世界に冠たるスーパースポーツ「レクサスLFA」を振り返る…懐かしの名車をプレイバック
レクサスのプレミアムスポーツを示す“F”の頂点に立つクルマとして開発された「LFA」。技術の粋を集め徹底的に鍛え抜かれたスーパースポーツは、生産終了から10年以上がたった今でも、ブランドの象徴として輝きを放っている。
常識にとらわれずに走れ!
LFAがデビューして間もなくのこと、ヤマハのテストコースで試乗するという絶好のチャンスが訪れた。私は喜び勇んで当時の愛車「ランボルギーニ・カウンタックLP400」で静岡・袋井に向かった。和製スーパーカーに対するは元祖スーパーカーを、なんてわかりやすい発想ではない。
実を言うと開発の責任者だった棚橋靖彦さんが私の大学学部学科直系の大先輩で、カウンタックがお好きなことを知っていたから。あまり調子が良くなくてゴホゴホいわせながらテストコースの坂を登っていくと、棚橋さんを含め多くのエンジニアたちに笑顔で出迎えられたことをよく覚えている。
まずは白いLFAの助手席に座った。ドライバーは飯田章君だ。1周目からいきなりフルスロットル! よく見知った仲なのでいろんなことを話しながらドライブしてくれたのだが、今でも覚えているフレーズがこれ。
「クルマをとことん信じ切って、ライン取りとか今までの常識にとらわれずに、できるだけアクセルを踏む時間を長くするように走ったほうが速いんですよ」
V10サウンドの記憶とともに
要するに、クルマの制御や空力を目いっぱい使った走り方をしろ、というわけだ。今ではすっかり常識となった走り方、LFAはその先駆けだった。
もっとも、そう聞いたからといっていきなりそんな運転ができるはずもなく、自分が運転する段ではやっぱり昔ながらのスローイン・ファストアウトな走りに徹して安全に周回したものだ。
なんといってもLFA最大の魅力はV10エンジンにあったわけで、その天にも響くサウンドは今なお世界最高レベルの旋律であろう。あの日の袋井テストコースでも、直線ですさまじいサウンドを響かせていた。
思い出そうとすればするほどLFAの記憶はV10サウンドに包まれている。富士スピードウェイでモリゾウさんの横に乗せてもらったときも、何度か機会のあった公道でのテストドライブも、はたまたスーパーカーミーティングに現れたときの記憶も、すべてあの突き抜けるようなサウンドに満たされているのだ。そんなマシンはほかにない。
ミーティングといえば2023年のこと、完成したばかりの富士スピードウェイホテルに十数台のLFAが集ったときの、つまりは割と最近の記憶でもそうなのだ。色とりどりのLFAが連なってホテルから出発したときの、特徴的なリアスタイルの連続とV10エンジンの合奏が今なお頭のなかにこだまする。
すばらしい技術の集合体
LFAで私は、他の並みいるスーパーカーたちとは違って、ある程度の自信を持って自分なりに攻め込んでいける領域までドライブした経験がないのかもしれない。逆に言うと、その領域の随分手前、アクセルペダルを踏み込んでV10の咆哮(ほうこう)を耳に入れた途端、満足してしまっていたのかも……? かくいうわけで、実際にドライブする対象としてのLFAへの興味はV10エンジンのシンフォニーで終わってしまっているのだけれど、この和製スーパーカーに込められた数々の技術的トピックへの興味は尽きることがない。
まずはもちろん、そのV10エンジンだ。あの頃、F1エンジンがV10だったことで、多くのプレミアムブランドがV10を手がけている。LFAに積まれる1LR-GUEユニットを単体で見たときは、これが本当に市販のロードカー用エンジンかと思わず目を疑ってしまった。隙間なくコンパクトに凝縮された本体は、高価なマテリアルの生み出す独特の色味と相まって、レーシングカー用としか思えなかった。スペックに必要以上に拘泥せず、スポーツカー好きが心から運転を楽しめることを基本のコンセプトに誕生したLFAにとって、ヤマハと共同で開発されたこのV10エンジンは、やはり最も語られるべき個性だったのだ。
もうひとつ、私の気を大いに引いたのはCFRP(炭素繊維強化プラスチック)をはじめとする樹脂成型品のオンパレードだった。まるで見本市のような、多種多様な最新素材の使いっぷりは、これまたその後のスーパースポーツたちの先駆となるもので、日本の技術が世界を明確にリードしていることを認識できた最後の時代としても記憶に残るものだった。
LFAのデビューからもう15年がたとうとしている。その間、日本から世界に通用する新たなスーパースポーツは、2代目「ホンダNSX」と「日産GT-R NISMO」以外に登場していない。果たしてうわさのLFA後継モデルは出るのかどうか。仮に登場したとしても、LFA以上にサウンドで記憶を包み込むようなモデルにはならない可能性が高いけれど……。
(文=西川 淳)
レクサスLFA(2010年~2012年)解説
トヨタの高級車ブランドであるレクサスの2人乗りスーパースポーツ。2010年から世界限定500台で販売された。
CFRP製のモノコックシャシーに、トヨタとヤマハが共同開発した4.8リッターV型10気筒エンジンを搭載し、最高出力560PS、最大トルク480N・mを発生。2ペダルコントロールの6段ASG(Automated Sequential Gearbox)を介して後輪を駆動する。前後重量配分を最適化すべく、エンジンのマウントをフロントミドシップとしたうえ、ギアボックスにはトランスアクスル方式を採用。ラジエーターは後輪の後方左右に配置された。
ボディーサイズは全長4505×全幅1895×全高1220mmで、ホイールベースは2605mm。車体にカーボンとアルミを多用することで車重は1480kgに抑えられた。
サスペンションは前がダブルウイッシュボーン、後ろがマルチリンク式で、車高調整ショックアブソーバーを備える。さらに、優れた耐フェード性を誇るカーボンセラミック製ディスクブレーキも装備。タイヤサイズは前が265/35ZR20、後ろが305/30ZR20である。
限定500台のうち、日本国内への割り当ては165台。3750万円という価格もトピックとなった。
レクサスLFA諸元
乗車定員:2人
重量:1480kg
全長:4,505mm
全幅:1,895mm
全高:1,220mm
ホイールベース:2,605mm
エンジン型式:1LR-GUE
エンジン種類:V型10気筒DOHC
排気量:4805cc
最高出力:560PS/8700rpm
最大トルク:48.98kgf·m/7000rpm
サスペンション形式: (前)ダブルウィッシュボーン(後)マルチリンク
(GAZOO編集部)
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