ダカールラリーでハイラックスがトヨタ初の総合優勝!!

中学生の頃からパリダカールラリーに出場することを決めた私にとって、毎年お正月になるとテレビや雑誌でパリダカを観て、気分を高めていました。オート部門はフォルクスワーゲンに始まり、ランドローバー、ルノー、メルセデスが勝ち、冒険者たちの相棒となるクルマは、毎回異なっていましたが、三菱が市販車改造部門にメーカーとしてマシンを作って参戦、翌年にはポルシェが車両テストの場として959を走らせて優勝しました。さらにWRCのグループBが廃止に伴い、プジョーワークスが205T16GRとともに参戦し、冒険行だったパリダカを一気にモータースポーツへと様変わりさせました。その後も三菱、シトロエン、フォルクスワーゲンなどワークスが総合優勝を目指し、競い合っていました。

トヨタは主催国であるフランスにあるフランストヨタが、競技部門を設立し、ランドクルーザー70、ランドクルーザープラドをチューニングして参戦していましたが、総合優勝の夢は叶いませんでした。しかしランドクルーザーやハイラックスで参戦するプライベーター支援をし、パリダカに参戦するトヨタ車の比率は多くなりました。

そして2012年、ハイラックスを生産する南アフリカトヨタ(以降TSAM)が、7代目ハイラックスでダカールラリーに参戦。初戦から総合3位と幸先いいスタートを切りました。しかしBMWのチューンドエンジンを搭載したMINI、そして久しぶりにワークス参戦したプジョーの壁は厚く、総合優勝への道は、厳しいものでした。2016年から「TOYOTA GAZOO Racing SOUTH AFRICA」(以降TGRSA)としてフルモデルチェンジした8代目ハイラックスのスタイリングでさらなる頂を目指し、今年ついに頂点に立ちました。ハイラックス生誕50周年のアニバーサリーイヤーに最高の成績を獲得しました。

3台のハイラックスで総合優勝に挑むTGRSA
3台のハイラックスで総合優勝に挑むTGRSA
  • (左から)、ナッサー選手、ジニール選手、ベルナルド選手
    (左から)、ナッサー選手、ジニール選手、ベルナルド選手
  • 土漠を駆け上がるハイラックス
    土漠を駆け上がるハイラックス
フラットダートを疾走するハイラックス
フラットダートを疾走するハイラックス
砂塵を上げて走るハイラックス
砂塵を上げて走るハイラックス
  • 幾重にも残る轍を追って走る
    幾重にも残る轍を追って走る
  • 砂丘を下るハイラックス
    砂丘を下るハイラックス
ハイラックスを支えるメカニックたち
ハイラックスを支えるメカニックたち

TGRSAはチームではなく、ファミリー

私がチームランドクルーザー・トヨタオートボデーの2号車ドライバーとして参戦していた2012年にTSAMチームがダカールラリーにやってきました。私は2014年から主に世界中からトヨタ車で参戦するチームを同行取材していましたが、エースドライバーは南アフリカ人のジニール・デュビリエ選手で、マシン開発も同時にしながら南アフリカクロスカントリーラリー選手権に参戦していました。エンジニアとともに毎年マシンをアップデートし、南アフリカ選手権に参戦している選手とともに参戦していましたが、2017年からナッサー・アルアティア選手とマチュー・ボウメル選手が、2018年からベルナルド・テン・ブリンケ選手が加入しました。どの選手も総合優勝を狙える実力を持つ選手です。普通であれば、チームでありながら、やはり自分が優勝したいと誰もが思いますが、このチームは、まるで家族のように仲がいい。今大会でもステージ3でジニール選手がマシン下部をヒットし、潤滑油系トラブルが発生したとき、ベルナルド選手がいい順位にいながらもジニール選手たちをサポートするために停まりました。ステージ4では逆にベルナルド選手たちにトラブルが発生したら、今度はジニール選手たちがサポートし、互いに自分よりもチームメイトを助けることを優先しています。この2台は順位が落ちてしまいましたが、そこからは順位を上げながら、総合トップを走るナッサー選手をフォローし、万一トラブルが出たらすぐ助けられる位置を走っています。

初日トップで走り、ステージ2で8位まで順位を落としましたが、ステージ3以降ずっと総合トップを走り続けたナッサー選手&マチュー選手とハイラックスは、チームのため、いや、家族のためにトヨタ初となる総合優勝を獲得してくれました。2位はMINIのナニ・ロマ/アレックス・アロ・ブラボ組、3位はプジョーのセバスチャン・ローブ/ダニエル・エレナ組と各チームが上位を分けました。そして6位にFORDが入り、それ以外はMINIが占め、ハイラックスは、9位にTGRSAの立役者、ジニール・デュビリエ/ディルク・ボン・ツィツェウィッツ組、10位はTOYOTA GAZOO Racing FRANCEのロナン・シャボ/ジル・ピロット組、11位はリトアニアでトヨタブランドのアンバサダーを務めるベネディクタス・バナガス/セバスチャン・ロツワドウスキ組となりました。

次回大会もハイラックスで総合連覇するためにこれからもTGRSAのみんなを応援しています。今大会は取材で現場に行けませんでしたが、TGRSAのメカニックから「なんで今年は一緒にいないんだ。あなたはすでにTGRSAの家族の一員なんだから」とメールをもらったので、次回はぜひ現場で一緒に総合優勝を堪能できたらと思います。

  • 総合10位のトリコロールがかっこいいTOYOTA GAZOO Racing FRANCE
    総合10位のトリコロールがかっこいいTOYOTA GAZOO Racing FRANCE
  • 総合11位のベネディタス・バナガス選手
    総合11位のベネディタス・バナガス選手
  • このハイラックスの開発ドライバーも務めるジニール選手
    このハイラックスの開発ドライバーも務めるジニール選手
  • ベルナルド選手
    ベルナルド選手
ポディウムで総合優勝の喜びをかみしめるナッサー選手&マチュー選手
ポディウムで総合優勝の喜びをかみしめるナッサー選手&マチュー選手
TGRSA。大きな家族のよう
TGRSA。大きな家族のよう

(テキスト:寺田昌弘 / 写真:TOYOTA GAZOO Racing SOUTH AFRICA、Benediktas Vanagas、Ronan Chabot)

ダカールラリー参戦をはじめアフリカ、北米、南米、欧州、アジア、オーストラリアと5大陸、50カ国以上をクルマで走り、クルマのある生活を現場で観てきたコラムニスト。愛車は2台のランドクルーザーに初代ミライを加え、FCEVに乗りながらモビリティーの未来を模索している。自身が日々、モビリティーを体感しながら思ったことを綴るコラム。


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