AKIRA Racingがミライで未来を切り拓く・・・寺田昌弘連載コラム
先日、ALL JAPAN EV-GP SERIES第3戦 全日本 袖ヶ浦EV 55 kmレース大会にAKIRA Racingからトヨタ・ミライでスポット参戦しましたが、10月20日の最終戦に向け、飯田章選手をはじめ、チームでテストを実施。最終戦をドライブする飯田選手と大学生、トヨタのエンジニアで3時間みっちりセッティングを出したり、マシンチェックをしました。
2台のミライで電動車の未来を切り拓く
EV-GPに参戦してみてわかったのは、BEVもFCEVもアクセルの動きにリニアに反応し、瞬時に最大トルクが得られるのでコーナーの立ち上がりが特に楽しいこと。BEVはバッテリーからモーターへ電気を送って走っていますが、FCEVもバッテリーはありますが燃料電池で発電し、回生しながらバッテリーに蓄電したりと機構が多様なので、それに合わせたドライビングが必要です。
前回はあまり理解していないままノーマルモードで走ってしまい、BEV勢に飲み込まれてしまいましたが、それでもミライのコーナリング性能の高さにびっくりしながら、ミライの可能性を感じました。
前回より、AKIRA Racingはミライの2台体制となりました。今まで飯田選手が乗っていた青いミライは、ほぼノーマルですでに基本的なセットを出してあります。赤いミライは、前回シェイクダウンを兼ねて私が乗りましたが、こちらはFCEVの可能性に挑む開発車両、いわばミライの未来を切り拓くマシンです。
次戦も青いミライは大学生がドライブ
AKIRA RacingのFCEVでの挑戦は、もっとすごいFCEV作りもテーマですが、クルマが大好きな大学自動車部の学生に、レースに参戦する機会を作っています。大学生ですとレースはしたいけどマシンや資金的にもなかなかハードルが高いですが、世界で挑んできた飯田選手の、少しでも若い世代に体験してもらってもっとクルマ好き、モータースポーツ好きになってもらいたいという思いから生まれたすばらしい活動です。
また若い世代にモータースポーツを体験してもらいながら、ベテランでは気づかないような意見もデータとして収集し、未来のモータースポーツ、モビリティ開発へ活かす有意義な活動にもなっています。
前回は関東の大学自動車部の学生が乗ったので、次戦は関西方面の学生が乗る予定です。テストには3名の学生が参加。まずは飯田選手がドライブするミライに同乗して、ミライのドライビングのコツやサーキットのライン取りなどレクチャーを受けます。これだけでもプレミアムな体験ですが、さらにトヨタのエンジニアからもミライについて技術的なレクチャーも受けられ、クルマ好きな大学生にはとても貴重な講義になっています。
3名の大学生が交代でコースインして走ります。大学生のひとりは「モーター特有のトルクの立ち上がりに驚きました。アクセルペダルを踏みこむと同時に、シートに背中が押さえつけられる感覚が今までになく、とても印象的でした」と電動車のおもしろさを実感。
赤いミライを飯田選手が鍛える
赤いミライは、前回私がシェイクダウンしたばかりで、今回のテストで飯田選手が初めてドライブ。今まで乗っていたノーマルの青いミライとは異なり、よりレースに適した出力特性、駆動セッティングなどを施したレーシングミライで着実に周回を重ねながらデータ収集し、より適切な制御とドライビングの方向性を見つけていきます。
電動車にとって重要なのは、出力制御だけでなく、バッテリーの冷却についても考えていかなければなりません。BEVは決勝直前までバッテリーを強制冷却していたりと、バッテリーの条件が出力に大きく関わってきます。赤いミライは、フロントにスリットの入ったグリルを新設して、FCユニットへフレッシュなエアーを取り込んで、車内バッテリーの冷却を検討しています。
エンジニアに聞いたところ、エアコンを入れると出力が若干そちらに取られますが、エンジン車と比較するとそこまでではないとのこと。電動車は自らの電気でエアコンを動かし、パッセンジャーだけでなくバッテリーも冷却することが重要な役目になるのだと思いました。
次戦は10月20日。新たなミライが筑波に挑む
青いミライは3人の大学生がマシンとサーキット走行に慣れるための走行を重ね、赤いミライは飯田選手がデータ収集しながらテストを繰り返し、2台のミライは満充填だった水素を使い切るほど走りました。エンジニアにとってもデータ収集ができ、次戦に向けてこれからマシンの出力制御などアップデートをしていく予定です。
2台のミライで未来を切り拓くAKIRA Racing。これからもミライオーナーのひとりとしても応援しています。
写真:AKIRA Racing 文:寺田昌弘
ダカールラリー参戦をはじめアフリカ、北米、南米、欧州、アジア、オーストラリアと5大陸、50カ国以上をクルマで走り、クルマのある生活を現場で観てきたコラムニスト。愛車は2台のランドクルーザーに初代ミライを加え、FCEVに乗りながらモビリティーの未来を模索している。自身が日々、モビリティーを体感しながら思ったことを綴るコラム。
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