俊敏なFFライトウェイトスポーツカー 2代目「ホンダCR-X」を振り返る…懐かしの名車をプレイバック
コンパクトで斬新なスタイリングと高い運動性能で注目された初代モデルの後を受け、1987年に登場した2代目「ホンダCR-X」。パワートレインやシャシーを正常進化させ、走りを磨いたFFクーペは、モータースポーツのベース車としても人気を博した実力派だった。
デザインは初代モデルの正常進化版
「軽さとコンパクトさを存分に生かせればFF車でもこんなにスポーティーな走りができるんだ!」と教えてくれたのが、1983年に誕生した初代CR-Xだった。そうした評判に気をよくしてか(?)、初代のコンセプトを正常進化させるカタチで1987年にデビューを飾ったのが2代目CR-Xである。
ただしCR-Xが正式な車名となったのは実はこの代から。初代の車名は正式には「バラードスポーツCR-X」と少し長いものだった。
短命だったこともあり今や知る人も少ないかもしれないが、2代目と3代目「シビック」の兄弟として1980年代に設定されていたのがセダンの「バラード」だ。初代CR-Xはそこから派生したカジュアルでスポーティーなモデルというキャラクター設定だったのだ。
初のフルモデルチェンジを受けた2代目は全長が80mm、全幅が50mm拡大された一方で、全高は逆に20mm下げられてワイド&ローで流麗なイメージが大幅にアップ。エクステリアデザインは、ドライバーの頭上を頂点にルーフがなだらかな下降ラインを描くサイドのグラフィックを初代から受け継いだという印象が強かった。ボディー後端部分がスパンと垂直に断ち切られるいわゆる“コーダトロンカ”のデザイン手法も踏襲され、CR-Xらしさも強調されていた。
ミドシップレイアウトも検討
まぶた部分が可動するセミリトラクタブル式のヘッドランプや天井前部のレバーを引くとインテークが上部に飛び出して大量のエアを室内に導入するルーフベンチレーター、トーションバー式のフロントサスペンションといった当時のホンダのユニークさを象徴するような初代のアイコン的メカニズムは失われた。しかし、フラッシュサーフェス化を図り空力性能を磨いたフォルムや、クラスの常識を超えた4輪ダブルウイッシュボーン式サスペンションを採用するなど、機能性やハード面は大幅にアップデートされた。
ちなみに、当初はコミューターとして企画された初代が特に日本市場ではスポーツカーとして受け入れられたことで、2代目の開発に際してはミドシップレイアウトも検討されたという逸話も伝えられている。
かつて自身が所属した月刊の自動車専門誌が初代モデルを長期テスト車に採用して散々乗った記憶があったので、2代目もテストドライブの経験があることは間違いナシ! ということで、フリーランスになってスタートさせた取材メモ帳をひも解いてみると……ありましたありました。乗ったのは1987年の12月14日と、すでに37年も前のこと(驚)。
テスト車は、最高出力130PS を誇る1.6リッター直4のDOHCエンジンを搭載した「Si」グレードのMT仕様。同モデルにはパワーステアリング設定車も存在していたが、それは未装着のモデルだった。
タイヤはかつてテレビCMも流れていたヨコハマの人気プレミアムタイヤ「ASPEC(アスペック)」で、サイズは185/60R14だったとのこと。60%の偏平率や14インチサイズのタイヤが装備されていたのもCR-Xのセリングポイントとなっていて、なんとも時代を感じさせる。
ハンドリングの印象は上々
そんなメモ帳の筆頭に書かれていたのは「アクセル過敏でギクシャクした走り」「2000rpm以下でのクラッチミートは難しい」と、どうも街乗りの印象はいまひとつであったようだ。反対に「3速ギアはオールマイティーに使え、1000rpmからの加速もためらいないが、ギクシャク感のためハイギアは使いにくく市街地は疲れる」ともあって……う~ん、どうだったんだろう。
それでも「加速力は素晴らしくスピードメーターが追いつかないほど」とあるので、絶対的な動力性能が文句ナシだったのは間違いない。「モーターのように滑らかに回る」エンジンをレッドラインの7200rpmまで引っ張ると、1速60km/h、2速で100km/hに達し、100km/hクルージング時は3100rpmとのこと。
「全力加速時でも、トルクステアやホイールスピンはなく、中立への復元力がきちんと現れる」と、シャシーやハンドリングの印象は上々である。130PSという最高出力をきちんとモノにしていたようだ。
ちなみに、テストドライブはどこかのサーキットで行っていたようで「ブレーキングドリフトは有効だが、タックインはアンダーステアが消えるのみでリアが流れるには至らず姿勢変化は少ない」ともあった。
しかし、ここまで記述するなら具体的にどこのサーキットかメモしておけば、こうして時を経てから読み返してもよりイメージがよみがえりやすかったのに(笑)。これからはそうすることにしよう……って、電動化の時代にもはや手遅れか。
(文=河村康彦)
2代目ホンダCR-X(1987年~1992年)解説
1983年に誕生し、FF車のスポーツモデルという独自のポジションを確立した「バラードスポーツCR-X」。1987年に登場した2代目では車名からバラードスポーツの文字が消え、単に「CR-X」とされた。
エクステリアデザインは初代モデルの進化版といえるもので、前後のオーバーハングを短めにした2ドアハッチバックの2+2シーターという基本構成も踏襲。先代で指摘された後方視界は、リアエンドに垂直の「エクストラウィンドウ」を追加することで改善を図った。
サスペンションには当時のコンパクトカーの常識を超えた4輪ダブルウイッシュボーンが採用されるなど、その成り立ちはFFライトウェイトスポーツの正統な後継者としてふさわしいものだった。
デビュー時に最も高性能であった「Si」グレードに搭載されたエンジンは先代と同じZC型と呼ばれる1.6リッター直4 DOHC 16バルブの進化版。ネット値で最高出力130PS、最大トルク14.7kgmを誇った。
1989年のマイナーチェンジでは、可変バルブタイミングリフト機構を採用した「VTEC」エンジン積む「SiR」が登場。最高出力160PSを発生し、1.6リッター自然吸気エンジンながら、リッターあたり100PSの高出力を実現した。
2代目ホンダCR-X諸元
Si
乗車定員:4人
重量:880kg
全長:3775mm
全幅:1675mm
全高:1270mm
ホイールベース:2300mm
エンジン型式:ZC
エンジン種類:直列4気筒
排気量:1590cc
最高出力:130PS/6800rpm
最大トルク:14.7kgf·m/5700rpm
サスペンション形式: (前後)ダブルウィッシュボーン式
(GAZOO編集部)
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