTA GAZOO Racingラリーチャレンジでも女性選手が活躍しています。そこでクルマ好きのみなさんに、モータースポーツに挑む女性を紹介しようと思います。第1回は、ラリーチャレンジでコンビを組んでいる塚本奈々美さんを紹介します。
カートを観てレーシングドライバーになろうと決めた
たまたま立ち寄ったカート場で観たレーシングカートの走りに魅せられ、レーシングドライバーになろうと決めた奈々美さん。仲のよかった女子ドライバーと「女子カート部」を結成してカートでレース経験を積んでいました。
2013年、玩具メーカー「京商」の創立50周年記念のプロモーションキャラクターに選ばれ、同時に「86/BRZレース」に参戦するドライバーになり、サーキットレースデビューを果たします。2015年には「ポルシェカレラカップ」にも参戦し、見事年間タイトルを獲得します。サーキットで活躍しながら2016年にはD1ストリートリーガルやD1レディースリーグなどドリフトにも挑戦します。こうしてサーキットとドリフトと異なる2つのモータースポーツに挑む唯一の女性ドライバーとして注目を浴びます。ドリフトは国内だけにとどまらず、中国で開催された大会にも参戦し、中国でも女性ドライバーとして大人気となっています。
今シーズンは、ネッツ東京レーシングから「TOYOTA GAZOO Racingラリーチャレンジ」にTOYOTA 86で参戦し、新たにラリーの世界にも挑戦し始めました。サーキットで培ったグリップ走行からドリフトで得たアクセルやサイドブレーキを使ったリヤスライドなど多彩なドライビングテクニックをラリーで活かしています。私もコ・ドライバーとしてコンビを組ませていただき、助手席でそのドライビングのうまさに感動しながら、力を合わせて上位入賞を目指しています。そしてサーキットでは、工具メーカーTONEの80周年企画チームから日産・フェアレディZのワンメイクレース「アイドラーズゲームス Z EXPERT TROPHY」に参戦。すでに3戦エントリーし、2度の優勝、2位1回と連続して表彰台を獲得しています。またドリフトは土屋圭市さんが大会審査委員長を務める「ドリフトキングダム」のクラブマンクラスに日産・シルビアでシリーズ参戦しています。サーキット、ドリフトそしてラリーとドライバーとしての活躍の場を広げています。
モータースポーツを通じてクルマの楽しさを伝える
奈々美さんはドライバーとして活躍するだけにとどまらず、「美しすぎるレーシングドライバー」としてテレビやラジオ、イベントに出演し、レース会場に来られない方々にもモータースポーツを通じてクルマの楽しさを伝えています。また専門誌「ベストカー」「モーターイズム」、ネット配信「clicccar」「トーチュウF1エクスプレス」などで記事、コラムを連載し、自身がメディアとなってクルマ好きを増やす活動を展開しています。さらに2015年に映画「新劇場版 頭文字D」のプロモーションアンバサダーに就任してから様々な頭文字Dトリビュート企画を展開し、プロデューサーとしても活躍しています。たとえば老舗カーケアブランドの「シュアラスター」とコラボレーションし、頭文字Dの各キャラクターが実際、自分の愛車を洗車するときをイメージしたイラストを描き下ろしてスプレーコーティングボトルにしています。また釜めしで有名な「おぎのや」では、頭文字Dに実際出てくる店舗看板前に日産シルエイティと女性キャラクターの佐藤真子が佇むシーンを釜めしの掛け紙にするだけでなく、奈々美さん自身が真子に扮して、実車とともにそのシーンを再現したイベントも開催しました。当日は数百人のファンが集まり、撮影を楽しみ、釜めしを販売した3日間で約5,000個も売れるほど大盛況でした。
2019年は念願のニュルブルクリンク24時間レースへ
様々なモータースポーツに挑戦する奈々美さんですが、ドリフトで海外参戦したように、やはりサーキットでも世界で走りたい。そう思っていたところ、来年のニュルブルクリンク24時間レースに参戦できるチャンスが巡ってきました。声をかけてくれたのが、今年のニュル24時間に2台のLEXUSで挑み、見事日本勢最高位で完走したNOVEL Racingが運営するREVEL Racing。ただニュル24時間に参戦するには、ニュルでの参戦実績がないとエントリーすらできないため、今夏からニュルブルクリンクVLN耐久レースに参戦し、パーミットAライセンス申請資格を取得しています。マシンはTOYOTA 86。奈々美さんにとってTOYOTA 86は、サーキットレースに挑戦し始めた頃からの相棒で、現在ラリーチャレンジでも乗っています。10月もまたVLN耐久レースに参戦するためドイツへ渡るそうです。日本人女性ドライバーが世界へ挑む。来年、夢が叶い、ニュル24時間をゴールするシーンが見られるのが、今から楽しみです。
(テキスト:寺田昌弘)
ダカールラリー参戦をはじめアフリカ、北米、南米、欧州、アジア、オーストラリアと5大陸、50カ国以上をクルマで走り、クルマのある生活を現場で観てきたコラムニスト。愛車は2台のランドクルーザーに初代ミライを加え、FCEVに乗りながらモビリティーの未来を模索している。自身が日々、モビリティーを体感しながら思ったことを綴るコラム。
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