3年ぶりのランクル70全国ミーティングで泥だらけになる・・・寺田昌弘連載コラム

  • ランクル70

    国内では期間限定発売されたこのナナマルは、現在も海外で販売されている

1984年11月に発売され、現在も海外で販売され続けているランドクルーザー70(以降ナナマル)。私が海外に行っていたとき、サハラ砂漠では作業車として働いていたり、タンザニアでは野生動物を観に行くサファリツアーのクルマとして使われているのを見ました。
またオーストラリアの内陸ではナナマルばかり走っている光景をみたりと、過酷な地での人の移動を支えるクルマとして世界中で信頼されています。

私も97年に初めてパリダカールラリーに参戦したときの相棒はナナマルで、サハラ砂漠で医療支援活動をしていたときもナナマルに乗っていました。またコロナ禍のなか、世界初のワクチン保冷輸送車のWHO医療機材品質認証を取得したのもナナマルです。赤十字や国連でも活躍し、乗員にとって生きて帰って来られるクルマとしてはもちろん、人の命を支えるクルマとして世界中で活躍しています。

ラダーフレームにスクエアで厚い鋼板のボディ、前後リーフスプリングサスペンション、リジッドアクスル、パートタイム4WDとシンプルで強靭、ときに強い衝撃をいなすヘビーデューティモデル。1999年にはフロントサスペンションがコイルスプリングになり、乗り心地の向上を図っています。

ナナマルは海外仕様を含めるとホイールベースがショート3ドアの2,310mm、ミドルのFRPトップ3ドアの2,600mm、5ドアの2,730mm、3ドアロングの2,980mm、ピックアップ、シャシーベースの3,180mmと5タイプあります。

エンジンはディーゼルが直列4気筒の3B、ターボ付きの13B-T、直列5気筒の1PZ、直列6気筒の2H、1HZ、ターボ付きの1HD-T、V型8気筒ターボの1VD、ガソリンが直列6気筒の3F、1FZ、V型6気筒の1GRなど(海外生産でガソリンの22Rもある)、仕向地での環境、用途、法令や約30年の歴史のなかで様々なエンジンを搭載しているのも稀有な存在です。また現在のランドクルーザープラドもこのナナマルからワゴンとして派生したモデルです。

直列4気筒ターボの2L-T搭載で乗り心地のよさと悪路走破性の両立を図ったコイルスプリング式サスペンションを採用したショートホイールベースのランドクルーザー・ワゴンとして誕生し、さらにモデルチェンジとともに5ドアワゴンも誕生し、ここからプラドのサブネームがつきました。ワゴンを含めれば、ここまでが70系となります。

そんな世界で活躍するランドクルーザーのヘビーデューティー、ナナマルを日本で相棒として乗っている仲間たちが3年ぶりに集まる「ランドクルーザー70オーナーズクラブ全国ミーティング」が開催されたので、私も愛車のナナマルで参加しました。

  • 第17回ランクル70全国ミーティング

    ショート、ミドル、ロング、トゥループキャリア、ピックアップシャシーベースなど様々なサイズがある

17回目のミーティングに約100台のナナマルが並ぶ

  • 第17回ランクル70全国ミーティング

    久しぶりに集まれたナナマル仲間たち

今までキャンプをしながら1泊2日のミーティングでしたが、ここ2年は世相に鑑みて中止し、今年はワンデーイベントとして山梨のスタックランドファーム・オフロードコースで開催しました。

すでに国内販売していないナナマルなので、ひと昔前はナナマルだから70台集まったらいいね、なんてナナマル仲間と言っていたのですが、今回は久しぶりの開催ということもあり、事前エントリーで92台もありました。しかし開催日の9月24日は台風の影響で交通事情が悪くなり、関東から向かっている参加者は、いつもより空いている中央道を渋滞なく走っていけたのですが、東名高速で向かっていた参加者は通行止めや大渋滞でなかなか現地へ向かえない状態となってしまいました。

私は2番目に到着したので、駐車誘導係を買って出て、入場して来る1台1台に挨拶しながら誘導していきます。昼頃にはほぼ集まり、ナナマルは83台。一番時間をかけてきた参加者はなんと13時間以上かけてやってきて、最後に入場したのは午後3時過ぎ。ナナマル乗りの仲間に3年ぶりに会いたい一心で北は宮城、西は兵庫、香川からやってきました。こうしてナナマルが集まると、あらためてホールベース、ボディ、エンジンなどバリエーションが豊富だと実感します。

ナナマル乗りは走る、挑む、泥だらけになる

  • ナナマルはやはり泥が似合う。ゲームのスプラトゥーンでペンキをかけられたみたい

ランクル70は中古車市場で高値がついてますが、オーナーにとってはあまり関係なく、それよりナナマルならではの悪路走破性の高さを体感するのが大好きです。このナナマルオーナーズクラブうのメンバーも、オフロードを走るのが大好きです。
悪路走破をサポートしてくれる電子制御は皆無なので、ドライビングテクニックの差がそのまま走りに出ます。そこがまたおもしろく、走破できたときの喜びはひとしおです。MT車の長いシフトストロークと大きなステアリングを握り、ドライビングというより、重機かモビルスーツでも操縦しているかのようなワクワク感がナナマルならではの楽しみでもあります。

走るだけでなく、ぬかるんだ路面でスタックしたら、デフロックをオンにして脱出できればいいですが、無理だったときはウインチで引き上げたり、仲間のナナマルで引っ張り出してもらったりとドライブ以外の方法を使うのもおもしろいです。

会場のスタックランドファーム・オフロードコースは、しばらく晴天が続いていても、マッドやロックなど難しいルートが多いのですが、連休ごとに来た台風の影響で、管理人が「今日はコースのくぼみはすべて水が満タンだよ」と。コースに入ると見たことがないほど水と泥でびっくりしました。それでもナナマル乗りはオフロードに挑みます。コースから出てくるころにはみな泥だらけで笑顔で帰ってきます。

クルマは馬のようだと言われ、乗馬のようにスポーツ走行を楽しめたり、馬車のようにヒトやモノを運びます。ナナマルは、海外の過酷な道で馬車のような使われ方をしていますが、こうしてオフロードを乗馬するように操れる楽しみがある、魅力あふれるクルマです。私のナナマルは1996年に新車で購入し、パリダカールラリーに参戦し、今も愛車として大切に乗っています。純正部品の供給が減ってきているので、ランクル40に続いてGRヘリテージパーツにも期待しますが、現在も海外向けに生産しているので、日本の法令に適合するようになれば、再び新車で販売していただき、それを相棒にする新たなナナマル仲間とともにオフロードで盛り上がってみたいですね。

(文:寺田昌弘 写真:ランドクルーザー70オーナーズクラブ/寺田昌弘)

ダカールラリー参戦をはじめアフリカ、北米、南米、欧州、アジア、オーストラリアと5大陸、50カ国以上をクルマで走り、クルマのある生活を現場で観てきたコラムニスト。愛車は2台のランドクルーザーに初代ミライを加え、FCEVに乗りながらモビリティーの未来を模索している。自身が日々、モビリティーを体感しながら思ったことを綴るコラム。


[GAZOO編集部]