臨場感あふれる写真が想像を掻き立てる、クルマやモータースポーツのヒューマンドラマ
9月のシルバーウィークは、久々のまとまった休みでしたので、クルマに乗って出かけた方もとても多かったですね。逆に私は自宅にいて、J SPORTSでモータースポーツ観戦していました。
この週末は世界3大レースのひとつである「ル・マン24時間レース」と「FIA世界ラリー選手権(WRC)第5戦ラリー・トルコ」が同時に観られる、モータースポーツファンにとって贅沢な週末でした。
ダカールラリーなどオフロードモータースポーツが特に好きな私ですが、ル・マン24は1999年にトヨタがTS020の3台体制で参戦していたときから大好きになりました。1号車、2号車の外国人ドライバーがトラブルで戦線離脱するなか、日本人トリオの片山右京/鈴木利男/土屋圭一の乗る3号車が総合2位に。
優勝も見えていましたがユノディエールと呼ばれる長い直線を328km/hで走行中に左リヤタイヤがバースト。クラッシュしてもおかしくないところを片山右京さんがクラッシュさせずにコースに戻ってきて、さらにピットまで丁寧にマシンを走らせ、メカニックも必死に直している光景を観て感動したのを今も覚えています。
そして2008年、その片山右京さんとコンビを組んでダカールラリーに出ることになり、スタート地となるポルトガル・リスボンに行ったのですが、サハラ砂漠のあるモーリタニアの政情不安からまさかの大会中止。
このまま帰国するのも寂しいと、フランス・パリにラリーカーのランドクルーザーを戻す途中、ル・マンに寄ってくれました。そして1999年に観たユノディエールのストレートを右京さんの運転、しかも当時の解説つきで助手席に乗せてもらって走りました。ユノディエールは、一般道なのでふだんは走れます。
走行中、タイヤがバーストし、マシンが右に振られ、その右側にある5m幅くらいの芝生を滑り、このままだと民家のフェンスにクラッシュするところだったのですが、ちょうど道路からその民家へ入る付近が幅約3mのアスファルトだったので、右タイヤがグリップしてコースに戻れました。
右京さんが「民家におばあちゃんがいたのが見えたよ」と冗談交じりに教えてくれましたが、やはりF1ドライバーまでなった人は300km/h以上で走っていても冷静なんだと驚きました。
人間のドラマがあるからモータースポーツ観戦はおもしろい
1999年のル・マン24は、右京さんたち3人の日本人ドライバーが日本のトヨタに乗ってオールジャパンだったので、さながらオリンピックのマラソンで、日本人選手がトップ争いをしているのを観ているときと同じ感覚で応援していました。
モータースポーツというと、マシンが注目されがちですが、ピットにはメカニックが何人もいたり、データ分析をするスタッフやケータリングを準備するスタッフなど1台のマシンの勝利に向け、ドライバーはもちろん何人もの人がそれぞれのパートで挑戦しているひたむきさが観ていて感動します。
昨年開催されたラグビーワールドカップで、ルールはよくわからないけれど、ただ日本代表の戦いに胸打たれたかたも多いと思います。モータースポーツは一見ドライバーが挑む個人競技に見られがちですが、ル・マン24もダカールラリーもラグビーと同じ団体競技だと私は感じています。レーシングカーの中身のことは知らなくても、人がスポーツに真剣に挑む姿は、どの競技を観ていても感動します。
今年のル・マン24より
クルマのある風景は観ているだけでかっこいい
ドライブの途中、ふと海辺の駐車場に停めた愛車を眺めているだけでもわくわくします。「クルマのある風景」は見慣れているはずなのに、自宅駐車場に停めてある愛車を見てもうれしかったりします。
ル・マン24はコース(ふだんは一般道部分)脇に民家があったり、ダカールラリーは雄大な大砂丘、WRCは森など大自然から歴史あるヨーロッパの市街地までさまざまな風景のなかをマシンが走ります。
これら「クルマのある風景」は、まるで自分が旅をしているかのような気分になれ、一見の価値があります。今年のル・マン24のシーンのなかで私が気に入っている「クルマのある風景」を写真で紹介します。この写真の奥にどんなヒューマンドラマがあるのか。ぜひ想像してみてください。
写真:Marian Chytka・MCH Photo/文:寺田昌弘
ダカールラリー参戦をはじめアフリカ、北米、南米、欧州、アジア、オーストラリアと5大陸、50カ国以上をクルマで走り、クルマのある生活を現場で観てきたコラムニスト。愛車は2台のランドクルーザーに初代ミライを加え、FCEVに乗りながらモビリティーの未来を模索している。自身が日々、モビリティーを体感しながら思ったことを綴るコラム。
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