オフロードをGRヤリス、ヤリスクロス、RAV4で走ってみて、電子制御のすごさを体感。そして対照的な制御のないランクルでも走る
コロナ禍で今年は春から各イベントの中止、延期がありましたが、秋になると少しずつWithコロナを意識しながらイベントが開催されるようになりました。そのなか私も参加するのが楽しみな宮城トヨタグループ主催の「MTG四駆祭り2020」がスポーツランドSUGO・インターナショナルモトクロスコースで開催されました。当日はランドクルーザープラドやFJクルーザーなど本格四駆が中心となるのですが、そのイベント前にGRヤリスやヤリスクロス、RAV4をオフロードで走らせる機会ができたので、これらのインプレッションをお届けします。
走るほどに楽しみが増すピュア4WDスポーツ「GRヤリス」
今年1月開催の東京オートサロンで、私はトヨタカスタマイジング&ディベロップメントのブースでハイラックスの海外GRパーツを装備したモデルを紹介するMCをしていましたが、その向かいがTOYOTA GAZOO Racingのブース。そしてちょうど目の前にGRヤリスが展示され、開催前からこんなすごいクルマが販売されるんだとワクワクしていました。私たち世代の4WDスポーツといえばST165、ST185の@@@セリカGT-FOUR。ちょうどGRヤリスの後ろにWRCに参戦していたST165も展示され、GT-FOURからGR-FOURへ20年ぶりの新たな名馬の誕生は来場したプレスはもちろん、クルマファンを大いに湧かせました。スポーツカーで考えれば一足先に誕生したGRスープラも同じくセリカから派生したモデルだから、ルーツを辿ると50年前に誕生した通称「ダルマ@@@セリカ」ことA20@@@セリカ1600GT、そして1972年に登場した1600GTVの功績は大きいです。
さてGRヤリスに乗って、モトクロスコースのフラットダートやバンクのみ(ジャンプはなしです)で走らせてみます。私はランドクルーザーなど背の高い4WDがメインなので、こういったピュアスポーツの経験値は浅いのですが、それでも実にコントロールしやすく、簡単にパワースライドしながら思い通りのコーナリングができます。自分のドライビングがうまくなったと勘違いするほど、マシンの性能の高さに驚きました。
1速のギヤが少し高めに感じましたが、軽く200km/h以上出るサーキット走行で6速までのつながりを考えてのことだと思うし、オフならファイナルで落とせばよいので気になりません。
エンジンのピックアップのよさと車重の軽さのおかげで多少回転を落としても3,000rpmで370N・mのトルクが出ているので2速でとても楽に走れます。そこから6,500rpmまで踏み込めばオフロードを走っているのを忘れるぐらいの加速にアドレナリンが出ます。
また一緒にいたプロドライバーの藤田孝博さんは「シフトレバーが普通のクルマより前のほうにあるので、僕のように小柄な選手にとって特にありがたいです。シートを前にするとシフトレバーが後ろになって肘を曲げて対応すると結構つらいんです。GRヤリスはよく考えられたレイアウトになっています」と。180cmの私がドライブしても、シフトレバーの位置は自然に扱いやすかったので、人間工学的にもベストポジションだと思います。
4WDのシステムですが、前後輪のトルク配分を選択できる4WDモードセレクトスイッチがあります。多少FF寄りのNORMAL(前輪60:後輪40)、FRのようなリヤトラクションで走らせたい人にSPORT(前輪30:後輪70)、四輪のトラクションを最大限に活かすTRACK(前輪50:後輪50)が選べます。
ドライバーの好みもあると思いますが、フラットダートなど路面のミューが低いところでは、フロントのトラクションが得やすいNORMALが発進加速など得やすい感じがして、SPORTで派手にリヤを流して向きを変えようとするより、TRACKで走るのが一番イメージ通りの走りができました。もともと前後50:50の4WDに乗ってきたので、私のドライビングに合っていたんだと思います。
ヤリスクロス、RAV4の泥ねい路の走破性の高さに感動
発売まもないヤリスクロスをこんなに泥だらけにしてもいいのだろうかなんて思いながら、Zグレード(1.5リッター・ガソリン、4WD)とRAV4のG“Zパッケージ”(2リッター・ガソリン、4WD)をオフロードで走らせてみました。
試してみたかったのはマルチテレインセレクトとダウンヒルアシストコントロール(DAC)。マルチテレインセレクトはランドクルーザーやプラドでトランスファーギヤをL4にして使い、DACはハイラックスで試していますが、この本格四駆に装備されるデバイスをこれらタウンユースがメインとなるトランスファーギヤを持たないSUVでどこまで機能するのか興味がありました。
マルチテレインセレクトは、岩や砂、泥ねい路など路面状況に合わせて走破性を上げ、ランドクルーザーでは5つのモード(MUD&SAND/LOOSE ROCK/MOGUL/ROCK&DIRT/ROCK)がありますが、ヤリスクロスやRAV4はこの中のMUD&SAND/ROCK&DIRTそしてNORMALの3つのモードになります。
まずヤリスクロスで対角線上にタイヤがグリップしないスタックをする地形を走ります。NORMALモードでは路面に設置していないタイヤが空転して前に進めませんが、ROCK&DIRTにして、再びアクセルを一定に踏み続けていると、空転しているタイヤにブレーキ制御が入り、接地しているタイヤに動力を伝え、いとも簡単にスタックから脱出できます。RAV4も同じです。
そして泥ねい路。乾いた粒子の細かい土が、前日の雨で粘土状の泥になり、純正タイヤはドーナッツに溶かしたチョコをかけたような状態です。ここもNORMALだとアクセルを慎重に踏んでいかないと、どれかタイヤが空転し始め、前に進みにくくなります。特にちょっとした登りになれば顕著に現れます。
そこでMUD&SANDモードにすると、同じ空転しているタイヤにのみブレーキ制御が入り、グリップしているタイヤに動力が伝わり、前に進みます。泥でツルツルになったタイヤでよく走るものだと驚きです。
さらにRAV4のG“Zパッケージ”は、ダイナミックトルクベクタリング4WDが装備され、特にトルクベクタリング機構がコーナリング時にリヤタイヤのイン側の動力を抑え、アウト側の動力の比率を上げるので、滑りやすい路面でもドライバーのイメージに合わせて走れます。
DACは滑りやすい下りで、クルマの横滑りなどを防ぎ、安全性を高めてくれる装備ですが、4輪のブレーキを個々に制御し、できるだけクルマを進行方向に向けたまま下れます。どんなブレーキングが得意なプロドライバーでも4輪を個々に操作することは不可能ですので、万一の備えとしてありがたいです。
ヤリスクロスとRAV4に装備されているマルチテレインセレクトとDACは、急な降雪やスキー場の駐車場で凸凹に凍った路面、また河原でBBQなど、滑りやすかったり、凹凸が大きな路面で万一のときに助けてくれるデバイスだと実感しました。
MTG四駆祭り2020はジェットコースター感覚で楽しむ
今年のイベントは、プラドやハイラックスなど試乗車を来場者自ら運転しオフロードを走れたり、愛車でモトクロスコースを走れたり、私たちがドライブするクルマに同乗し、ジェットコースター感覚で楽しんでいただくコンテンツに加え、GRヤリスにも同乗できるプレミアムコンテンツもありました。
私たちは鼻、口を覆うバラクラバを着てヘルメットを被り、お客様はマスク着用、乗り換えごとにMTGスタッフが除菌作業をし、withコロナでできる対策をしながら、来場者のみなさんにオフロードを楽しんでいただきました。
やはりランドクルーザー70のイメージが強いのか、私はナナマルを担当させていただきました。前後リジッドアクスル、リヤリーフスプリングと、ある意味一番、あの鉱山列車で廃坑を走るアトラクションに似た、エンターテイメント性溢れる走りを楽しんでいただきました。
ここ数年SUV人気が高いですが、私は4WD仕様を選んでもらえたらとお勧めします。地上で生息する野生の動物の多くが、四本足で大地を蹴って走っているので、クルマも4輪で大地を蹴って走ってもらえたら不整地も安心だと思います。
写真:茅原田哲郎・寺田昌弘/文:寺田昌弘
ダカールラリー参戦をはじめアフリカ、北米、南米、欧州、アジア、オーストラリアと5大陸、50カ国以上をクルマで走り、クルマのある生活を現場で観てきたコラムニスト。愛車は2台のランドクルーザーに初代ミライを加え、FCEVに乗りながらモビリティーの未来を模索している。自身が日々、モビリティーを体感しながら思ったことを綴るコラム。
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