【連載全16話】第5話 ホンダN360・・・日本生まれのFF車特集


現在、エンジンを搭載するクルマではFF(フロントエンジン・フロントドライブ)という駆動方式が主流です。では、これまでどんなモデルがあったでしょうか? 自動車史に名を残すFFの日本車を週替わりで紹介します。

ホンダN360

1967年3月に登場したホンダ初の量産実用車となる軽乗用車。その後のホンダのクルマづくりの哲学となる「人のためのスペースは最大に、メカニズムのためのスペースは最小に」というM・M(マン・マキシマム/メカ・ミニマム)思想を体現すべく、スペース効率を追求した初代ミニにも通じる2ボックスボディーに、パワートレインがコンパクトにまとまるFFを導入していた。

パワーユニットはロードレース世界GPを制したホンダの二輪用をベースにした空冷並列2気筒SOHC 354ccで、既存の軽の平均より約5割増しの最高出力31PS(グロス)を発生。やはり二輪用と同じコンスタントメッシュ式の4段MTを介して前輪を駆動し、最高速度115km/h、0-400m 22秒という動力性能は他社の800cc級に匹敵した。

加えてM・M思想のもとに軽では最大級の居住空間と荷室容量を確保しており、しかも工場渡しで31万3000円という驚異的な低価格を実現。「速い、広い、安い」と三拍子そろったN360が売れないわけはなく、量産体制が整った発売3カ月後には、10年近くにわたって軽の盟主として君臨していたスバル360からベストセラーの座を奪い、モデルライフの大半にあたる44カ月連続で守った。N360は最後発ながら軽市場の構図を塗り替え、四輪メーカーとしてのホンダの礎を築くとともに日本にFF車を普及させた立役者でもあった。

[GAZOO編集部]

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