「伝えたい思いがある」トヨタ東京自動車大学校の学園祭がおもしろい
学園祭はその学校の特色が出ておもしろいですが、今回自動車技術教育に特化した学校「トヨタ東京自動車大学校」の学園祭にお誘いいただき、初めて伺いました。1級小型自動車整備士を目指す科から、プロのメカニックとして深い知識を得ながらトヨタのセールスを学べるトヨタセールスエンジニア科、ハイブリッドカーやEV、PHV、FCVなどモビリティの電動化技術を中心に学ぶスマートモビリティ科、そしてボデークラフト科などモビリティに関わることを専門的に学べる大学校です。
東京・八王子の広々とした校内では、生徒のみなさんが思い思いの「伝えたい思い」を表現していました。私に伝わってきたキーワードは「教える」「挑む」「力を合わせる」。今回は未来のモビリティを支える若者たちが作り上げた学園祭を紹介します。
- 広大な敷地には校内サーキット、オフロードコースもある
今日は教わる側から教える側へ
校内を一通り回って、一番印象に残ったのは、普段はもちろん先生に教わる立場の学生が来場した方々、特に子供たちに一所懸命教えている姿です。ボデークラフト科・ボデークラフト研究科の学生たちは、エアーブラシを使ってクルマの模型をペイントするコーナーをやっていました。シンナーを含まない水性塗料を使っているので子供たちにも安心して塗装体験ができます。学生たちが子供たちに笑顔で丁寧に教えている姿を見ると、その学生を指導している先生の姿勢も見えてきます。また塗装しているときに水性塗料が環境にやさしいことなどをわかりやすく説明していました。自分で塗ったボデーをプレゼントしてもらった子供たちのうれしそうな笑顔が印象的でした。
1級自動車科ではエンジンがかからない原因をクイズ形式で答えてもらい、正解するとエンジンがかかり、お菓子がもらえるコーナーを展開。子供たちは、ガソリンエンジンが始動するには、燃料、電気が必要であることを探し当て、クルマは走って当然と思っていたのが、クルマはエンジンが動いているから走るんだと理解していました。教えていた学生に聞いてみると「教わってわかっていると思っても、同じように説明しようとすると難しいですね。でもこうして子供たちが真剣に話を聞いてくれるとうれしいです」学んだら人に伝えてみる。こうして理解が深まることを学生たちは体感しながら気づいていました。
- 水性塗料を入れたエアーブラシでミニチュアボデーを塗装する
サービス技術コンクールは大盛り上がり
観客の多さで驚いたのは「サービス技術コンクール」。各組から選抜された2名が点検・整備などの腕を競う組対抗となっていたのですが、同じ組の学生の応援で会場は満員でした。多くの観客の前でみな緊張しながら作業を進めていきますが、うまく行ったら応援団から大きな声援が飛び交い、てこずっていたら激励の声が。まさに青春といった雰囲気で観ていて、こちらも気分が若々しくなりました。
またアリーナでは大縄跳び大会が開催されていました。どのチームも最初はうまく連続して飛べないのですが、リーダーシップを発揮して改善案を出す学生、縄に引っかかってしまう仲間に飛ぶタイミングをその都度伝える学生など、しっかりチーム一丸となる方法を考え出していました。チームで呼吸を合わせる大縄跳びは、チームをまとめる練習にもってこいです。
そして建物の外では、もぐもぐ市場と称する模擬店が立ち並んでいました。焼き鳥やフライドポテト、スイーツなど食材の仕入れから料理、販売まで小さな経済活動を学びながら楽しんでいます。コンクールや大縄跳び、模擬店はみな組のみんなで考え、力を合わせて挑むことがきっと社会人になって役立つと思います。
学生を応援する大人たち
大学校に通う学生たちのために、縁ある大人たち、先輩たちが協力してくれるのもこの学園祭のいいところです。管轄の白バイ隊がドリル走行を披露してくれたり、学生のバイクのライディング指導をしてくれていました。これは以前、校内のサーキットやオフロードコースを白バイ隊の運転技術訓練に貸したりしていて、その交流からお礼の意味を込めて学園祭を盛り上げながら交通安全啓蒙を実施してくれています。余談ですが、このサーキットの広い敷地は、災害・緊急時にヘリポートとして活用し、近隣へ物資を届けたり、急患を運んだりと地域に貢献する場にもなっています。
オフロードコースは先生が少しずつコース整備をしながら作っていますが、ここを群馬トヨタ、宮城トヨタがランドクルーザー、ハイラックス、FJクルーザーなどデモカーを持ち込んで同乗体験を実施してくれています。スマートモビリティ棟では、ネッツ東京をはじめモータースポーツ活動をしている販売店が車両展示や解説をしてくれ、さらに世界耐久選手権(WEC)を走ったTS040の展示、apr Racing TeamがSUPER GTを走るTOYOTA PRIUS apr GTを持ち込み、エンジン始動デモンストレーションをしてくれたりと、近い将来、同じ業界で働くである後輩たちのためにクルマに関わる先輩として協力してくれていました。
EVで挑む学生フォーミュラ
ツナギを着ている学生たちのなかで、一部ビジネススーツを着てネクタイをしている学生たちがいました。スマートモビリティ科では、昨年より全日本学生フォーミュラ大会に参戦するチームを結成し、今年9月に2度目の参戦をした活動報告会をしていました。チームマネージメント、車両設計を行うデザイン班、車両を組み立てるシャシー班、電気系を取りまとめるES班と専門性を持った各班が力を合わせ挑んでいます。今年の結果は国内外93チームが参戦するなか、総合88位、EVクラス13位。結果としてはこれからですが、このチームで2年間体験することは社会に出てからきっと役に立つし、先輩たちからバトンを受け取った後輩たちは、ひとつでも順位を上げるべく挑み、続けていくうちにこの活動がこの科のいい伝統になっていくと思います。
大人顔負けのプレゼンテーションを聞きながら、これからのモビリティ文化を彼らが盛り上げてくれると確信しました。「教える」「挑む」「力を合わせる」そして「学ぶ」。トヨタ東京自動車大学校の学園祭は、クルマに関わる私たち大人にとっても勉強になるイベントでした。
▽トヨタ東京自動車大学校
https://www.toyota-jaec.ac.jp/
(テキスト / 写真:寺田昌弘)
[ガズー編集部]
ダカールラリー参戦をはじめアフリカ、北米、南米、欧州、アジア、オーストラリアと5大陸、50カ国以上をクルマで走り、クルマのある生活を現場で観てきたコラムニスト。愛車は2台のランドクルーザーに初代ミライを加え、FCEVに乗りながらモビリティーの未来を模索している。自身が日々、モビリティーを体感しながら思ったことを綴るコラム。
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