【小説】 女子オプ!−自動車保険調査員・ミキ− 第3話#08
第3話「Twitter男を調査せよ!」
2nd ミキ、チョコレート調査開始。
#08
バレンタインデーのチョコレート選びで、銀座からショコラトリーめぐりを始めたわたしと真由子は、その後、デパートを巡って、徒歩で丸の内へ移動した。有楽町駅近くの、パリ発高級ショコラティエ「ラ・メゾン・デュ・ショコラ 丸の内店」に行った後、見た目がとにかくかわいい、ベルギーチョコの「ドゥバイヨル 丸の内オアゾ店」へ。
その後は、六本木に移動した。ミッドタウンでまずは、「ジャン=ポール・エヴァン」へ。
「ボワットゥ ショコラ」の12個入りを選ぶ。ちょっと値が張るけど、お世話になっている河口仁弁護士へのプレゼントに決めていた。高品質のカカオを使った特別な一粒は、“黒真珠”にたとえられるほどだ。
チョコを選んでいると、真由子が「ねえ、誰が本命なの?」と何度も聞いてくる。
「真由子こそ、いったい何人に渡すつもりなの?」
「キープしている人がけっこういるから……」
なんて贅沢な。
次は新宿に移動した。時間もなくなってきたので、高島屋と伊勢丹をまわる。
「ねえ、明日の午前中は時間ある? 明日も一緒にチョコを見ない?」
真由子が提案してきた。見ているだけで楽しいし、時間があればわたしも真由子とチョコ選びをしたかった。でも明日は予定がある。
「ごめん、明日はちょっと」
「え、なに、またデート?」
「違うよ。ヨタハチを修理に出すの。ちょっと調子が悪くて」
真由子と新宿で別れて、家に帰ってきてから、買ってきたチョコを机に並べて悩んだ。
河口綜合法律事務所の弁護士、河口仁には「ジャン=ポール・エヴァン」の「ボワットゥ ショコラ」。
その息子、河口純には「ドゥバイヨル」の「ピュール サブール デフィレ」。
松井社長には「Galler」の「クラシックアソート」。
同期の桜川には「ピエール・エルメ・パリ」の「ボンボン ショコラ」。
周藤のぶんは、消去法でいくと、「ピエールマルコリーニ」の「クールセレクション」か。でも、このハート形のチョコ、勘違いされてもちょっと困る。
そういえば、もうひとつ、とっておきのチョコがあるのを思い出した。
「MORI YOSHIDA」の「ショコラ・アソートビュル」。いま、大注目の新鋭ショコラティエである吉田守秀さんのチョコだ。パリの激戦区に進出してショコラティエ界、そしてパティシエ界からも注目を集めているイケメンだ。
先月、新宿で開催していたパリ発チョコレートの祭典「サロン・デュ・ショコラ」に参加しているという記事を見て、MORI YOSHIDAのチョコを目当てに1人で出かけたのだ。
で、食べずに我慢してバレンタインに取っておいたけど、2つ買えばよかった……と思っている。プレゼントする人がいなかったら自分で食べよう、と思っていたのだが。
あと、明日、ちょっとお願い事をするカーショップのオーナーには、「ラ・メゾン・デュ・ショコラ」の「アタンション」を用意していた。
(続く)
登場人物
上山未来・ミキ(27):主人公。新米保険調査員。父の失踪の理由を探っている。愛車はトヨタスポーツ800。
周藤健一(41):元敏腕刑事。なぜ警察を辞めたのかも、プライベートも謎。社長の意向でミキとコンビを組むことに。
桜川和也(29):ミキの同僚。保険調査の報告書を作成するライター。ミキのよき相談相手。彼女あり?
成田真由子(27):ミキの中学校時代からの親友。モデル体型の美人。大手損保に勤務する。時間にルーズなのが玉に瑕。
河口仁(58):河口綜合法律事務所の代表。インスペクションの顧問弁護士で、ミキの父親の友人。なにかと上山家のことを気にかけている。
河口純(30):河口仁の息子で、ミキの幼馴染。ちょっと鼻につくところはあるが、基本的にいい人。愛車はポルシェ911カレラ。
小説:八木圭一
1979年生まれ。大学卒業後、雑誌の編集者などを経て、現在はコピーライターとミステリー作家を兼業中。宝島社第12回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞し、2014年1月に「一千兆円の身代金」でデビュー。宝島社「5分で読める!ひと駅ストーリー 本の物語」に、恋愛ミステリー「あちらのお客様からの……」を掲載。
イラスト:古屋兎丸
1994年「月刊ガロ」でデビュー。著作は「ライチ☆光クラブ」「幻覚ピカソ」「自殺サークル」など多数。ジャンプSQ.で「帝一の國」、ゴーゴーバンチで「女子高生に殺されたい」を連載中。
Twitterアカウント:古屋兎丸@usamarus2001
編集:ノオト
[ガズー編集部]
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