モビリティブランドが挑むマリンプレジャーの魅力とは・・・寺田昌弘連載コラム

今年で64回目を迎える「ジャパンインターナショナルボートショー2025」が3月20日~23日の4日間、パシフィコ横浜や横浜ベイサイドマリーナなど4エリアで開催。
ヨットやボート、水上オートバイ、船舶用エンジンなど165隻・台が展示され、すでにマリンレジャーを楽しんでいる方々から興味を持っている方まで、多くの来場者で賑わいました。

しかし国内市場は2022年をピークに減少傾向、保有隻数は2000年から約半減しているといいます。私が知人のヨットやプレジャーボートに乗るマリーナは人気で、その減少を感じるどころか、係留、上架できるのを順番待ちするほど賑わっています。

私は地中海やカリブ海、南太平洋、インド洋など海外のいろんな海でもセイリングし、いろんな国々のマリーナで過ごし、魅力的なマリーナを体感してきましたが、やはりインフラがとても大切だと実感しています。

そしてなにより大切なのはボートの魅力。
船舶専業メーカーはもちろん、トヨタやホンダ、スズキ、ヤマハ発動機、カワサキなど日本のモビリティブランドがマリンでも魅力を高めるデザイン、パワートレイン、そしてクルージングをより快適にする先進機能開発など、クルマやバイクで培った技術をマリンに活かす展示がありました。

クルージング・プレジャーを高めるトヨタ

1990年にすでに「陸・海・空のモビリティ分野」を主たるターゲットに設定しているトヨタは、PONAMシリーズで堅実にファンを増やし、30フィート級のボートでの地位を確立しています。

35SVは、私が以前ダカールラリーに参戦していたときのランドクルーザー200に搭載されていた1VDをベースにマリン用途にセッティングされたエンジンを2基搭載。
31、28Vにはランドクルーザープラドなどに搭載されていた1KDをベースに開発されたエンジンを搭載(31は2基、28Vは1基)と信頼性、耐久性の高さを大陸で実績のある、ランドクルーザーのハートを持つマリンクルーザーです。

また離着岸(クルマでいう車庫入れ)の操船をクルマで培った技術を活かしながら、ビギナーでも安心してできるサポートを生み出しています。こうしてマリンを楽しみたい新たなファンづくりのためにトヨタは挑んでいます。

またLEXUSではそのフィロソフィーをマリンにも展開し、LY650から昨年LY680へモデルチェンジし、独創的なスタイリングとインテリアでマリン市場に新たな価値を生み出しています。

約68フィート(20.66m)と国内では大きく見えますし、オーナー自ら操船するのであればこれくらいまでがサイズ的にいいですが、私は世界中のマリーナを観てきたなかでは、やはり100フィート超えのスーパーヨットを造っていただき、モナコやマイアミ、ヤスマリーナといったマリーナでもひけを取らない、LEXUSらしいスーパーヨットが出てくることを願っています。

  • PONAMを中心に先進サポート、操船アシストなど新たな技術を展示

日本のマリン業界を牽引するヤマハ

ボートショー会場で一番大きなスペースで展示するのがヤマハ。

プレジャーボートはもちろん、船外機、和船、漁船そして水上オートバイ(ウェーブランナー)と様々な製品をラインナップしています。
また国内約140ヶ所のマリーナでボート、水上オートバイのレンタルができるヤマハマリンクラブ・シースタイルを展開。私もメンバーになって近隣の河川、沿岸で乗って楽しんでいます。オーナーにならなくても気軽にマリンレジャーを楽しめるのがありがたいです。

今回特に目を惹いたのが水素エンジンの船外機。ダカールラリーのMISSION1000に参戦しているHySEの水素エンジンバギーのプロジェクトにも参画しているヤマハが、マリン用に水素エンジンの船外機を展示し、さらにテスト航行動画もホームページで観られ、水素の搭載量にもよりますが、マリンのカーボンニュートラルへ向けた実証としておもしろい挑戦です。

  • 電動化船外機はもちろん、水素エンジンの存在感がすごい

「遊ぶ」と「働く」を支えるスズキ

海外で40フィート級のヨットに乗ってセイリングをするとき、どの国にいってもテンダーボート(ヨットから陸地へ移動する小さなボート)の小さな船外機には、「SUZUKI」か「TOHATSU」のロゴがあり、見るたびに日本人として誇らしく思ったりします。

スズキは1965年から船外機を発売してから今年で60周年を迎え、世界で信頼されるブランドになりました。

コンパクトでリーズナブルなスズキのイメージでしたが、全面マットブラック仕上げで高品質漂う「ステルスライン」シリーズの大型船外機が7機種展示されていて、小型船外機の信頼性をもとに大型でもさらにユーザーを増やしていく予感がします。

また海洋プラスチック問題への取り組み「スズキクリーンオーシャンプロジェクト」をすすめていて、操船しながら吸い込む海水からマイクロプラスチックを回収する装置を装着した船外機があったりとユニークなエコプロジェクトが好感持てます。

  • 高級感溢れる大型船外機

4ストロークにこだわり性能を高めているホンダ

ホンダの船外機は1964年、当時2ストロークが主流だった小型船外機にあえて4ストロークエンジンで登場。船外機の排気は、風向きや速度によって乗員側に来ることもあり、2ストロークのオイルが焼けた臭いなど環境を汚すことがないようにとの哲学から出発しています。

その後もクリーンな排気ガスで乗員はもちろん海の環境に最大限配慮した船外機を作り続けています。V8エンジン350馬力の船外機をメインに環境に配慮したうえで高性能エンジンでマリンプレジャーを盛り上げています。

水上オートバイがないのが不思議ですがきっと考えがあってのこと。
しかしホンダの水上バイクがあったらきっとおもしろいモビリティになると思うのですがいかがでしょう。

  • 電動化によるカーボンニュートラルへの取り組みや操船支援など環境と人にやさしいを目指す

水上というゲレンデを駆ける興奮を追求するカワサキ

水上オートバイのことをジェットスキーと呼んでしまいがちですが、これはラジコンが増田屋コーポレーションが持っているのと同じで、カワサキの登録商標です。
ジェットスキーが一般名称と思ってしまうほど、カワサキは水上オートバイ分野を拡げてきました。

スタンディングで操舵がチルトするタイプより、オートバイスタイルで操縦するジェットスキーがレジャーとして広まり、1,498ccスーパーチャージャーエンジンで300PSといったモンスターマシンもあるほどです。
水面を滑走するジェットスキーの爽快感は、一見オフロードバイクで砂漠を走っているように感じますがサスペンションがないので、波を見極めながら操縦するおもしろさがあります。

  • ジェットスキーに四輪小型バギーも展示

こうして陸のモビリティだけでなくその技術を海のモビリティにも活かしていくジャパンブランド。クルマだけでなく船でも海外の方々にその信頼性、高性能が愛されているのが、日本人として海外で見かけるのがとてもうれしいです。これからさらなる活躍に期待しています。

付記:今年のボートショーで展示されていたクルマ

  • ASTON MARTIN VANQUISH/5,200cc V12ツインターボ(835ps・1,000Nm)

  • LAMBORGHINI URUS PERFORMANTE/3,996cc V8ツインターボ(490kW・850Nm)

  • LAMBORGHINI REVUELTO/6,498cc V12ハイブリッド(607kW・725Nm)

  • MORGAN PLUS FOUR/BMW2Lツインターボ(190kW・350Nm)

  • BENTLEY 25MY Continental GT Speed/3,996cc V8ツインターボ+Eモーター(782ps・1,000Nm)

  • 今回初出展の日産車体

  • 心地よいマリンシーズン到来

文:寺田昌弘/写真:寺田昌弘・ジャパンインターナショナルボートショー2025・林豪

ダカールラリー参戦をはじめアフリカ、北米、南米、欧州、アジア、オーストラリアと5大陸、50カ国以上をクルマで走り、クルマのある生活を現場で観てきたコラムニスト。愛車は2台のランドクルーザーに初代ミライを加え、FCEVに乗りながらモビリティーの未来を模索している。自身が日々、モビリティーを体感しながら思ったことを綴るコラム。


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