【懐かし自動車ダイアリー】1972年（昭和47年）～クルマで振り返るちょっと懐かしい日本

: スバル・レオーネ4WDエステートバン

1972年（昭和47年）| 自動車～世界に先駆けた環境エンジンと乗用四駆

CVCCエンジンを搭載したホンダ・シビックが7月に発売されると大ヒット。環境性能が評価されたのはもちろんだったが、ヨーロッパ的なスタイルと合理的なパッケージングが清新な印象をもたらしたことも大きい。それまでの日本車にはなかったテイストで、ホンダは若々しくてフレッシュというブランドイメージを確立する。

スバルからも時代に先駆けたモデルがデビューした。前年にデビューしていたレオーネに、4WDのエステートバンが追加されたのだ。現在では4WDの乗用車は珍しくないが、当時はジープに代表されるクロスカントリー車専用の装備だと考えられていた。スバルは乗用四駆のパイオニアとなり、水平対向エンジンと合わせて現在も技術的アイデンティティーの核となっている。

日産スカイラインは1969年から“愛のスカイライン”というキャッチコピーがつけられていたが、この年の9月に4代目となると“ケンとメリーのスカイライン”キャンペーンを開始した。ハーフの男性モデルと白人女性モデルのコンビが日本中を旅するCMが放映され、CMソング『ケンとメリー～愛と風のように～』が大ヒット。スカイラインの売り上げも急上昇し、イメージ戦略の重要性が認識されるようになった。

環境庁の諮問機関である中央公害対策審議会は8月に答申を発表し、マスキー法に準じた規制を推進する姿勢を示した。世界で最も厳しい基準をクリアする努力が、日本車の性能をさらに高めていくことになる。

4代目日産スカイライン
4代目日産スカイライン
ホンダ・シビック

1972年（昭和47年）| 世相と文化～テロの不安をパンダが吹き飛ばす

2月に札幌でアジア初となる冬季オリンピックが開催され、テーマ曲の『虹と雪のバラード』が大ヒット。フィギュアスケートで尻もちをつきながら銅メダルを獲得したジャネット・リンが“氷上の妖精”と呼ばれて人気となった。70m級ジャンプでは日本選手が表彰台を独占。“日の丸飛行隊”の快挙に日本中が湧いた。世界中でSAPPOROの知名度が向上し、1976年に発売された三菱ギャランΛ（ラムダ）は北米市場でMITSUBISHI SAPPOROという名前で売られることになる。

雪の祭典が残した興奮も冷めやらぬ中、直後に発生したあさま山荘事件が一転して暗い空気をもたらす。連合赤軍のメンバーが人質をとって軽井沢の保養所に立てこもった事件で、11日間にわたって繰り広げられた攻防戦をテレビの報道番組が生中継。5人の犯人を全員逮捕したものの、3人の犠牲者を出す悲惨な結末に。5月には赤軍がテルアビブ空港乱射事件を起こす。

テロ事件は社会に不安感を広げたが、同じ5月に明るいニュースもあった。戦後27年間アメリカ軍の施政下にあった沖縄が返還されたのである。7月に首相となった田中角栄は9月に北京を訪問。日中国交正常化を果たし、中国からは友好の証しとしてパンダ2頭が贈られた。10月に上野動物園で公開が始まると、カンカンとランランを一目見ようと2kmもの行列が。2時間並んでも30秒ほどしか見られなかったという。