東京都民割が始まったら、いざ東京の島へ・・・寺田昌弘連載コラム
先日LEXUSのモーターヨットLY650をみてから、今年は海で遊びたいと思い、まずは操船に慣れておこうと、レンタルボートのヤマハマリンクラブ・シースタイルの会員になりました。20フィート級のボートで離着岸の練習をしようと思っていたところ、65フィートのモーターヨットを所有する先輩からお声掛けいただき、練習する間もなく新島へ。
すでに全国各地で県民割りなど観光促進事業が始まっていますが、東京でも6月予定で東京都民割“もっとTokyo”が開始予定です。都民が都内を旅するときに1泊あたり5,000円が補助され、都心のホテルに宿泊しても適用されますが、もっと旅気分を味わいたいのであれば、島旅をお勧めします。小笠原の父島や、伊豆諸島はもちろん東京。今回はまだ適用期間ではないですが、新島への旅を紹介します。
都心から新島まで約95マイル。20ノットで行けば5時間とかからない。初めて新島に行ったのは18年前に熱海からセーリングヨットで。この頃はまだ船の揺れが苦手で、すぐ酔ってしまうほど海が似合わない男でした。それでも誘い続けてくれる先輩たちのおかげで乗る度に酔わなくなってきて、ヨットでの旅が好きになっていきました。
今回は風もなく絶好の天気で、東京湾も穏やか。都心を海から眺めていると海に浮かぶ摩天楼の島のようで、羽田空港からはまだ少ないですが、何機もの飛行機の離陸が観られます。一度横浜に給油に立ち寄ったのですが、給油所で陸に上がると懐かしい光景が。米軍エリアの入口にあるBar Star Dustは、学生時代にふらっとバイクで寄って、コーラを飲んでジュークボックスにコインを入れて1曲だけ聞いて帰る遊びをしていました。30年以上前の話ですが、久しぶりに思い出の場所に来ると、あの時の自分に会えるような感覚でいいですね。
三浦半島を越え、相模湾に入ると海の色の青くなり、気分も昂ります。モーターヨットはディーゼルエンジンですが、モーターヨットに乗っているとなおさらクルマのエンジンはすごいなといつも思います。
モーターヨットの場合、航行中はエンジン回転数をほぼ一定にしています。1800rpmで約20ノットの場合、燃料消費は1時間あたり200リットル以内ですが、200rpm上げただけで消費量がさらに50リットル増えます。エンジンは一定回転にしていると効率がいいのですが、それでも回転数を少し上げただけでこれほど変わります。そう考えるとクルマは一般道で絶えず回転数を変えて走っているのに、燃費がいいなとあらためて思います。
新島をクルマで旅する
さすがイギリス艇のプリンセス65。2時間くらい操船しましたが、ゆったりとした航行でまったく疲れなく、優雅なクルージングを堪能しました。
入港するとヨットオーナーの知人が出迎えてくれ、Jeepラングラーアンリミテッドまで貸してくれました。
さらにみたことがないステーションワゴンも観せてくれました。1967年式の Ford Falcon Futura。ロングボディ、ロングホイールベースの60年代のアメリカ車らしい雰囲気。内装のコンディションもよく、聞けばカルフォルニアでワンオーナーですべてオリジナルのままとのことです。エンジンは289cid、4,736ccV8に3速ATの組み合わせで低く緩やかなエンジン音を聞いていたら、「これに乗って島内を観て回りましょう」と言ってくださり、心地よいエキゾーストノートと潮騒をBGMに贅沢なひとときが過ごせました。
Jeepラングラーアンリミテッドは、これに乗って新島に来たかたと交換したとのこと。このオーナーは大きな四駆が家族に不人気で、小さなクルマに乗り換えたかったところ、MINIを持っていたので交換したそうです。
「サーフィンにいくとき、ポイントを狙って砂浜を走れるので、サーファーにはぴったりの乗り物です」。
このラングラーにボードを積んで走る姿を考えただけでもかっこいいです。またFord Falcon Futuraもリヤウインドウが開くので、無造作にボードを入れてもかっこいい。四駆やステーションワゴンは島では大きすぎるのではと思いましたが、逆にライフスタイルにぴったりのクルマでした。どちらも海に似合い、さらに新島は品川ナンバーなので、足立、江東ナンバーエリアの私にとっては羨ましいかぎりです。
ちなみにクルマは潮位の関係や天候などで乗降できない日もありますが、下田港から船で運べます。東京から伊豆半島を南下して天城越えして下田港から愛車とともに船旅もいいですね。本州では撮れない愛車と大自然の映える撮影をしにいくのもいい。
やはり食べ物がおいしい新島
夕食は木々に覆われたなかに1台だけトレーラーハウスがあるグランピング施設「NiijimaVilla菜宿物語」でBBQ。
一組だけしか泊まれない特別な時間、空間を堪能できます。夜になると、なおさら自分たちだけしかいない雰囲気が漂って心地よい。それでいて、トレーラーハウスにはエアコン、wifi完備で普段のライフスタイルを変えることなく過ごせるのがありがたい。
このトレーラーハウスを運営しているNiijima Farmersは有機農園で、畑も見学させていただいたのですが、新島で採れた魚の加工時に出る頭や骨、皮などを肥料にしてたまねぎを栽培しています。淡路島もそうですが、島で採れるたまねぎは、糖度が高くびっくりするほどおいしいです。畑を観たからなおさらおすすめします。島内中心部にある中華料理店には「島ラーメン」があり、もちろん玉ねぎがたくさん載っているのですが、これもとってもおいしかったです。
翌日は、地元の若者が釣りに行くというので、せっかくだからと私たちのモーターヨットに乗って釣りに出かけました。短い時間だったので残念ながら釣れませんでしたが、そのまま島を一周して海から眺めました。
白いコーガ石からできる砂浜は真っ白で美しく、それが海をさらに青く美しく輝かせてくれます。その白い砂ができていく姿が海から見えるところもあり、新島の輪郭がとてもよくわかりました。白い砂浜がほとんどですが、3kmのトンネルを北上して宮郷にいくと、なぜか黒い砂浜に変わるのも不思議でした。
本当は2泊の予定でしたが、天候の悪化がはやまりそうだったので、1日で帰京することに。帰りがけにアカイカと有機タマネギ「シマタマ」をいただき、帰宅して食べると、ふだん食べられないような、新鮮で自然の甘みが感じられる幸せな食べ物でした。今度は夏にまた新島へ行ってみたい。東京都民割“もっとTokyo”が始まったら、フェリーでも飛行機(調布から)でも行ける新島にぜひ行ってみてください。東京にこんなすばらしいところがあるんだと必ず再発見できるはずです。
取材協力:Niijima Farmers
(文:寺田昌弘 写真:内藤マサユキ・寺田昌弘)
ダカールラリー参戦をはじめアフリカ、北米、南米、欧州、アジア、オーストラリアと5大陸、50カ国以上をクルマで走り、クルマのある生活を現場で観てきたコラムニスト。愛車は2台のランドクルーザーに初代ミライを加え、FCEVに乗りながらモビリティーの未来を模索している。自身が日々、モビリティーを体感しながら思ったことを綴るコラム。
[GAZOO編集部]
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