自然の雪の斜面を楽しむバックカントリースキー。スキー場とは違うギア選びのコツを専門店に聞いてみた
2022年に冬季オリンピックが開催されたこともあって、ウインタースポーツへの注目度が高くなっています。今回は、スキー・登山用品に強い「石井スポーツ 」で、スキー用品について教わってきました。
最初に以前はスキーをやっていたけど、しばらくブランクがあるという人に向けて、現在のスキー用品の傾向について教えてもらうことにしましょう。スキーはギアによって滑り方も進化しているスポーツです。最近のトレンドを知っておくことは、ギア選びのポイントにもなります。さらに、最近注目されつつある「バックカントリースキー」についても聞いてみました。バックカントリースキーは、管理されたスキー場のゲレンデではなく、自然のなかで滑走を楽しむという山登り+スキーな楽しみ方をします。
- 用品の最低予算:スキー板+ビンディング(3~8万円)、ブーツ(2~8万円)、ストック(5000円)、ヘルメット(1万円)、ゴーグル(1万円)、グローブ(5000円)、スキーウェア(3~5万円)、ビーコン(4~6万円)、ゾンデ(1万円)、シャベル(1万円)
- 最低限必要な用品:スキー板+ビンディング、ブーツ、ストック、ヘルメット、ゴーグル、グローブ、スキーウェア、安全装備(ビーコン、ゾンデ、シャベル)
- 時期:12月後半~GWまで
- 地域: 全国のスキー場
- スキー場の選び方:店員のお勧め、パンフレット、インターネット「全国 スキー場情報サイト - SURF&SNOW(https://surfsnow.jp/search/list/spl_area01.php)」などを参考に
「ヨドバシさいたま新都心駅前店」は2021年11月に新しくオープンしたばかりで、関東圏の「石井スポーツ」では最大規模の品揃えを誇るショップ。店内は広く600坪ほどあり、スキーシーズンには多くのスキーアイテムで埋めつくされるそう。さいたま新都心駅前に広がるショッピングモール・コクーンシティの「コクーン3」3階に位置しています。
今回、解説していただいたのは、マネージャの加藤 定佑紀さん。「スキーのことならなんでも相談してください」と頼もしいお言葉。遠慮なく質問していきましょう。まずは、スキー板やブーツはどういう観点でチョイスするとよいのでしょうか。今のトレンドなどを教えてもらいます。
スキー板は操作性で選ぶ。ギアの最新トレンドを知ろう
GAZOO編集部
「まずスキーをするなら、なんといってもスキー板ですよね。どういうのがトレンドでしょうか?」
石井スポーツ加藤さん
「スキー板ですが、かつては190cmあったのがカービングスキーになって170cmになり、最近は160cm程度という具合に短くなってきています。くびれた形状のカービングスキーは膝や腰に負担があるので、最近ではカーブのきつくないずんどうな形状が好まれてきています。カービングが強めのものが流行したころより、短めで幅の広い板が主流になっているんです」
長さは使う人の身長にもよりますが、短くなってきているのがトレンドのようです。
石井スポーツ加藤さん
「さらに、軽いけど安定するという技術が投入されて、スキー操作がしやすくなってきています。スキー板の傾向は、クルマの種類に例えると分かりやすいそう。オールラウンドな普通車、悪路走破性も高いRV、気軽に使えるコンパクトで軽量な軽自動車といったイメージ。どれを選んでも滑れないところはないけど、得意な分野があります。自分がやってみたい滑りを想像してから相談してみると、店員にも伝わりやすいと思います。」
上級者が使う高価なモデルがベストかというとそういうワケではなく、上級者向けのスキー板はスピードが出せるように雪面グリップ力や安定性が高く作られているので、気楽に始めて速度を求めないなら避けた方がよいみたいです。また、スキー板の後部をチェックすると、スピード系はまっすぐ切れてて、悪路でも走破性の高いスキー板はラウンドしているという特徴があるようです。
GAZOO編集部
「続けてブーツも教えてください。気軽に使えたリアエントリー式は少なくなりましたね」
石井スポーツ加藤さん
「リアエントリーブーツは履いたり脱いだりしやすく、初心者~中級者ぐらいの方にはお勧めなのですが、上達して滑走スピードが速くなったり、スキー板の操作性の高さから、フロントバックルタイプが主流になっているためです。ただ、最近はリアエントリーブーツでも操作性が高いモデルが出てきていて、ブーツの選択肢は幅広くなっていますよ。いずれにしても高価なものはレース向けですね。快適さを求めるならラインアップの中間あたりから下がお勧めです。ブーツ選びはサイズ合わせが難しいので、必ず店員に声をかけてください。熟練した店員が足のサイズを計測して、しっかりと合わせていきます」
確かにブーツを自分で選ぶと、どうしても緩めを選んでしまいがちなんですよね。「サイズが合ったブーツを選べば、スキー板が操作しやすくなって上達も断然早くなるので、ここのチョイスには時間をかけてください」とのアドバイスでした。
ほかにも、ブーツに一時的に熱を加えて全体を柔らかくして、自分の足形にフィットさせてしまうモデルもあって、これならかなり快適なフィット感が得られるそうです。ここ数年のトレンドとしては、ブーツの靴底がスタッドレスタイヤみたいなゴムで交換可能になり、スキーを脱いだときに歩きやすい形状になっているそうです。これだと、レストハウスの階段で転ぶことも少なくなりそう。
大自然のなかでパウダースノーが楽しめるバックカントリースキー
最近ではコース以外で新雪を楽しむ、バックカントリースキーもエキスパートを中心に注目が高くなっています。コースではないので圧雪されておらず、その代わりにふかふかのパウダースノーを楽しめます。スキーに慣れてきたら、チャレンジしてみたい分野です。もともと雪山の登山とセットで楽しまれるものなので、登山に強い石井スポーツでは、このバックカントリースキーのアドバイスもたっぷり受けられるお店です。
もちろん安全に十分配慮して、スキー場の管理区域外に出るときには、日本山岳ガイド協会のスキーガイド資格を持っているなど、しっかりした山岳ガイドと一緒に楽しむようにしてください。ガイドが主体となったバックカントリースキーツアーが全国で開催されているので、探してみてください。
石井スポーツではまだツアーを開催するにはいたってないようですが、お勧めガイドを紹介するなど個別に対応してもらえるようですので、声をかけてみましょう。いずれにしても、バックカントリースキーは、登山同様にリスクをゼロにすることはできない危険性があります。信頼できて、気が合うガイドと出会えるようにすることが重要です。
GAZOO編集部
「バックカントリースキーのギアの特徴は?」
石井スポーツ加藤さん
「バックカントリースキーは山を歩き回って滑るので、ギアも似ていますが専用です。歩きやすいように専用のブーツとビンディングで、つま先を固定した状態でかかと側が持ち上がります。また、雪山を登るときは、シール(クライミングスキン)と呼ばれるシートをスキー板の裏(滑走面)に貼り付けることで、雪を引っかけて登りやすくします。スキー板は通常よりも幅広なのですが、驚くほどラクに新雪を登れます。すべて専用なので価格帯は通常のスキー用品より少し上になってしまいます」
ちなみにこのシールはアザラシという意味。貼り付けるシールの意味でもあるんですが、もともとアザラシの皮(シールスキン)を素材として使っていたことに由来するそう。現在のものはアザラシの皮ではなく、エチケットブラシのような素材でできていて、前向きには滑って後ろ向きには引っかかるという仕組みになっています。
かかとの外れるビンディングは、専用ブーツが必要でピンを軸にして支える「テックビンディング」と、ビンディング全体でかかと側が外れる「ツアービンディング」の2種類があって、後者は一般的なブーツがそのまま使えます。ストックは、登山時と滑走時で長さを変えられるタイプがお勧めとのこと。
石井スポーツ加藤さん
「バックカントリースキーは、どうしてもリスクを伴う遊びなので、ギアは信頼性の高いものを選んでください。フィッティングや互換性を含めて、当店なら雪山とスキーに強いスタッフがしっかり対応します」
スキーで雄大な自然を楽しみたくなったら、チャレンジしてみてください。
もちろん、滑りに行く場所も相談すれば、お勧めのエリアなど情報を教えてもらえるそう。首都圏からのアクセスで気軽にスキーを楽しみたい場合には、軽井沢方面、佐久エリアをお勧めしてくれました。この方面では佐久インターと直結しているゲレンデ、佐久スキーガーデン「パラダ」が有名ですが、もう少し奥の山に向かって「アサマ2000パーク」や「軽井沢スノーパーク」などまで行くと雪質がよいそうです。
バックカントリースキーを含めて本格的に楽しむなら、北海道~道北、湯沢エリアのかぐら、志賀高原辺りを目指してみてほしいとのことでした。スキー場によっては、圧雪していないコースを設定しているケースも増えているとのこと。こういった、スキー場コースとして設定されている非圧雪を滑ってみて、新雪に慣れてみることからはじめてみるとよいでしょう。その後ガイドを見つけ、まず初心者向けレベルのツアーから参加しながら、何人かのガイドのツアーに平行して参加してみるとよいのではないでしょうか。相性のよいガイドを探すことも、安心して楽しむには重要なことです。
バックカントリースキーの初心者向けツアーでは、安全講習を必ず受けることになっています。安全装備として、雪崩などで遭難した人を発信された電波で探すビーコン、遭難者を雪に挿し込んで反応を探るゾンデ、携帯シャベルを必ず携帯していくことになっていて、これらの使い方を学んでから雪山に向かいます。
いずれにしても、クルマがないとアクセスできる雪山が限定されてしまうので、ぜひクルマを活用して楽しんでみてください。スキー板は長さがあるので、ワゴンタイプなど長尺モノの収納ができる車種がお勧めです。
石井スポーツでは、毎年スキーシーズンオフの夏前辺りに、「カスタムフェア」と呼ぶ大規模なニューモデル早期予約販売会を行なっているそうです。ここでは、各メーカーのほとんどのアイテムが展示され、ブーツのサイズ合わせも丁寧に対応してもらえるとのこと。新製品ですが早期予約割引価格になるそう。さらに、ヨドバシゴールドポイントカードを使って支払えば、そこからさらに10%ポイント還元(支払い方法によって還元率は異なる)も受けられます。これはヨドバシカメラとタッグを組んだことによる相乗効果といえそうです。スキーシーズンに入ってしまうと、シーズン後半になるまでなかなか割引されないので、早期予約割引価格+ポイント還元はお得感がありますね。
この「カスタムフェア」で気に入ったアイテムを見つけて予約購入すると、シーズン前までに手に入れることができるという仕組みです。予約販売で人気アイテムでも確実に手に入れることができるのは、スキーのような季節商品で、なおかつ自分向けにサイズを合わせなくてはならないギア選びではとても助かるはず。
石井スポーツ ヨドバシさいたま新都心駅前店 マネージャ 加藤 定佑紀さん
ベストフィットなスキーギア選びならおまかせください! 6月の「カスタムフェア」なら選び放題なので、ぜひ来場してください
注意)スキー場の管理区域外の自然の雪山で滑るバックカントリースキーは常にリスクを伴います。必ず適正なプロ山岳ガイドの指導のもとで、安全に行なってください。滑走技術はもとより、雪崩対策をはじめとして安全に関わる知識、専用装備などが必須です。入山時には登山届の提出も必要です。事故や遭難のときの、捜索と救出費用は基本的に自己負担になるので、保険の加入も考慮に入れてください。
(文:村上俊一 写真:中島仁菜、トップの写真は村上さん提供)
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