スーパー耐久ルール解説Vol.2 参加ドライバーの条件やプラチナ、ジェントルマン、エキスパートという種別を解説

  • スーパー耐久第1戦鈴鹿ST-Xクラス表彰台 (c)スーパー耐久機構

    スーパー耐久第1戦鈴鹿ST-Xクラス表彰台 (c)スーパー耐久機構

参加型モータースポーツの最高峰でありながら、プロ、アマ問わず参戦できるスーパー耐久シリーズ。
全国主要なコースを転戦し、また速度差の大きいレース車両でのバトルとなるが、その敷居はそれほど高いものではなく、アマチュアドライバーにとってもレース経験を積むことができ、スキルアップにつながるシリーズでもある。
しかし、誰でもすぐにシリーズに参戦できるというわけではない。では、どんなドライバーが参加できるのか解説していこう。

目次
1.スーパー耐久へのドライバーの参加資格
2.ドライバーズブリーフィング
3.スーパー耐久に参加するための遵守事項
4.規則書とドライビングマナーの遵守義務
5.スーパー耐久のドライバー種別
プラチナドライバー
ジェントルマンドライバー
エキスパートドライバー
6.2022年年度プラチナドライバー認定者一覧
7.主なドライビングマナー

スーパー耐久へのドライバーの参加資格

プロドライバーも多数参戦するスーパー耐久シリーズに、ドライバーとして参加参戦するための資格は、

「『FIA国際ドライバーライセンスC』以上、または当該年度に有効な運転免許証とJAFの発給する『国内競技運転車A』以上の所持者であること」

となっており、いわゆる“JAFのA級ライセンス”を持っていれば参戦できる。
ただしJAFのAライ(A級ライセンスの略)所持者については、

「当該大会前24カ月以内に、JAF公認レースに4回以上完走しており、完走認定を受けていることを条件とする。もしくは過去の実績により上記同様の技量とSTOが認めたドライバーとする」

とある。つまりAライを所持しており、参加しようとするレースの2年前まで遡って、JAF公認レース4戦で完走していれば良いということだ。だからAライを取得したからすぐにスーパー耐久に出走できるというわけではない。

しかし、2年以内のレースで、例えば表彰台(3位)以上とかのハイレベルの結果が求められているわけでもなく、ちゃんと“2年以内に4戦を完走しましたよ”という実績があれば、スーパー耐久への参戦はOK。

そのため、1年未満の経験でも、その間に4戦を完走していれば、参加資格はあるということだ。

■JAF国内モータースポーツカレンダー2022

(※PDF JAFモータスポーツサイトに移動します。)

ドライバーズブリーフィング

では、初めてシリーズ戦にエントリーしたとする。
レースのタイムスケジュール(タイスケ)には、必ずドライバーズブリーフィングという時間帯が設定してあり、レースに参加するドライバーは必ずそれに参加しなくてはならない。

これはスーパー耐久だけのルールではなく、どんなレースでも実施される。
内容は運転やコースに関する安全面や注意事項の確認で、最近起きた事例を挙げてその対処法や注意点などの連絡もあるので、毎回同じような内容ではあるものの、注意して聞いておきたい。

スーパー耐久に参加するための遵守事項

参戦するチームやドライバーには、次のような「守るべきこと」が義務化されている。

  • 競技参加者(エントラント)は、競技のルールを遵守しなければならない
  • チーム監督に、スポーツ規則に関わる全権を委任しなければならない
  • 競技参加者(エントラント)、またはチーム監督は、チーム監督ミーティングやSTO会議に出席しなければならない。また、競技車両が競技車両規定、及び安全規定に適合していることを保証しなければならない
  • ペット類(盲導犬などは除く)のパドック、ピットエリアへの入場は禁止され、16歳未満の者は競技中のピットレーンへの出入りは禁止
  • ドライバーも、監督もチームクルーにも誠実さが求められ、攻撃的、または侮辱的な言動は慎まなければならない
  • 車両通行証やクレデンシャルパスは正しく身につけ、貸し借りや偽造といった違反をしてはいけない
  • 初めてスーパー耐久シリーズに参加するドライバーは、初参加ドライバー講習会の受講が義務付けられ、最低6大会は走行時、車両後方に指定ステッカーを張り付けなければならない

規則書とドライビングマナーの遵守義務

スーパー耐久シリーズは、9クラスが混走するレースであり、プロとアマチュアが一緒に走ることのできるレースでもある。

そのため、各ドライバーはスポーツマンシップに則りフェアな走行をしなければならない。
また、規則書を必ず熟読し、規則に則った命に関わるスポーツであることを十分に認識し、ペナルティを受けないように最善の注意を払い、シリーズ全体の進行を妨げないようにする必要がある。

主なドライビングマナーはコチラ(このページ下部に記載)

スーパー耐久のドライバー種別

参加者は参加申し込み期間内に、1台の車両に対し2名以上4名以内のドライバーを、A・B・C・Dドライバーとして指名登録しなければならない。(※24時間レースなどは除く)
Aドライバーは、シリーズを通じて変更できない。また、Aドライバーは、予選・決勝への出走が義務づけられる。

スーパー耐久では、ドライバーの種別を、下記の3つに区分している。

  • プラチナドライバー
  • ジェントルマンドライバー
  • エキスパートドライバー

プラチナドライバー

STOによりプロドライバーと認定されたドライバー

プラチナドライバーには、下記が定められている。

  • 決勝レースのレース距離の40%を超えて運転はできない
  • ST-1~5クラスのAドライバーとしての登録はできない。

今年プラチナドライバーと認定されているドライバーは71名いる。
プラチナドライバー一覧へ(このページ下部に記載

ジェントルマンドライバー

STOが認めた満40歳以上のアマチュアドライバー、もしくは昨年12月31日時点で満60歳以上のすべてのドライバー

ST-X、ST-Z、ST-TCRクラスのAドライバーには、必ずジェントルマンドライバーを登録しなければならない。
またST-X、ST-Z、ST-TCRクラスでは、ジェントルマンドライバーひとりの最低義務周回数、合計乗車距離は下記のように定められている。

  • 当初のレース時間が5時間または距離が700km以上の場合20%以上周回
  • 5時間未満または700km未満の場合は50分間以上周回
  • 合計乗車距離(時間)が当初のレース距離(時間)の2/3を超えてはならない

エキスパートドライバー

プラチナドライバーとジェントルマンドライバー以外をエキスパートドライバーという

なお、参加チームが外国籍ドライバーを登録する場合、少なくとも参加大会の40日前までに当該外国籍ドライバーのレース履歴をSTOへ提出し、場合によってはドライバー規定の認定を受けなければならない。

2022年年度プラチナドライバー認定者一覧

※敬称略 ST-X、ST-Z、ST-TCRクラス対象

■ア行
荒 聖治、井口 卓人、井出 有治、伊沢 拓也、石浦 宏明、伊藤 大輔、大嶋 和也、折目 遼、大津 弘樹、大湯 都史樹

■カ行
片岡 龍也、金石 年弘、蒲生 尚弥、国本 京佑、国本 雄資、黒澤 治樹、小暮 卓史、小林 可夢偉、小林 崇志、ケイ・コッツォリーノ

■サ行
阪口 晴南、嵯峨 宏紀、佐々木 孝太、佐々木 大樹、佐藤 公哉、佐藤 琢磨、関口 雄飛、笹原 右京

■タ行
高木 虎之介、高星 明誠、立川 祐路、谷口 信輝、坪井 翔、千代 勝正、塚越 広大、土屋 武士、富田 竜一郎

■ナ行
中嶋 一貴、中嶋 大祐、中山 雄一、中山 友貴、野尻 智紀

■ハ行
番場 琢、平川 亮、平手 晃平、平中 克幸、平峰 一貴、藤井 誠暢、藤波 清斗、星野 一樹、細川 慎弥、福住 仁嶺

■マ行
松井 孝允、松浦 孝亮、松下 信治、松田 次生、道上 龍、峰尾 恭輔、宮田 莉朋、武藤 英紀、牧野 任裕

■ヤ・ラ・ワ行
安岡 秀徒、安田 裕信、柳田 真孝、山下 健太、山内 英輝、山本 左近、山本 尚貴、横溝 直輝、吉本 大樹、脇阪 寿一

主なドライビングマナー

  • 同一周回で競う車両は先行車両に優先権がある
  • 方向指示器は自分が行きたい方向を示す
  • 速い車両の接近に備え、常に後方確認を怠らない
  • 速い車両はクラス違いの先行車両が避けてくれないことを原則とする
  • 前に位置する車両の急激な車線変更は慎むこと
  • コーナー中はお互いの走行ラインを尊重し、車両の接触によりコース外に押し出してはならない
  • 追い抜きの前後に幅寄せや他車の走行を妨害しない
  • 威圧的、攻撃的意図をもつ接触行為はしてはならない
  • 予選等、タイムアタックをしている車両に積極的に進路を譲る
  • 走行中の車両が重大なメカニカルトラブルを抱えた場合、安全を確保しつつ直ちにトラックを離れる
  • 車両からのオイル漏れを認識した場合は、速やかにレーシングラインを外れ、トラックから離脱して安全な場所に停止すること。決してピットに戻ろうとしてはならない
  • 車両をコース内に停止させるドライバーは、可能な限りトラックから離れたガードレール開口部付近にステアリングホイールを装着した状態で停車させる
  • トラック上での停止もしくは一時停止をしてはならない(不可抗力を除く)
  • クラッシュした場合には先ずキルスイッチを切り、火災が発生している場合には適切に消火器を作動させなければならない
  • 車両から降りた場合には速やかにバリヤの後ろに入り安全を確保すること。それまではヘルメットを脱がない
  • ドライバーはオフィシャルの許可なくトラックを横断しないこと
  • 黄旗中や赤旗中のスピン、接触、クラッシュする行為、それらを誘発する行為をしてはならない
  • コースアウト後のコース復帰時に安全確認を怠ってはならない
  • スピン・コースアウト等の後、現場をさらに危険な状況にしないようにする
  • ピットアウト直後、本コースを走行する車両の進路を妨害してはならない。ピットアウトした車両はピットロード側をキープすること
  • 赤旗が表示時、各車両はコントロールされた速度でピット、または赤旗ラインに戻らなければならない。その際は追越し禁止、、スピン、コースアウト等も厳禁
  • 走行セッションはチェッカー旗により終了となり、この旗を見て2度以上コントロールラインを通過(ダブルチェッカー)してはならない
  • 決勝フォーメーションラップでは前車両との間隔を10車身以内に務める
  • GRIDボード提示以降、ならびにSC導入時には、5車身以内での走行に務める
  • GRIDボード提示以降は、“2×2フォーメーション”を形成し隊列を乱してはならない
  • 走行中のことが原因で他のドライバーに口頭で注意喚起する場合、自チームのチーム監督(競技責任者)やアドバイザリードライバーを同道する
  • 暴力、暴言、初心者ドライバーやジェントルマンドライバーの育成を妨害する言動の厳禁(違反者へはペナルティ、出場停止、行政への告発等の処置が行われる)

(文:皆越和也 編集:GAZOO編集部 写真:スーパー耐久機構)